トール社と日本郵便の架け橋になりたい。オーストラリア現地で活躍する社員の熱い想い

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2015年、日本郵便株式会社はオーストラリアの物流大手であるToll Holdings Pty Limited(以下、トール社)を子会社化し、国内事業の強化と同時に国際物流事業を手がける総合物流企業としての成長を目指してきました。今回は、トール社に出向し、シドニーで業務に取り組んでいる西川さんに、現地の様子や今後の展望などについてお話を伺いました。

Toll Holdings Pty Limited
ジャパニーズ・ビジネス・デベロップメント・デスクシニアマネジャー
西川 旭(にしかわ あさひ)さん
2019年、日本郵便株式会社に入社。総合物流戦略部ではトールエクスプレスジャパン株式会社(現・JPロジスティクス株式会社)を兼務し、主に政府・防衛関係の物流業務を担当。2022年よりトール社に出向し、拠点をオーストラリア・シドニーに移す。シドニーの印象について「自然豊かな落ち着いた雰囲気の街で暮らしやすく、シーフード料理が格別!」と語る。
日本郵便の国際物流戦略の成長・拡大の一翼を担うトール社
――はじめに、トール社について教えてください。
西川:オーストラリア東南部に位置するニューカッスルで、1888年にアルバート・トール氏が石炭運搬会社を創業したのがその始まりです。2006年にはアジアへ本格進出し、2015年に日本郵便の子会社となりました。現在はアジア太平洋地域を中心とした30以上の国と地域で事業を展開し、国際輸送のネットワークに関しては140カ国にアクセスしている、非常にグローバルな企業です。


西川:主な事業内容は二つあり、一つ目はお客さまの貨物を希望の場所までさまざまな輸送手段で届けるための通関や、その他付加価値作業を含む手配業務全般を行うフォワーディング事業(国際輸送事業)。二つ目は倉庫運営から、物流コンサルティング・検品・加工業務・製品検査などの高付加価値なサービスまで包括的に展開するコントラクト事業(倉庫事業)です。また、オーストラリア国内では資源開発にかかわる資材の倉庫管理、配送や燃料関係の輸送業務も行っています。さらに政府・防衛関係の分野では、オーストラリア国防軍(以下、ADF)のロジスティクス支援や、ヘリコプターや航空機を用いたエアロメディカル(航空医療)においても有名な企業です。

――ところで西川さんは、どのような経緯でトール社へ出向することになったのですか。
西川:大学を卒業後、国際政治経済を学ぶためにオーストラリア・メルボルンの大学院に留学していた経験もあり、将来的には海外で仕事をしてみたいと思っていました。入社後数年は、国内で政府・防衛事業部門の立ち上げや、大型貨物輸送機を複数チャーターするための案件などを担当していましたが、上司やまわりの方が「西川さんなら大丈夫でしょう」と言ってくださり、出向することになりました。一つの目標でしたので、希望がかなってうれしかったですね。

日系企業向け営業にとどまらず、日本政府との情報連携や関係構築に奮闘
――トール社で所属されている部署についてお教えください。
西川:私が所属するチームは9名で直属の上司はシンガポールにいたり、ほかのメンバーもタイや香港にいたりと、普段はオンラインでコミュニケーションをとっています。何でも言い合える関係で、とても活気にあふれた雰囲気のいいチームだと感じています。オーストラリアはカフェ文化が盛んなので、いっしょに働いているメンバーと出かけることもありますよ。

――現在はどんな業務に取り組んでいますか。
西川:主な業務は、日系企業に関連するビジネスの獲得です。ただ最近では、お客さまにサービスを提供するだけでなく、ビジネスの可能性を新たにつくっていく事業開発にも取り組んでいます。例えば、トール社の事業の海外展開の支援や、日本政府との連携などです。

――大きな役割を務めているんですね。2025年8月末、トール社がADFと締結した新しい物流契約がありましたが、これについて教えてください。
西川:この契約はトール社の政府・防衛部門がADFと締結したもので、「Defense Theatre Logistics(国防戦域物流。以下、DTL)」と呼ばれています。10年間にわたる長期契約で、オーストラリア国内の駐屯地などで約800名のトール社社員が倉庫管理や物資の輸送などを担い、平時だけでなく有事の際にも対応を行います。国の安全保障に直結する、非常に重要な役割を担う事業です。

――西川さんは政府・防衛部門とどのようにかかわっているのですか。
西川:DTLの海外展開に向けた政府関係の調整事項、特に日本政府との情報連携や関係構築に携わっています。大使館との対話や展示会などのイベントの出席を通じて、将来的なビジネスの機会の発掘を行っています。というのも、近年多くの先進国では人口減少などにより、国防に関する仕事に携わる人材確保が難しくなっています。そのため、DTLの後方支援活動のようなノンクリティカルな業務を民間業者に委託し、作戦全体を効率化していくことが今後ますます重要になっていくとされています。そこでトール社では、DTLの海外展開を目指しており、私はその調整役として日々励んでいるところです。海外企業と話をする際、日本郵便の名前を知っている方は多く、自社のネームバリューにはとても助けられましたね。

――業務に携わるなかで、大変だったことはありますか。
西川:業務の対応範囲が非常に広いので、一つ一つの事業をしっかり理解することが大変でしたね。また、仕事に対する価値観の違いなど、文化的な違いも肌で感じました。ただ、日本国内では経験できないような新たな事業に挑戦できることにやりがいを感じていますし、ありがたいなと思っています。オーストラリアの方は明るくて陽気な方が多いので、その性格にも助けられました(笑)。
自分にしかできない価値を創造し、グローバルな視点で物流を支えたい
――現地で業務に携わるなかで、仕事に対する考え方に変化はありましたか。
西川:オーストラリアは日本の約20倍という非常に広大な国土に対して、人口は2,700万人ほどしかいないため、労働力不足という課題を常に抱えています。そこでさまざまな事業に民間業者が活用されていて、災害派遣や治安維持活動の支援といった、日本では見られないような規模感での民間委託も行われています。

西川:以前、ADFの災害派遣や国連の平和維持活動をフィジー共和国や東ティモール民主共和国で展開する際のサポートを担当したことがあります。こうした体験を通じて、トール社の一員としても、日本郵便の一員としても、「広く世のため人のためになる仕事」がもっとできるのではないかと思うようになりました。特に、世界中で安全保障上の緊急性が高まっているなか、政府・防衛分野の物流に関しては非常に強い可能性を感じています。
――では、出向社員として心がけていることはありますか。
西川:シドニーでは日本郵便から唯一の出向者なので、両社の架け橋となり、事業が成長していくことを意識しながら仕事するように心がけています。また、特定の分野にこだわらず、さまざまな事業について理解を深めたうえで、「自分でなければできない仕事とは何かを考えること」を意識するようにしています。
――西川さんのトール社での今後の抱負を教えてください。
西川:政府・防衛部門の一員として、アジア各国への事業展開も担当していくことになりました。これからも業務に携わりながら、出向者が持っている知見や経験値を活かして、ビジネスの可能性を広く見て、実践していきたいです!
