謎解きで紡ぐ新たな体験と発見! SCRAPと日本郵政グループのコラボレーション戦略

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謎を解いて、さまざまな場所から脱出することを目指す体験型エンターテインメントである「リアル脱出ゲーム」。この大人気ゲームを手がける株式会社SCRAPと日本郵便株式会社のコラボが話題を呼んでいます。銀座を舞台にしたナゾトキ街歩きゲーム『銀座令嬢誘拐事件』、郵政博物館(東京都墨田区)を舞台にしたリアル脱出ゲーム『郵政博物館と時を超えた手紙の謎』のほか、2025年5月からは商業施設「KITTE大阪」(大阪府大阪市)を舞台にしたリアル脱出ゲーム『KITTE大阪と約束の手紙』が開催中! このコラボはなぜ実現したのか、そして両社は何を目指しているのか? 今回、この異色コラボの「謎」に迫るべく、両社の担当者にお話を伺いました。

株式会社SCRAP
後藤 昊弥(ごとう こうや)さん
2022年、株式会社SCRAPに入社。制作部所属。リアル脱出ゲーム『KITTE大阪と約束の手紙』ではプロデューサーを務める。

株式会社SCRAP
上原 栞奈(うえはら かんな)さん
2020年、株式会社SCRAPに入社。コンテンツ部所属。リアル脱出ゲーム『KITTE大阪と約束の手紙』ではディレクターとしてゲーム内容の制作を担当。

日本郵便(日本郵政)株式会社 地域共創事業部 課長
秋元 晴美(あきもと はるみ)さん
2000年、盛岡八幡郵便局採用。株式会社かんぽ生命保険 IT企画部に勤めながら、並行してSCRAPとのコラボプロジェクトに参画。

日本郵便(日本郵政)株式会社 地域共創事業部 主任
江頭 佑真(えがしら ゆうま)さん
2016年、株式会社ゆうちょ銀行に入社。2020年から日本郵政株式会社に出向。経営企画部で資本政策を担当する傍ら、SCRAPとのコラボプロジェクトに参画。
独自資産の多重利活用と、より幅広いユーザー層への訴求を目指しコラボを実施
――まずは、協業に至った経緯を教えてください。

秋元:街中には想像以上に多種多様な郵便ポストが存在します。「郵便ポストをテーマにした街歩きと謎解きを組み合わせれば、魅力的な体験ができるのでは」という発想から、リアル脱出ゲームで数多くの実績があるSCRAPとのコラボを模索するようになりました。SCRAPのご理解もあって、2015年に銀座を舞台にした『銀座令嬢誘拐事件』の開催に至りました。
――それから9年後の2024年、『銀座令嬢誘拐事件』が復活しましたが、再演に至った経緯についても伺えますか。
江頭:再演プロジェクトの目的は、郵便ポストや商業施設など日本郵政グループが持つ独自資産の多重利活用でした。「多重利活用」とは、すでにある資産を本来の目的とは別の目的で活用することで、新しい価値を生み出すという試みです。改めてSCRAPとのコラボを企画したのは、多重利活用とリアル脱出ゲームの親和性の高さに着目したからです。そこで、社内の謎解き好きな社員が有志で集まり、プロジェクトを立ち上げ、その第一弾として『銀座令嬢誘拐事件』を再演しました。

――再演した『銀座令嬢誘拐事件』は、どんな内容だったのでしょうか。
後藤:プレーヤーが銀座の街中にある郵便ポストから情報をもらい、誘拐事件を解決していくというストーリーです。郵便ポストには一つひとつに「取集番号」という識別番号があり、その番号をスマホに入力することで謎解きのヒントが得られるという仕組みでした。

江頭:この企画は、まさに日本郵政グループの財産を有効活用した取り組みとなりました。また、おかげさまで反響を得ることができ、第二弾として『郵政博物館と時を超えた手紙の謎』、そしてKITTE大阪を舞台にしたリアル脱出ゲームへとつながっていきました。
――資産の多重利活用以外に、どのようなシナジー効果を期待していますか。
江頭:今まで魅力を訴求できていなかったユーザー層をお互いに補完し合えたらと思っています。

後藤:リアル脱出ゲームをよく遊んでいただいているお客さまは20代後半から30代後半の方々です。私たちとしても全国津々浦々に拠点を持つ日本郵政グループとコラボさせていただくことで、もっと上の世代の方や、地方にお住まいの方にもリアル脱出ゲームを体験していただけるきっかけになればと、期待を寄せています。
リアル脱出ゲームをきっかけに郵政博物館の来場者数が急増
――『郵政博物館と時を超えた手紙の謎』について教えてください。
秋元:「郵政博物館」を舞台にしたリアル脱出ゲームです。郵政博物館は、郵便や通信に関する収蔵物を展示・紹介する施設で、2014年にオープンしました。



江頭:魅力ある郵政博物館のさらなる活用法を模索するなかで、リアル脱出ゲームの舞台にするという案が生まれました。
後藤:実際に私たちも見学させていただいたのですが、とても魅力的な場所だと感じました。「リアル脱出ゲームの新作はぜひここで!」とお伝えし、実現に向け動きはじめました。
――具体的に、郵政博物館のどこに魅力を感じましたか。
上原:郵政博物館には昔の郵便ポストが展示されていたり、明治時代に配達員が携帯していた護身用の銃が展示されていたりと、初めて知る情報やいろいろな発見がちりばめられていて、とても面白かったんですよね。また、世界中の切手を収蔵した切手棚が圧巻で、「これは絶対謎解きで使いたい!」と思いました(笑)。

――実際、どのようなストーリーにしたのですか。
後藤:「郵政博物館=本来届くはずの手紙が相手に届かず迷い込んでしまう不思議な場所」という設定で、プレーヤーは配達員として数々の謎を解きながら、手紙を本来の持ち主に返してあげるというストーリーです。
――ゲームを作るにあたって、意識したポイントを教えてください。
上原:魅力がギュッと詰まっている博物館ですので、いかにその魅力を伝えるか、という点を意識したのと、手紙を出したいと思えるようなギミックを盛り込みたいと思いました。
――具体的にはどのようなギミックでしょうか。
上原:郵政博物館のなかに私たちが造作した郵便ポストを置かせていただいて、一つの謎を解くごとに郵便ポストに手紙を投函するという仕組みを取り入れました。実際のイベント中、親御さんと参加された兄妹が「いっしょに手紙を出そう!」と声をそろえて手紙を投函する姿を見て、微笑ましい気持ちと同時に、手紙の魅力に触れてもらえたのかなと、うれしさがこみ上げてきました。

後藤:小道具にもすごくこだわりました。まず、謎解きキットは配達員のカバンをモチーフにデザインし、プレーヤーが持っていてテンションが上がるようなかわいいものを目指しました。また、謎解きで使う手紙も手書き感を出して、手紙のよさである「人のぬくもり」を表現しました。

――イベントがはじまってから、どのような反響がありましたか。
江頭:郵政博物館の来場者数が飛躍的に増え、リアル脱出ゲームの力を改めて実感しています。私自身も実際に体験したのですが、社内の人間ながら手紙のよさや、施設のよさを再認識することができました。

秋元:私も実はリアル脱出ゲーム好きの友人を誘って、『郵政博物館と時を超えた手紙の謎』を体験したのですが、ストーリーに沿って謎を解く過程のなかで、新しい発見や感動がたくさんあり、プレーヤーとして本当に楽しめました。
後藤:私たちは、リアル脱出ゲームを作る際に「物語体験」をとても大事にしています。なぜなら、プレーヤーそれぞれが解いた謎や得た気づきによって、その人だけの物語が生まれるからです。体験してくださった方には、その点を魅力に感じてもらえているのではないかと思っています。
江頭:この取り組みに対する社内からの評価も高く、日本郵政グループがこういった新しい取り組みに挑戦しているということ自体が、グループ内にポジティブな影響を生み出しているように感じます。
次の謎解きの舞台は「KITTE大阪」、キーワードは「歴史と手紙」

――5月29日から開催されている、KITTE大阪を舞台にしたリアル脱出ゲーム『KITTE大阪と約束の手紙』について教えてください。
江頭:2024年7月に開業した商業施設「KITTE大阪」は、日本各地のアンテナショップが並ぶフロアなど、さまざまな魅力があります。謎解きを通じてその魅力を広く発信できればと思いました。
上原:初代大阪駅や大阪中央郵便局の旧局舎の跡地に建設されたということを知り、その歴史に面白みを感じました。

それを踏まえて、改めてKITTE大阪にある歴史や面白いポイントを謎解きを通じて伝えること、手紙の魅力を引き続き伝えていくこと、この2つの柱をコンセプトにリアル脱出ゲームを制作しました。

リアル脱出ゲームが生み出す新たなつながり、可能性に期待
――最後に、コラボを通じて今後実現したいことがあれば教えてください。
江頭:お互いのユーザー層をもっと補完していくことと、日本郵政グループの持つ全国各地の独自資産を活用して、さまざまな楽しい企画に取り組んでいきたいです。

後藤:私たちとしても、郵便局は日本全国にある施設なので、いつかすべての郵便局を巻き込んだ謎解き企画ができたらいいなと夢見ています(笑)。

秋元:そうですね、リアル脱出ゲームが全国各地の郵便局に足を運ぶきっかけになったらうれしいです。

■2025年5月29日からKITTE大阪で開催中!
リアル脱出ゲーム『KITTE大阪と約束の手紙』
https://realdgame.jp/s/kitte-osaka/
■2025年7月6日まで開催予定!
リアル脱出ゲーム『郵政博物館と時を超えた手紙の謎』
https://realdgame.jp/s/postal-museum/
■2025年11月30日まで開催予定!
ナゾトキ街歩きゲーム『銀座令嬢誘拐事件』
https://realdgame.jp/s/ginza/
■KITTE大阪に関する記事
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※「リアル脱出ゲーム」「ナゾトキ街歩きゲーム」はSCRAPの登録商標です。

