社員のアイディアや想いが形に 社内公募で生まれた企業キャラクター「はりちょ」誕生秘話

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この春、株式会社ゆうちょ銀行にオリジナルの企業キャラクター「はりちょ」が誕生しました。プロジェクトを立ち上げたゆうちょ銀行の小林さんと井上さん、「はりちょ」のアイディアを考案した越智さん、松本さんに、キャラクター誕生までの制作の舞台裏や、キャラクターに込めた想いなどをお聞きしました。

株式会社ゆうちょ銀行 広報部
小林 美紀(こばやし みき)さん
ゆうちょ銀行に入社後、店舗や人事部での勤務、内閣府への出向、IR部などを経て、2024年から広報部。ステークホルダーとのコミュニケーションを主軸とし、現在は企業の広報活動や次世代育成施策を担当。

株式会社ゆうちょ銀行 広報部
井上 真紀(いのうえ まき)さん
郵便局で営業を担当後、ゆうちょ銀行本社市場部門などを経て、2021年から広報部。企業の広報活動などを行い、現在は報道対応、レピュテーショナルリスク管理などを行う。

株式会社ゆうちょ銀行 高松店
越智 美結(おち みゆ)さん
ゆうちょ銀行に入社後、中国エリアや四国エリアの店舗で金融渉外コンサルタントや窓口業務などを担当。2025年4月から高松店ローンサービス部に勤務。

株式会社ゆうちょ銀行 コンプライアンス統括部 近畿内部管理担当室
松本 葉子(まつもと ようこ)さん
郵政省(当時)に入省後、近畿エリア内の郵便局やパートナーセンター勤務を経て、投資信託取扱郵便局の内部管理責任者を担当。2025年4月から大阪パートナーセンターに勤務。
※取材時の所属を記載しています。
長く愛される企業キャラクターを。社員を巻き込んだ制作プロジェクトがスタート!

――まずは、新キャラクター制作のプロジェクトが立ち上がった経緯について教えてください。
小林:広報部では、ゆうちょ銀行だけでなくグループ他社や他企業も含め、実に多くの広報活動に触れる機会があるのですが、これまで、日本郵便のオリジナルキャラクター「ぽすくま」や、かんぽ生命の企業キャラクター「かんぽくん」の活躍を見てきて、「うち(ゆうちょ銀行)にもオリジナルキャラクターがいたらいいよね」という話を井上としていたんです。
井上:キャラクターがいたら、もっと幅広くゆうちょをPRすることができると思いまして。

小林:実は以前から、社内でも「ゆうちょ銀行のキャラクターを作る予定はないのか」「ゆうちょ銀行のキャラクターがほしい」といった声があったんです。
2025年5月は、郵便貯金事業が創業から150周年を迎えるタイミングです。広報活動について考えていくなかで、「キャラクターを作るなら今しかない!」という想いに至り、2024年夏ごろからプロジェクトが本格始動しました。
――プロジェクトでは、ゆうちょ銀行内でキャラクターのアイディアを募ったそうですが、社内公募にした理由を教えてください。
小林:長く愛されるキャラクターを作るには、全社員を巻き込んでいっしょに作ることが重要だと考えたからです。社内でアイディアを募り、社員投票を行うことで、より多くの社員にプロジェクトに参加してもらうことができ、そこで選ばれるキャラクターはきっとみんなに愛されるものになると考えました。

集まったのは、予想を超える151点のアイディア
――アイディア募集はどのように進めていったのですか。
小林:2024年10月に、社内公募に関する連絡を全社員に対して行い、同時に、応募を呼びかける動画を作って社内に配信しました。
最初の1週間こそ数件でしたが、2~3週目には全国から毎日のように、次々と案が送られてきました。アイディアは、手描きやPCソフトを使って描いたものなど多種多様で、なかには立体作品で応募いただいた方もいました! 最終的に151点のアイディアが集まって、「こんなにも考えてくれているんだ」と社員の皆さんの熱意に感激しました。
井上:「このなかから、たった一つしか選べないなんて」と、悩ましい気持ちにもなりましたよね。

――審査はどのように行われたのでしょうか。
小林:まずは、広報だけでなく、経営企画や営業、お客さまサービスにかかわる役員にも参加してもらい、1次審査を行いました。アイディアを一つひとつ見ながら、魅力や懸念点を議論して4点まで絞り込みました。それらアイディアをもとに候補キャラクターのデザインを制作し、社内専用サイトで社員投票を行いました。最終審査会には再度役員も加わり、熟慮を重ねた末、2点のアイディアを統合することに決定しました。
井上:それが、越智さんのハリネズミのデザインアイディアと、松本さんの「ゆうちょぴあ」というコンセプトアイディアです。 ともに甲乙つけがたいよいアイディアだったので、1点に絞れなかったというのが本音です。
小林:得票数でいえば、越智さんのアイディアが最多でしたが、投票時の自由記述欄に「どのデザインに決まっても、『ゆうちょぴあ』のコンセプトは入れてほしい」というコメントがいくつもあったんです。また、経営幹部も松本さんの「ゆうちょぴあ」コンセプトに思い入れがあったので、それなら二つを合わせようと。これも「自分たちがプロジェクトを動かしている」という自覚と責任感があったからこそ、柔軟にできたことかなと思います。
お客さまと会社への想いがつまった、二人の社員のアイディアを融合
――今回、アイディアが採用された松本さん、越智さんのお二人に伺います。キャラクター公募の話を聞いたときは、どのように思われましたか。
松本:長い間、ゆうちょ銀行にはキャラクターがいなくて寂しいなと思っていたので、衝撃を受けましたね。2025年は郵便貯金150周年の大きな節目なので、「ぜひ参加しなくては!」と使命感に燃え、参加を決めました。

越智:「これは千載一遇のチャンスだ!」と思いました。松本さんと同じくキャラクターがいてくれたらという想いもありましたし、実は企業の広報やキャラクター制作にかかわりたいという想いが以前からありましたから。

――アイディアはどのように考えましたか?
越智:最初、参考のために他社の企業キャラクターを複数模写して、傾向をまとめたんです。でも、なかなか自分のデザインのイメージがまとまらなくて。10点ほど考案し、結局5点を提出しました。そのうちの一つがハリネズミです。
ヨーロッパでは、ハリネズミは針に幸せをつけてやってくる幸福のシンボルと言われています。さらに安心と爽やかさを込めた当行のコーポレートカラー「ゆうちょグリーン」をどうしても取り入れたかったので、よつばのクローバーが背中から生えているハリネズミに。二つの幸運をかけ合わせたデザインにしました。

松本:公募の案内時に示された、「ゆうちょ銀行らしいか、世代を問わず親しみやすいか、デザインを見てすぐにゆうちょ銀行のキャラクターであるとわかるか、使いやすいデザインであるか」という4つの観点を強く意識しました。息子の自宅から近い井の頭自然文化園に行った際に撮影した小動物の写真を見ながら、「妖精」のデザインを考えました。その妖精が暮らすのが、正しく親切で丁寧な「ゆうちょぴあ」という世界です。
「ゆうちょぴあ」は、あるときひらめいたユートピア(理想郷)という言葉をゆうちょ銀行と融合させて名付けました。アイテムのコンパスと双眼鏡は、ゆうちょ銀行の経営理念である「お客さまの声を明日への羅針盤とする最も身近で信頼される銀行」から、羅針盤(コンパス)とお客さまの声を見つけるための双眼鏡という設定です。キャラクターがこの二つのアイテムを使ってお客さまの力になれますように、と願いを込めました。

――制作時間はどのように捻出されたんでしょうか。
松本:通勤中などにひらめいたアイディアをメモしておいて、家に帰ってから紙に書きためるようにしていましたね。

越智:私は土日に考えたんですが、提出のぎりぎりまで悩んでしまって。直前は寝る時間を削って制作していました。ちょうど公募の1カ月前に、絵を描くために買ったiPadが思いがけず役立ってくれました(笑)。

――1次審査を通過したときはいかがでしたか。
越智:広報部から電話をいただいたときはすごくびっくりして。社内投票のときも、部長から「他店の店長が応援していたよ」と伝え聞いたり、四国エリアのたくさんの方から声をかけてもらえたり、私以上にまわりの皆さんがすごく喜んでくれたことが印象に残っています。
松本:私はたまたま電話に出ることができなくて、代わりに出てくれた同僚が「松本さんの案が選ばれたのかも」と。「そんなことないでしょう、不採用の連絡かもしれない」と、ドキドキしながら電話をかけ直したら、1次審査通過と聞き大変驚きました。時間が経つにつれてうれしい気持ちが込み上げ、胸がじんわりしたのを覚えています。
――最終的に採用されたと知ったときはいかがでしたか。
松本:「これは夢!?」と思いました(笑)。それと同時にどのようなデザインになったのかなとすごく楽しみでした。

越智:151点の応募があったことを知って、すごく驚きました! 選んでいただけたのも、社員投票のおかげですし、私一人の力ではないので、感謝の気持ちでいっぱいです。

――今回、一社員としてプロジェクトに参加していかがでしたか。
松本:アイディアを考える時間が幸せで、それだけでも十分よい思い出ができたと思っていましたが、最終的にコンセプトが採用され感謝でいっぱいです。
越智:キャラクターを考えるうえで、ゆうちょ銀行ならではの存在価値や、これから会社がどうなっていくべきかを考える機会になり、とても有意義な時間を過ごすことができました。
「はりちょ」を通じて、ゆうちょ銀行がお客さまにとって身近で信頼される存在に
――小林さん、井上さんは、このプロジェクトを通じて得た新たな気づきや発見はありましたか。
井上:全国の社員の皆さんが、会社のことをすごく考えていらっしゃることが改めてよくわかりました。

小林:応募シートには、日ごろ、皆さんがどのようにお客さまに接しているかや、望んでいる会社の未来の姿、企業として守り続けていきたいことなどがたくさん盛り込まれていて、社員の想いを垣間見ることができました。キャラクターのアイディア以上に得たものが大きいプロジェクトだったと実感しています。今後の広報活動や企業としての未来に役立てたいです。

――今後、キャラクターにどんなことを期待したいですか。
越智:社内外問わず、皆さんの日常に寄り添い、幸せを届けてくれる存在になってくれたらと思います。
小林:ここからがスタートだと思っています。キャラクターを通じて、ゆうちょ銀行の企業イメージや企業価値の向上と、経営理念にも掲げている「最も身近で信頼される銀行」を目指していきます。というと壮大な話になりますが、まずは一目見れば、「はりちょだ!」と認識されるキャラクターにしていきたいです。
井上:人気者を目指して、ぬいぐるみなどオリジナルグッズも制作中です。
小林:私たちの強みである全国ネットワークを活かしながら、いろんなところに出没させたいですね。
松本:これからキャラクターがメジャーになって、ポスターやチラシで目にしたら、よりうれしさが増してきそうです!


