竹富郵便局(沖縄県)|エモい郵便局図鑑 No.11

1871年、「日本近代郵便の父」と呼ばれる前島 密(まえじま ひそか)によって郵便事業は開始されました。それから時は流れて150年以上経った現代、日本各地には激動の時代を見守ってきた郵便局が今でも残っています。ある人はそんな歴史ある郵便局を、畏敬の念をこめて「エモい郵便局」と言うんだとか――。
郵便局のノスタルジックな魅力に取りつかれたフォトグラファー・ライターが日本各地を訪れて紹介する「エモい郵便局図鑑」。今回の舞台は、沖縄県の竹富(たけとみ)島にある竹富郵便局です。
竹富島の中心集落に位置し、周囲は国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されている。
(沖縄県八重山郡竹富町竹富500)
■開局
1936年(昭和11年)
■概要
1993年(平成5年)に現局舎へ移転。沖縄らしい赤瓦屋根が特徴で、レトロな郵便ポストが残る、どこか懐かしい風景が撮影スポットとしても人気。
■歴史
開局以来、島唯一の金融機関として島民から親しまれている。開局当初は電話交換作業も伴い、沖縄本土復帰時には通貨交換所となる。1993年に現在の新しい局舎へとリニューアルされた。
■名物
沖縄の伝統的な赤瓦屋根やシーサー、「マイヤシ」と呼ばれる魔除けの意味を持つ石垣を設置するなど、島の景観に配慮した古民家らしい装いで、観光客からも注目を集めている。
■交通アクセス
竹富港から徒歩で約15分、自転車で約5分
沖縄県・八重山諸島。世界自然遺産に登録された西表(いりおもて)島や、日本で最後に日が沈む最西端の島・与那国(よなぐに)島など、個性豊かな島々が連なるなかで、竹富島は沖縄の昔ながらの町並みを今に残す島として存在感を放っています。


島の玄関口・竹富港から徒歩でおよそ15分。沖縄の原風景を思わせる集落のなかに、竹富郵便局は静かにたたずんでいる。

「この局舎は1992年から1993年にかけて建設されました。外観の塗装を塗り替えたり、屋根の瓦をふき替えたりと定期的に修繕は行っていますが、基本的なデザインは30年前から変わっていません」
竹富郵便局の局長、金城 文博(きんじょう ふみひろ)さんはそのように話す。
※取材時の所属

沖縄本島の中頭郡(なかがみぐん)北中城村(きたなかぐすくそん)にある中村家住宅(国指定重要文化財)をモデルに設計された竹富郵便局。局舎でひときわ目を引くのが、鮮やかな赤茶色の屋根瓦。これは「赤瓦(あかがわら)」という沖縄の伝統的な民家に使われる部材で、鉄分を含んだ赤い土を焼いて作るため、このような色になるのだという。

瓦のつなぎ目にはサンゴを加工して作られた漆喰(しっくい)が使われており、雨風を防ぐ役割を果たしている。まさに、台風の多い沖縄の気候に適した屋根だ。
金城さんによると、竹富郵便局の屋根獅子(シーサー)は開局当時から置かれているものだそう。30年以上にわたり、この場所で郵便局を見守り続けてきたのだ。

建物の周囲にも注目したい。局舎を囲んでいる石垣、これは「グック」と呼ばれる琉球石灰岩(サンゴ礁の隆起によってできた岩)を石積みしたもので、強い海風や台風から家を守ってくれる。
また、入り口正面のマイヤシ(石垣)も台風対策の一つだが、プライバシーを守る目隠しの役割や、"魔物の侵入を防ぐ"という意味も込められているという。

竹富郵便局は、沖縄の民家の様式を本格的に取り入れた初めての郵便局。なぜ、このようなデザインとなったのか。
「1987年、竹富島は島全体が国の重要伝統的建造物群保存地区(全国各地に残る歴史的な集落や町並みを保存する制度)に選定されました。そのため、島の景観に配慮したデザインが選ばれたのだと思います」(金城さん)

赤瓦屋根の伝統的な民家、石垣から顔をのぞかせるブーゲンビリアやハイビスカスなど南国の花々、サンゴ砂を敷き詰めた白い道、そして集落をのんびりと行き交う水牛車。

そんな"琉球時間"が流れる島の風景のなかに、竹富郵便局は見事に溶け込んでいる。そのため、観光スポットのような感覚で訪れる人も多い。
「皆さん、郵便局の前で記念撮影をしたり、フレーム切手を購入したり、風景印を押したりして楽しまれているようです」(金城さん)

風景印を見ると、赤瓦屋根の町並みに、石垣市と竹富町を生産地とする伝統的な織物「ミンサー」の帯、そして島の浜辺で見つかる星砂(ほしずな)がデザインされていた。
ミンサーの特徴は、五つと四つの絣(かすり)模様。「いつ(五つ)の世(四つ)までも末永く幸せに」という意味が込められているという。この模様は制服として着用されている「かりゆしウェア」にもワンポイントであしらわれている。

金城さんがおすすめする竹富島のスポットは、島の西側にある西桟橋だ。ここから眺める夕日が抜群に美しいのだと、金城さんは力説する。



金城さんがよく通うという食事処は、竹富郵便局から徒歩5分ほどの距離にある「カフェ テードゥン しだめー館」 。人気メニューは「竹富そば」で、八重山そばに三枚肉とゆで卵がトッピングされた味わい深い一品。ラフティ丼や竹富島産車海老の素揚げもおすすめ。

島の豊かな自然や、地元の人に愛される店に触れていくと、ここで営まれている日常の輪郭が少しずつ見えてくる。
祖先から受け継いだ文化や自然を守りたい――。伝統的な赤瓦屋根の局舎は、そんな島の人々の想いに寄り添う姿勢なのかもしれない。これからも島の人々とともに、竹富郵便局はこの島の日常と風景を静かに見守り続けていくだろう。

