中国・日本間の「越境EC」を支える新しい物流モデルを実現! 国境を意識させない物流体験へ|未来の物流レボリューション

INDEX
中国を中心に越境EC市場が拡大し、国境を越えても安心・確実に届ける物流の仕組みが必要になっている昨今、日本郵便株式会社(以下、日本郵便)の子会社であるToll Holdings Pty Limited(以下、トール社)は、アジアでの事業基盤をさらに強化するため、2024年に中国企業との合弁会社Toll Wise Digital Link Pte. Ltd.(以下、TWDL社)を設立しました。中国・日本間の越境ECを担う重要な拠点として、トール社と日本郵便のアジア戦略を支えます。今回は、その設立背景などについて、各社の担当者にお話を伺いました。

Toll Holdings Pty Limited President of Asia Logistics, Toll Group
Jonathon Kottegoda-Breden(ジョナサン・コッテゴダ=ブレデン)さん
DHLサプライチェーンやDBシェンカーなどで要職を務め、2022年、Toll Groupに入社。物流業界に30年以上携わる。現在は中国をはじめ、アジア9カ国の物流事業を統括し、事業成長を推進。旅行好きで、家族とともに秋の日本を訪れるなど、日本に深い愛着を持っている。

Toll Wise Digital Link Pte. Ltd. General Manager of TWDL
Qi Jian Hong(チー・ジェン・ホン)さん
2002年にWise Expressを創業し、20年以上にわたり越境EC物流に携わる。現在はTWDL社の事業運営を統括し、中国・日本間の越境EC物流サービスの拡大を推進。趣味は、中国の伝統文化や芸術に親しむことで、書道や美術品への造詣も深い。

日本郵便株式会社 ビジネスソリューション推進部 部長兼同部グローバルビジネスソリューション室 室長
堤 貴志(つつみ たかし)さん
1995年、郵政省(当時)に入省。福岡中央郵便局での集配業務にはじまり、法人営業、サービス開発などを経て、2024年、本社郵便・物流営業部長に着任。2026年から現職。休日は、テニスやゴルフでリフレッシュしている。

日本郵便株式会社 総合物流戦略部 部長
丹羽 重勝(にわ しげかつ)さん
金融機関で30年間勤務した後、2022年、日本郵政株式会社にコンプライアンス統括部長として入社。2023年から日本郵便へ出向し、主にトール社の経営管理などを担当。2025年から現職。最近は、妻や息子夫婦とゴルフをラウンドするのが楽しみ。
拡大するEC市場に対応する新事業を始動!
――TWDL社設立の背景について教えてください。
コッテゴダ=ブレデン:近年、越境EC市場の急速な拡大に伴い、より信頼性が高く、多様な物流サービスが今まで以上に求められています。こうした需要に応えるため、2002年から中国でEC物流サービスを展開しているWise Expressとトール社は、2024年に合弁会社「TWDL社」をシンガポールで設立しました。
TWDL社の主なミッションは、中国の事業者やECプラットフォームと、アジア各国の配送ネットワークをつなぐことです。日本市場においては、日本郵便と連携し、中国で集荷した荷物を国内配送ネットワークへ引き継ぎ、ラストワンマイルのお客さままで、シームレスな配送サービスを提供することです。

――Wise Expressをパートナーに選んだ理由を教えてください。
コッテゴダ=ブレデン:Wise Expressは、世界有数の規模と競争力を持つ中国のEC市場で実績を重ねてきました。EC業界では、「スピード、コスト、柔軟性」に対するお客さまの期待が高まり続けています。そうしたニーズに迅速に対応しながらサービスを進化させてきたことが、同社をパートナーに選んだ最大の理由です。
さらに、EC物流に特化したファーストマイル領域、つまり「大量・高頻度の出荷にも対応できる体制」を備えています。ECプラットフォームと連携したデジタル基盤による、受注処理から配送追跡、配送状況の可視化など、シームレスに実現していることも大きな魅力でした。

――新会社設立にあたり、日本郵便とトール社ではどのような協議を行ったのでしょうか。
丹羽:トール社から、中国・日本間による越境ECの市場参入の意向を受け、その実現に向けて、Wise Expressの社長であるチーさんら主要メンバーを含め、日本郵便本社や中国などで何度も合同ワークショップを開催しました。このワークショップで率直な意見をぶつけ合い、築いた信頼関係があったからこそ、ビジネスモデルの構築や会社設立に向けた協議・交渉で直面した課題を、3社で乗り越えることができたと感じています。
ノウハウを結集し、越境ECを支える物流基盤を確立
――ここ数年の越境EC市場の動向について教えてください。
チー:近年、越境EC市場の成長の中心は、アジア、とりわけ東南アジアへとシフトしています。その背景には、ライブコマースをはじめとするソーシャルコマースの拡大に加え、ブランド商品への需要の高まりがあります。なかでも、タイ、マレーシア、ベトナムでは市場が拡大しており、TikTok Shopなど新たなプレーヤーの参入により、競争が一段と活発になっています。
一方で、税制などの見直しに加え、プラットフォーム手数料や返品対応コストも上昇し、多くの事業者が利益率の確保という課題に直面しています。そのため、より効率的で柔軟な物流・サプライチェーン戦略の重要性が、今まで以上に必要とされています。

――3社の強みを結集した戦略が重要なようですね。では、それぞれの強みを教えてください。
チー:TWDL社の強みは、EC向けの受注処理や配送状況の可視化、配送データの作成など、越境ECに欠かせないデジタル対応力です。また、Wise Expressが長年にわたって築いてきた中国のEC事業者とのネットワークを活用し、主要なEC事業者へ直接アプローチできることも大きな強みです。
こうした強みと日本郵便の高品質な配送ネットワークが組み合わさることで、競争力の高い物流ソリューションが提供できます。今では日本向け貨物も大幅に増加しており、越境ECへのさらなる需要拡大を支えています。

堤:日本郵便は国内外のECを支える社会インフラです。その強みは、全国津々浦々へ届ける"ラストワンマイルインフラ"と居住者データベースに裏付けられた"高い配達品質"です。特に、中国や韓国から届く超小型貨物については、「ゆうパケットパフ※」を活用し、非対面で効率的かつ、再配達削減による環境負荷を抑えた配送を実現しています。
今回の取り組みでも、海外で集約された越境EC貨物を日本国内で確実にお客さまへ届ける役割を担っています。
※2025年2月にスタートした、小型荷物に特化した法人向けの新サービス
商品ページはこちら
コッテゴダ=ブレデン:トール社は、130年以上の歴史を持ち、30以上の市場に約300拠点を展開するほか、140カ国に広がるネットワークを基盤に、グローバルな物流サービスを提供しています。アジアにおいても25年以上にわたり培ってきた物流ノウハウやネットワークがあります。これらを強みに、日本郵便やTWDL社と連携しながら、中国・日本間の越境EC物流を支えています。


――3社連携により、どのようなサービスやシナジー効果を生むのでしょうか。
丹羽:Wise Expressによる荷物情報の管理システム、トール社による最適な輸送スキームの設計、日本郵便による国内のラストワンマイルネットワークなど、各社の強固なノウハウをTWDL社という枠組みのなかで統合することで、国際輸送と国内配送を一気通貫で最適化できるようになりました。スピード、コスト、品質のバランスに優れた越境EC物流プラットフォームとしてサービスを提供できる点が、最大のシナジーだと考えています。
堤:日本国内では、「ゆうパケットパフ」などのサービス活用により、コストとリードタイムを兼ね備えた新たな越境ECの配送ルートを作り上げました。これにより、中国発日本向けの荷物量が拡大しており、越境ECの成長を支える重要なインフラとして機能し始めています。

――越境EC物流ならではの課題や苦労された点はどういったところでしょうか。
チー:複数の国や地域がかかわる越境EC物流では、サプライチェーン全体で日本郵便の品質基準である「サービススタンダード」を満たす体制づくりに苦労しました。
堤:日本郵便では、配送遅延の防止や確実なお届けのために、荷物のサイズやラベル表示、郵便番号ごとの事前仕分けなど、さまざまな品質基準を設けています。しかし、こうした基準は言語や商習慣が異なる海外事業者にとっては容易に対応できるものではありません。
そこでTWDL社では、荷物を自動計測する設備の導入やサイズデータの取得、ラベル管理などを一元的に担う体制を整えました。その結果、中国・日本間の越境においても、日本郵便への引き渡しがスムーズに行えるようになり、中国事業者側の負担軽減と安定したサービス品質の確保につながっています。

TWDL越境ECモデルを、世界へ
――会社設立後に協同で行なっている取り組みを教えてください。
丹羽:TWDL社と日本郵便は、中国企業への営業活動をいっしょに行っています。中国企業といっても日本法人があるなど多様な商習慣、サービス基準や課題認識がありますので、丁寧に擦り合わせをしています。2社の担当者がいることで、「発地から日本国内のラストワンマイルまで」を明確に提案できるのが大きなメリットですね。

――今後、越境EC事業で挑戦したいことは何でしょうか。
堤:「国境を意識させない物流体験」の実現です。国内ECと同じ感覚で海外の商品を購入でき、確実かつ環境負荷を抑えて届けられる世界を当たり前にしたいと考えています。また、日本発海外向けの越境ECでも、このモデルを参考にして、日本の良いものを世界へお届けできるよう、これまでにない挑戦をしていきたいです。そのためには、日本郵政グループや国内外のパートナーとの連携をさらに深め、それぞれの強みを活かし、一体となって事業を進めていくことが重要です。ボーダーレス化が進むなか、さまざまなビジネスをつなぐ「架け橋」として、日本郵便の総合物流企業への転換をしっかりサポートしていくことが、私の目標です。

丹羽:中国から日本向けに構築してきたTWDL社の越境ECモデルを今後はアジア、さらにはグローバルに展開していくことを考えています。TWDL社は、中国のEC事業者とのネットワークに加え、受注から配送までを一気通貫で管理できる仕組みや、大量出荷に対応できる運営力を備えています。こうした強みは日本郵便との協業でも成果につながっており、グローバル市場でも十分に競争力を発揮できると考えています。そして私の目標は、3社それぞれの強みを組み合わせ、より多くの市場で継続的に選ばれる物流モデルを築き上げること。トール社のグローバルネットワークを活用して中国・日本間だけではなく、世界へと事業を広げていきたいです。
――今後さらに力を入れていきたいサービスはありますか。
チー:市場ごとのサポート体制やアフターサービスをさらに充実させ、より迅速で信頼性の高い配送サービスを実現したいと考えています。将来的には、日本を物流ネットワークの重要なハブと位置づけ、世界から日本、日本から世界へとつながるグローバルな物流ネットワークを構築したいです。越境ECの拡大が続くなか、国や地域を越えて商品が円滑に行き交う環境を整え、お客さまが安心して利用できる物流サービスを提供したいと考えています。

――最後に、今後の展望についてお聞かせください。
コッテゴダ=ブレデン:今後は、アジア太平洋地域の高成長市場と成熟市場の双方に注力し、重点市場への投資を継続していきます。現在のグローバルな市場において重要な役割を担うアジアを重点地域と位置づけ、この地域のお客さまにより大きな価値を提供する物流ソリューションを展開したいと考えています。

越境EC市場は今後も大きな成長が期待されています。海外の事業者から商品を購入することへの心理的なハードルが下がる一方、デジタル決済の進化や物流ネットワークの高度化、地域間の経済連携の進展により、越境取引はこれまで以上にスピーディーかつシームレスになっています。こうした市場環境の変化を背景に、お客さまが越境ECをより活用しやすい物流サービスの実現を目指していきます。

