社会課題の解決へ! かんぽ生命が積極的に推進するインパクト投資の現在と目指す未来

ESG投資の一歩先へ。かんぽ生命が新たに取り組む、インパクト投資とは。

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かんぽ生命では、SDGsの目標達成や社会課題の解決に広く貢献できるESG投資のなかでも一歩先をいく「インパクト投資」を推進中です。2022年度からは本格的にインパクト志向の投資を推進するため、社内に「インパクト"K"プロジェクト」が立ち上げられました。経済的なリターンだけでなく社会的、環境的インパクトを生み出すことを目的としたこの投資手法に、かんぽ生命はなぜ積極的に取り組んでいるのか。「インパクト"K"プロジェクト」に取り組む芹沢 健自(せりざわ けんじ)さんと小林 巧(こばやし たくみ)さんにお話しを伺いました。

芹沢 健自(せりざわ けんじ)さん

株式会社かんぽ生命保険 運用企画部 責任投資推進担当 課長 ※

芹沢 健自(せりざわ けんじ)さん

大学院修了後、2006年大和総研(現:大和証券)に入社。一貫してリサーチアナリストに従事するなか、シンガポール駐在時には事業開発を経験。マイクロファイナンス機関などSDGs関連案件も調査。2020年から株式会社かんぽ生命保険にてクレジット投資に従事し、ESG債投資や投資先との対話も多数実施。2021年から現職。

※取材時(2023年3月)の所属・役職を記載しています。

小林 巧(こばやし たくみ)さん

株式会社かんぽ生命保険 運用企画部 責任投資推進担当 専門役 ※

小林 巧(こばやし たくみ)さん

大学卒業後、地方銀行にて個人・法人営業を経験。2009年、株式会社かんぽ生命保険に入社。資産運用部門にて国内外企業に対するクレジット・アナリスト業務に従事。2022年10月から現職にてESG・責任投資推進体制の構築、同投資方針・計画の策定、インパクト投資の社内体制整備などを推進。

※取材時(2023年3月)の所属・役職を記載しています。

進歩的なESG投資「インパクト投資」とは?

――はじめに、ESG投資と「インパクト投資」はどのように違うのでしょうか?

芹沢:ESG投資とは、環境・社会・ガバナンスを考慮する投資行動です。そして、投資行動は、最終的に「リスク」と「リターン」という2つの軸により価値判断されます。インパクト投資については、これに「インパクト」という第3の軸を取り入れて価値判断する投資行動です。

小林:従来型のESG投資ではネガティブ・スクリーニングに近い考え方で、特定の社会または環境に対する基準を満たさない、ESGに問題がある企業を排除する投資スタイルが一般的です。一方のインパクト投資では、ポジティブで測定可能なインパクト、すなわち事業や活動の成果として社会的・環境的な変化や効果をもたらすことに重点をおき、それを行っている事業や企業に投資していく点が異なっています。

――どのようにして「インパクト」を測定するのでしょうか?

芹沢:「インパクト」の測定等については、Global Impact Investing Network(GIIN)などといったイニシアティブに蓄積されているナレッジを参考にしております。インパクト投資を実施する上で、かんぽ生命保険では、投資先に社会課題の分析を行っていただき、投資先がもたらすアウトプットがどのように社会課題の解決(インパクト)に繋がるかといった「ロジックモデル」を作成していただいています。その上で、そのロジックモデルを実現するためのKPI(重要業績評価指標)を置いていただきます。例えば、エコプロダクトを製造する企業であれば、1個の商品が製造・販売されることで、社会課題に対してどういった変化・効果が生み出されるかというロジックツリーを特定し、期待する変化・効果を得るために必要な製造個数等をKPIとして設定します。そして、KPIの数値を定期的に開示してもらうことで、どの程度のインパクトをもたらしたかを確認します。

インパクト志向の投資を推進する「インパクト"K"プロジェクト」を発足

――かんぽ生命がインパクト投資に積極的に取り組んでいるのはなぜでしょうか?

芹沢:日本郵政グループでは、SDGsとして掲げる目標達成に向けて、様々な事業を通じて取り組むことで世界が抱える課題の解決を目指していますが、インパクト投資を実施することで、資産運用の面からSDGsの達成にダイレクトに貢献できると考えています。また、かんぽ生命では、経営理念である「いつでもそばにいる。どこにいても支える。すべての人生を、守り続けたい。」を達成するため、資産運用するうえで「Well-being 向上」「地域と社会の発展」「環境保護への貢献」の3つを重点テーマとし、"あたたかさ"の感じられる投資を実現していくことを「ESG投資方針」に定めております。インパクト投資はそれを実現する上で、具体的であり、重要な取り組みと考えております。

もう一つの理由として、かんぽ生命が長期的な運用を行うユニバーサルオーナー(※1)であることも挙げられます。金融・資本市場が長期的な目線で健全に成長していかなければ、超長期にリターンを得ていくことは難しいという問題意識をもっています。加えて、社会課題が顕在し、インパクトの創出が求められる分野については、テクノロジーの進化やイノベーションが期待される成長分野も多く、投資価値も魅力的なものになり得ると考えています。つまり、さまざまな社会課題を解決すると同時に、市場の健全な成長を支えていく必要があることから、インパクト投資に積極的に取り組んでいるというわけです。

※1 投資額が大きく、資本市場全体に幅広く分散して運用する投資家

――インパクト投資を始動した時期はいつ頃でしょうか?

芹沢:2021年下期からかんぽ生命として実現したいインパクト投資の在り方について構想を練り始め、2022年にかんぽ生命の運用部門が一丸となって本格的にインパクト志向の投資を推進するため、「インパクト"K"プロジェクト」を立ち上げました。これはかんぽ生命独自の投資フレームワークであり、「K」には、かんぽ生命の頭文字以外にも、ステークホルダーの皆さまとの「共創」「絆」「環境保護への貢献」「健康」など、インパクト投資をするうえで大切にしているさまざまな意味が込められています。

インパクト
プロジェクトが目指すのは、ESG投資より社会課題の解決志向がより強い投資である

芹沢:そして、私たち運用企画部 責任投資推進担当では、「インパクト"K"プロジェクト」によりかんぽ生命が実施したいインパクト投資を実現するうえで、インパクト投資案件に関する認証も担っています。その認証フローは、まず投資執行部門が、案件の概要を記した確認シートを作成し、企画管理部門(責任投資推進担当)に提出。続いて企画管理部門は、当該案件がインパクト"K"プロジェクトの要件に当てはまるかについて、ポジティブなインパクトだけでなく、ネガティブなインパクトを生み出すリスクも含めてチェックしていきます。これは、ポジティブインパクトの質を担保するだけではなく、昨今問題になっているインパクト・ウォッシュ(※2)を回避することを意図したフローでもあります。この確認シートには、当該案件により解決されることが期待される社会課題の分析や、アウトプット・アウトカム・インパクトといったロジックモデル、KPIなどが整理・記載されており、最終的に運用企画部長が認証した案件に対して「インパクト"K"プロジェクト」の認証マークが付与されることになります。

※2 インパクトがあると見せかけて実態がないこと

インパクト
インパクト
厳正なる確認のうえ発行される社内認証マーク

プロジェクトが目指す未来。投資を通じてよりよい社会を実現

――現在、インパクト"K"プロジェクトでは、どのような事例に取り組まれていますか?

芹沢:コモンズ投信株式会社様(以下、コモンズ投信)と株式会社Ridilover様(以下、Ridilover)との取り組みである「コモンズ・インパクトファンド」があります。本ファンドは「共創」をテーマに、社会や環境にポジティブなインパクトを生み出す事業に積極的に取り組む国内企業の上場株式に対して長期的な視点で投資を実施し、持続的な企業価値の向上による長期的な経済的リターンと社会的リターンを同時に追求していきます。

このファンドの特徴は、ファンド参加者が一体となって、社会的・環境的インパクトの創出を目指す仕組みづくりにあります。まず、資金提供者であるかんぽ生命が考える「実現したい未来の社会」に向けて、3つの重点取組テーマとインパクトテーマをファンドマネージャーであるコモンズ投信と共有します。そして、コモンズ投信は、社会課題の専門家であるRidiloverと共に、目指す未来の実現に資する投資先企業を選定し、投資先企業との間で、社会課題解決につながるKPIを設定し、インパクトの創出を促します。ファンドの全体で実現したい未来の社会を目指して、まさに「共創」しています。

ファンド参加者が一体となり社会的・環境的インパクトの創出に取り組む

もうひとつの特徴として、コモンズ投信が行う寄付もあります。コモンズ投信は、金融という分野で投資を通じて「今日よりもよい明日」を実現するため、ファンドから得た信託報酬の一部を社会課題解決につながるようなスタートアップやNPOなどの団体に寄付しており、本ファンドにおいても、同様の取り組みが行われる予定です。さらに本ファンドを通じて得た信託報酬を原資とする寄付においては、ファンドが目指す未来の実現につなげるため、寄付の候補先を選定する際、ファンドの掲げるインパクトテーマとの関連性を考慮することを検討してくださっています。現在は検討段階ですが、実現すれば、ファンドへの投資の結果、上場株投資だけでは手の届かない、インパクトを創出する主体に対する貢献につながると考えています。

小林:本来、インパクト投資は経済的リターンだけではなく、社会的リターンを得る投資の両立を目指すものですが、投資だけではどうしても解決に至らない問題が存在します。その部分を投資とは少し異なる、寄付という形で社会課題を解決していく。ただし、決して寄付を主眼とせず、リスク、リターン、インパクトというインパクト投資の要素を前提としている点で、「コモンズ・インパクトファンド」は意味のある取り組みだと考えています。

――ほかにどのような事例に取り組まれているのでしょうか?

芹沢:いくつか投資事例がありますが、分かり易いものでは「保育園ファンド」への出資がございます。子どもを持つ共働き世帯が増えるなか、保育園事業は未来に向けた重要な社会インフラとしての役割を担っています。「保育園ファンド」への出資を通じて超少子化への対策、育児と仕事の両立支援、女性活躍への貢献など、ポジティブなインパクトを与えることを目指しています。

小林:産学連携の事例もあります。大学が持つさまざま研究成果を活用するため、ファンドを通じてスタートアップ企業に投資を行うことにも、積極的に取り組んでいます。現在までに国立大学法人大阪大学、学校法人慶應義塾、学校法人立命館と連携・協力に関する覚書を締結しており、ともに社会課題解決とイノベーション創出による未来社会の創造に努めていきます。

――最後に、今後の展望を教えていただけますか?

芹沢:まだ立ち上がったばかりのプロジェクトですので、まずは投資事例を増やしていくことが重要です。それによってインパクト投資領域における、かんぽ生命のプレゼンスをしっかりと示して、投資の裾野を広げていきたいです。また、個人的にはWell-beingに強く関連するメディカル分野には、インパクト投資の潜在的なニーズが非常に大きいと考えており、注目しているところです。

小林:やはり、かんぽ生命のご契約者さまが、保険に加入することを通じて社会課題の解決に貢献できる、お預かりした保険料が社会をよりよくすることにつながっていると実感していただけるよう、さまざまな取り組みを通してインパクト投資の認知度を高めていくことにも力を入れていきたいです。

※撮影時のみマスクを外しています。

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