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本気で社会がよくなってほしい。確固たる信念で、社会課題に取り組む「インパクト投資」の現在地

事業 2026.3.31
本気で社会がよくなってほしい。確固たる信念で、社会課題に取り組む「インパクト投資」の現在地

INDEX

株式会社かんぽ生命保険(以下、かんぽ生命)では、財務的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的および環境的インパクトを同時に生み出すインパクト投資を推進していくため、2022年度に「インパクト"K"プロジェクト」が発足。2025年5月からは三菱UFJ信託銀行株式会社(以下、三菱UFJ信託銀行)と連携し、投資を通じた社会貢献に、より積極的に取り組んでいます。そこで今回は、インパクト投資の現状について、担当者にお話を伺いました。

道脇 祐介(みちわき ゆうすけ)さん

三菱UFJ信託銀行株式会社 資産運用部 シニアファンドマネージャー

道脇 祐介(みちわき ゆうすけ)さん

2007年入社後、議決権行使やESG調査に携わるとともに、2012年からは国内株式アナリスト・ファンドマネージャーを担当。2021年からインパクト投資のファンドマネージャーを務め、現在に至る。大切にしているスタンスは「お預かりした大切なお金を、責任を持って運用する」。

小林 巧(こばやし たくみ)さん

株式会社かんぽ生命保険 運用企画部 責任投資推進室 課長

小林 巧(こばやし たくみ)さん

地方銀行を経て2009年に入社。国内外企業に対するクレジット・アナリスト業務に従事後、国内社債のファンドマネジメント業務を担当。現在はサステナブルファイナンスの企画、統括、推進に携わる。大切にしているスタンスは「みんなで協力して、一人でできない仕事をする」。

※取材時(2025年11月)の所属を記載しています。

岩原 央門(いわはら ひろと)さん

株式会社かんぽ生命保険 市場運用部 課長

岩原 央門(いわはら ひろと)さん

前職の生命保険会社を経て2017年に入社。市場運用部で株式アナリスト業務に従事した後、オルタナティブ投資部にてプライベート・エクイティ投資を担当。再び市場運用部に戻り、現在はファンドマネージャーとしての業務に加え、外部委託運用にも携わる。大切にしているスタンスは「説明責任を果たし、信頼される運用者を目指す」。

インパクト投資の現状と近年の変化

――はじめに、インパクト投資について教えてください。

小林:まず「インパクト」とは、事業や活動の結果として生じた社会的・環境的な変化や効果のことです。従来、投資は「リスク」と「リターン」という2つの軸で判断されてきましたが、インパクト投資では第3の軸として「インパクト」が取り入れられています。つまり、経済的なリターンとともに、社会的・環境的な課題の解決も目指す投資行動が「インパクト投資」です。

――近年、日本におけるインパクト投資はどのように変化したのでしょうか。

道脇:三菱UFJ信託銀行では、2021年からパイロットファンド(※)としてインパクト投資に取り組んできましたが、当初はお客さまからの問い合わせはほとんどありませんでした。そのようななか、インパクト実現を図る多様な取り組みを支援し、事業を推進していく観点から、幅広い関係者が協働・対話を行う場として「インパクトコンソーシアム」が2023年11月に設立され、また、翌年3月に金融庁が「インパクト投資(インパクトファイナンス)に関する基本的指針」を公表したことで、お客さまの関心が高まり、多くの問い合わせをいただくようになりました。

一般財団法人 社会変革推進財団(以下、SIIF)が発表した「日本におけるインパクト投資の現状と課題 2024年度調査報告書」でも、2024年度の日本のインパクト投資残高は17兆3,016億円と、前年度の11兆5,414億円から5兆7,602億円の増加となっています。

※将来のお客さまへの商品提供の前段階として、運用やオペレーション等の知見獲得等を目的として、試験的に運用を行うファンドのこと

小林:インパクトコンソーシアムが設立されたことにより、金融業界以外の方々ともいっしょに議論できる「場」がつくられ、業態を越えてそれぞれの視点や見え方を学ぶ機会の幅が広がったのではないでしょうか。インパクト投資の裾野を広げていくうえで大きな意義があったと感じています。

かんぽ生命「インパクト"K"プロジェクト」を通じた社会貢献への取り組みとは

――2022年に立ち上がった「インパクト"K"プロジェクト」の概要を改めて教えてください。

小林:インパクト投資は、経済的リターンと並行して社会課題を同時に解決していく必要があります。そのためには単に経済的リターンを追求する従来の投資業務にかかわるスキルだけではなく、新たなノウハウが必要になってきます。しかし、かんぽ生命の既存のリソースだけで対応するには限界があります。そこで、私たちと同じ想いを持つ運用会社と対話し、さらにその運用会社に投資先の企業と対話をしてもらいながら、経済的リターンと社会的・環境的な課題解決の両立を目指していく。そうしたインパクトの創出が期待できるファンドや事業のみを認証するプロセスが「インパクト"K"プロジェクト」です。

――「インパクト"K"プロジェクト」の現在の取り組みを教えてください。

岩原:コモンズ投信のインパクト投資や保育園ファンド、産学連携によるファンドなど、すでに展開されているものはいずれも順調に進んでいて、連携先も拡大を見せている状況です。そして、最新の事例(取材当時)となるのが三菱UFJ信託銀行さんとの上場株式におけるインパクトファンドの取り組みになります。

"根本的"な課題に着目し、解決を目指す

――2025年5月、三菱UFJ信託銀行とかんぽ生命はインパクト投資ファンドを運用することで合意しました。その経緯についてお聞かせください。

道脇:三菱UFJ信託銀行が2021年にインパクト投資に取り組み始めたとき、当時からいわゆるインパクトウォッシュ(見せかけのインパクト)や潜在的なネガティブインパクトの発生にかかわるリスクが危惧されていたことから、日本におけるインパクト投資のパイオニアとして黎明期から中心的な役割を担ってきたSIIFにさまざまな知見を提供していただきました。その後、新しい取り組みとしてシステムチェンジ志向のインパクト投資をいっしょに研究していたころに、インパクト志向金融宣言(※)の会合でよくお会いしていたのが小林さんです。かんぽ生命さんも私たちと同じ想いを持っていらっしゃることを知り、インパクト投資ファンド運用の合意に至りました。

※「金融機関の存在目的は包括的にインパクトを捉え環境・社会課題解決に導くことである」という想いを持つ複数の金融機関が協同し、インパクト志向の投融資の実践を進めて行くイニシアティブ

――「システムチェンジ」とはどんなことなのか、詳しく教えてください。

道脇:システムチェンジとは、「社会・環境システムの機能や構造に働きかけ、複雑な課題を根本的に解決すること」です。わかりやすく事例でご紹介します。車による交通渋滞を解消するために、道路を新設したとします。すると、いったんは渋滞が解消しますが、しばらくすると以前よりも車の交通量が増えてしまい、問題がより深刻化してしまう――。道路建設により通勤圏が拡大、郊外の住宅開発により圏内人口が増加することが原因です。また、別の観点では、公共交通機関の値上げなどにより、その利用者が減ってしまい、車の利用者が増えたことも渋滞の原因でした。必要なソリューションは道路建設だけではなく、公共交通機関や都市部の住宅整備だったわけです。このように複雑な課題の解決は、システム全体と複数のステークホルダーの相互作用などの関係性を理解する必要があります。
インパクト投資も同じで、課題の表面を見るだけではなく、システム全体を正しく理解してから投資行動を進めていかなければいけませんし、投資だけでなく複合的な働きかけがないと課題を解決できません。つまり、複雑な課題を生み出している構造に対してさまざまなアプローチにより根本的な解決をしていこうとするのが、「システムチェンジ」という考え方になります。

――システムチェンジ志向のインパクト投資の対象を上場企業とした理由はなぜですか。

小林:これまでインパクト投資はベンチャー企業が中心でしたが、社会課題を解決していく企業風土が日本の上場企業全体にも広がってほしいという思いがあります。

岩原:インパクト投資で重要なのは、機関投資家を含め、いろいろな人を巻き込んでいくことです。一般に上場企業は知名度や注目度が高く、そうした企業が社会課題の解決に取り組むことで、宣伝効果や波及効果が生まれ、その動きがほかの企業にも広がります。その結果、こうした企業の行動変化に注目する機関投資家が増え、上場株インパクト投資市場の拡大にもつながることを期待しています。

インパクト投資を多くの人に知ってもらいたい

――インパクト投資の取り組みを通じて見えた、現時点での課題はありますか。

道脇:社会課題の解決に向けて、労力を惜しまず時間をかけて取り組んでいます。これを乗り越えていくためには、やはり仲間を増やす必要があります。基本的に三菱UFJ信託銀行のようなアセットマネージャーは横と連携しませんが、システムチェンジのよいところは、志をともにしている人たちと手を取り合って進められるところですので、仲間を増やして乗り越えていきたいと思います。

小林:経済的リターンを確保しながら社会課題を解決するというのは、簡単なことではありません。しかし、そこで諦めるのではなく、新たなビジネスモデルを構築するなど、工夫を重ねていく努力が必要だと思っています。今までになかった発想や方法でいかに収益に乗せていくか、そういった部分が課題になっていくのではないでしょうか。

岩原:そういった課題をクリアするためにも、かんぽ生命だけでは対応しきれないリソースのことなど、難しい部分を三菱UFJ信託銀行さんとしっかり連携し、いっしょに歩むことが大切だと思っています。

――機関投資家としての責務、今後のビジョンについてお聞かせください。

小林:インパクト投資とどう向き合っていくべきかを、繰り返し考えていくことが責務だと感じています。かんぽ生命の運用資金は、お客さまからお預かりしている大切な保険料を原資としています。機関投資家として、経済的リターンと社会課題の解決を両立させる意図をもって資金を投下していくことは、お客さまを取り巻く環境や社会をよりよいものにするだけでなく、国内におけるインパクト投資の裾野を広げ、インパクト・エコシステムにおける好循環を生み出すことにもつながります。こうした責任を常に意識しながら、インパクト投資というものに真摯に向き合っていくことが重要だと感じています。

岩原:まずはインパクト投資が有意義な取り組みであることを多くの皆さんに知っていただくことが重要だと思います。それができればインパクト投資がもっと盛り上がり、インパクトを創出する企業も増え、よりよい社会がつくられていく。そんな良好な循環をつくっていけたらと考えています。

道脇:皆さんに関心を持っていただくことは非常に大切です。私もできる限り多くの情報発信をして、一人でも多くの方に興味を持って仲間になっていただくことが責務だと感じています。

――最後に、インパクト投資に係る国際的なネットワーク Global Impact Investing Network(以下、GIIN)日本会合の共同議長に、三菱UFJ信託銀行の加藤 正裕(かとう まさひろ)さんとかんぽ生命の野村 裕之(のむら ひろゆき)さんが任命されました。グローバルを視野に入れたビジョンについてお聞かせください。

小林:個人的な意見になりますが、日本はインパクト投資についてグローバルで比較してもかなり真摯に取り組んでいて、真剣にディスカッションしている国だと感じています。一方で、日本人の気質といいますか、欧米に倣おうという姿勢をいまだに感じる場面もあり、もっと自分たちで整理した考え方を自信を持って実践していく気概があってもよいのではないかと思います。

GIIN日本会合というグローバルな組織の初代共同議長に、三菱UFJ信託銀行さんとかんぽ生命がいっしょに選ばれたのは、そのような意識を変えるよいきっかけだと思います。日本には、少子高齢化など他国がこれから経験するであろう社会課題が山積しており、10年後、20年後には、日本のやり方が世界のロールモデルになる可能性もあります。そのときに日本がきちんと存在感を発揮し、日本の取り組みを世界に向けて発信できるよう、今後も学び続けていきたいです。

「インパクト"K"プロジェクト」立ち上げ時の記事はこちら

※本記事は、かんぽ生命のお客さまへ運用の実績もしくは運用に関する情報、および取り組み事例を紹介するものであり、三菱UFJ信託銀行およびかんぽ生命が有価証券や取引を推奨するものではございません。