私のオンとオフ スイッチインタビュー 日本三大民謡「磯節」で日本一! 目指すのは、心に届く「唄」と「接客」
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約24,000ある郵便局をはじめ、全国で働く約40万人の日本郵政グループの社員。この企画では、それぞれの立場で仕事に取り組む社員の姿勢と知られざるプライベートでの横顔、そんなオンとオフの両面で活躍する社員の魅力ある個性を掘り下げていきます。
今回お話を聞いたのは、茨城県の岩船郵便局に勤務する伊藤さん。プライベートでは長年、民謡歌手として活動し、数々の大会で優秀な成績を収めています。その両立の極意を伺いました。
岩船郵便局
伊藤 芳枝(いとう よしえ)さん
2016年、日本郵便株式会社に入社。2025年4月から岩船郵便局で勤務。持ち前の明るさを活かし、窓口業務に従事している。仕事や民謡に打ち込むかたわら、ご家族と過ごす時間が何よりも大切とのこと。
窓口では、日常会話も大切にしたい
――入社のきっかけを教えてください。
伊藤:地元の水戸市で転職活動をしていた際、ATMを利用しようと郵便局に立ち寄ったんです。そこで、目に留まったのが社員募集の貼り紙でした。実は、父がかつて郵便局に勤めていたこともあり、郵便局は私にとって身近な存在でした。以前は幼稚園の先生などをしていたのですが、これまでとは違うタイプの仕事をやってみたいと思い、応募を決めました。
――現在はどのような仕事をされていますか。
伊藤:郵便・貯金・保険、すべての窓口を担当しています。
――岩船郵便局がある地域は、どのような環境ですか。
伊藤:自然に囲まれた、のどかな場所にあります。「このあたりでホタルを見たよ」といった日常会話が弾んだり、「郵便局で伊藤さんと話すのが楽しい」と言っていただけたり、お客さまとの距離は近いと感じています。そういった何気ない会話が、お客さまのお役に立てるようなサービスのご提案につながることもあるので、事務的なやり取りだけでなく、日常の会話も大切に、常に笑顔を心がけ、明るく元気にお客さまとコミュニケーションをとっています。
2歳で初舞台。子どものころから打ち込んできた「民謡」の世界
――伊藤さんは民謡歌手としても活動されているそうですね。そもそも「民謡」とは、どういった音楽ジャンルなのでしょうか。
伊藤:民謡は、「民(たみ)の謡(うた)」と書くように、人々の生活のなかから生まれ、伝承されてきた唄のことです。その種類もさまざまで、仕事のつらさを和らげるための「作業唄」、結婚式や新築祝いでうたう「祝い唄」、神さまに捧げるための唄などがあります。現在まで伝承されている曲は、有名なものだけでも約1,000曲に上ります。例えば「ソーラン節」も北海道の民謡なんですよ。
――そうなんですね! 民謡を始めたきっかけは何でしたか。
伊藤:きっかけは両親です。父が大の民謡好きで、母は父に影響されて民謡教室に通うようになり、後に独立して自分の民謡会を持つまでになりました。私は生後3カ月のころには母に稽古場に連れられ、座布団の上で寝かせられていたそうです(笑)。そんな環境で育ち、初舞台は2歳半。宮崎県の結婚式の祝い唄「シャンシャン馬道中唄」をうたいました。とにかく楽しくて、そこから途切れることなく今もうたい続けています。
――具体的にどのような活動をされているのでしょうか。
伊藤:民謡教室や民謡会に所属しながら大会に出場したり、地域のイベントやお祭り、敬老会や老人ホームで唄を披露したりしています。
――今までで一番印象深い大会はありますか。
伊藤:茨城県の郷土民謡「磯節(いそぶし)」の第39回全国大会ですね。磯節は、北海道の「江差追分(えさしおいわけ)」、福岡県の「博多節(はかたぶし)」と並ぶ日本三大民謡の一つとされています。出身地ということもあり、私は幼いころからこの唄に親しんできて、18歳から毎年この大会に出場していましたが、ある年は決勝で負けてしまったり、ある年は予選敗退となってしまったりなど、心が折れそうになるような経験をしてきました。それでも挑戦を続け、出場11年目の、第39回大会でついに優勝。「本当に私が?」と思うほど、信じられないうれしさだったことを覚えています。同時に身が引き締まり、これからも頑張ろうと思いました。
――伊藤さんにとって、民謡の魅力とは何ですか。
伊藤:やればやるほど難しさがあり、終わりが見えないところが魅力だと思っています。民謡を始めて35年になりますが、いまだ師である母の期待に応えられず、悔しい思いをしたり、涙したりすることもあります。人生を懸けても終わりがないほど、奥深い世界です。
――とても興味深いお話ですね。民謡をうたううえで大切なこととは何ですか。
伊藤:よく言われているのは、「一声(こえ)・二節(ふし)・三に味(あじ)」です。まず「声」がきれいに出ていること。次に「節」がちゃんと旋律にのっていること――「節」とは唄の旋律や、その唄特有の節回しのことです。そして「味」、つまり情や情景が感じられるかどうかです。また、唄の背景や歴史を理解し、その情景を表現できているかも大切です。
例えば、栃木県に伝わる「越名(こいな)舟唄」は、越名(佐野市)と江戸を往来した船頭の民謡です。川の難所を命懸けで越えていく舟の情景や、そのときの船頭の心情をしっかりと込めてうたう必要があります。このような「一声・二節・三に味」が大会では審査のポイントになります。
仕事の経験を唄にのせて! 「両立」こそが、私の強みに
――稽古や大会出場など、民謡の活動はいつ行っているのですか。
伊藤:平日は仕事以外に家事や育児もあるため、稽古は土日に集中して行うことが多いです。一回の稽古時間はおよそ4時間くらいですね。大会やイベントも土日が中心なので、時期によって波はありますが土日がすべて民謡の活動で埋まる月もあります。
――とても多忙ですね。仕事との両立に難しさを感じることはないですか。
伊藤:不思議と、それがないんです。学生時代から学業と民謡を両立してきたので、そもそも自分のなかにオン・オフの区別があまりないのだと思います。人や環境にも恵まれてきました。家族にはたくさん支えられていますし、職場では「明日大会なんです」と伝えると、上司が「頑張ってね」と背中を押してくれます。本当にありがたく思っています。
――民謡と仕事で共通する部分や、両立することでの相乗効果はありますか。
伊藤:民謡で「どうやって表現したら(聞き手の)心に響くのか」を考えることと、仕事でお客さまに対して「どうやってお声かけしたら(お客さまの)お役に立てるのか」を追求することは、私のなかで共通しています。
民謡のステージでは、心に響く唄が届けられたとき、感動して涙を流して喜んでくださるお客さまもいらっしゃいます。仕事では、お客さまへの声のかけ方次第で、潜在的なニーズを引き出せるかどうかが変わります。どう表現すれば心に届くのか、その意識は民謡と仕事に共通し、互いによい影響を与えあっていると感じます。
――オンとオフ、それぞれの今後の目標をお聞かせください。
伊藤:仕事では、お客さまのことを第一に考え、お客さまの人生に寄り添える社員でありたいと思っています。将来的には、自分が学んできたことを後輩に伝えてあげられるような上司になりたいですね。
民謡では、仕事ありきで芸を極めたいと思っています。民謡だけで食べていきたいと思った時期もありましたが、仕事での喜びや苦労をそのまま唄にのせられることは、仕事と民謡を両立している私ならではの強みだと、いつしか感じるようになりました。この強みを活かして、これからも両立していきたいと思っています。
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