Instagram

日本の最南端で出会う、ここだけの景色。波照間島の郵便局

地域/街 2026.7.09
日本の最南端で出会う、ここだけの景色。波照間島の郵便局

INDEX

全国津々浦々に点在する郵便局。街にも、山にも、海の向こうの島にも、人の暮らしがあるところには、必ずその姿があります。
では、"日本のいちばん端"に立つ郵便局は、どんな風景の中で息づいているのでしょうか。

地図の果てを追いかけるように、今回は日本最南端の有人島・波照間島(はてるまじま)にある波照間郵便局を訪れました。
社員がおすすめする島の風景やスポットもご紹介します。

大自然と満天の星空に魅了される、絶景の島

沖縄県の石垣島からさらに高速船で約1時間余り、まさに南の果てにやってきた!と実感する波照間島。天候によっては船が欠航することも少なくない環境ながらも、手つかずの自然と雄大な星空に魅了され、遠くから何度も訪れる旅行者も多い島です。

波照間島の魅力は、なんといっても海。透明度が高く美しい青のグラデーションから、「波照間ブルー」と呼ばれることも。特に島の北西部にある「ニシ浜」は八重山諸島屈指の美しさとも評されます。

ニシ浜へ続く道を抜けると、まさに絵画のような光景が広がっている

日中もさることながら、波照間島のビーチは日没の美しさも格別。水平線に沈んでいく夕日が海と空をゆっくりと染め上げ、周囲は波音だけが静かに響きます。

島の西側に位置する「ペー浜」から見る夕暮れ

波照間島に来たら、必ず訪れたいスポットがあります。それが島の最南部に立つ「日本最南端の碑」。その名のとおり、ここが日本の有人島における最南端の場所です。

日本最南端の碑は東経123度47分12秒、北緯24度02分24秒の位置にある

日本最南端の碑の周辺は絶好の天体観測スポットでもあります。波照間島の星空がきれいなのは、人工の明かりが少なく、上空の気流の影響も少ないから。時期や好条件が重なると南十字星も観測することができます。

日本最南端の碑から見る南十字星

専用ケースを準備。郵便局から郵送されるお土産の定番は島自慢のアレ!

まるで映画のような絶景が島中で見られる波照間島。しかし、ひとたび集落を歩いてみると、商店で買い物をする人や、公園でキャッチボールに興じる子どもたち、サトウキビ畑で作業に励む農家の姿など、島の日常の確かな営みが感じられます。

集落の中心に立つ大木(左上)。化粧パフのようなオオベ二ゴウカン(左下)。家々の屋根にはシーサーが座っている(右上)。
収穫時期を迎えたサトウキビ畑(右下)。

そんな島の人々の生活のなかで、郵便局はどのような役割を果たしているのでしょうか。島唯一の郵便局・波照間郵便局の玉那覇さんにお話を伺いました。

玉那覇 伸(たまなは しん)さん

波照間郵便局局長

玉那覇伸(たまなはしん)さん

2023年から局長を務める。波照間島に赴任してから釣りを始め、自分で捌くことも。

※取材時の所属を記載しています。

まず、郵便局を利用するお客さまについて伺うと、地元住民と観光客が中心であると教えてくれました。

「特に観光で訪れた皆さんは、島の名物である泡盛を郵送される方が多いですね。郵便局では、お酒の瓶用にエアークッションや専用ケースの販売も行っています」(玉那覇さん)

現在の波照間郵便局(左)。近隣にある旧局舎はそのまま残されている(右)。
風景印には日本最南端の碑がデザインされている(左)。島名物の泡盛を送るための梱包資材が充実(右)。

「"日本最南端の郵便局"なので、それを目当てに訪れるお客さまもいらっしゃいます。建物の前で写真を撮られたり、記念に風景印を押していかれたりと、思い出づくりを楽しまれているようです(玉那覇さん)」

島内には歴史を感じさせる遺構も残っている。かつて海上を行く船の監視に使われた「コート盛」

玉那覇さんは、人の温かさや島の自然の美しさに魅了されてきたと言います。

「地域とのかかわりで一番印象深かったことは、着任1年目のときに、島の狂言(芝居)に出演したことですね。ムシャーマ(※)というお盆の行事があるのですが、そこで島の人に誘われて"若者A"みたいな役を演じることになったんです。セリフは一言、二言でしたが方言が難しくて......。でも、すごくいい経験でしたね」

※波照間島で7月14日(旧盆)に行われる、先祖を供養し五穀豊穣や島民の安全を祈願する伝統行事

玉那覇さんがよく通う島の食堂「ぶどぅまれー」。豚足や冬瓜が入ったおでん盛や、オオタニワタリのバター炒めは絶品!(左)。チャンプルーの種類も豊富(右)。

波照間島は夜空も海もきれいで驚きました。お気に入りの風景は、波照間港に続く坂道です。真っすぐ続く下り坂の向こうに防波堤と海が見える、その光景が好きなんです」(玉那覇さん)

「手紙」を通して広がる、島民と郵便局をつなぐ取り組み

立場に関係なく、ご近所どうしは皆さん、苗字ではなく名前で呼び合っているという温かい人間関係の波照間島。郵便局としても地元の方とのつながりを大切にしたいと玉那覇さんは言います。

その実践として郵便局で取り組んでいるのが、島の小学生を対象とした「手紙の書き方教室」。子どもたちに手紙を書いて投函する体験をしてもらおうと、2年前からスタート。発案したのは社員の阿部有美子(あべゆみこ)さん。12年前に地元宮城県から高知県に移住した経験があり、「移住経験を活かして活躍できる場を」と、自ら手を挙げて波照間島にやってきました。

島唯一の郵便局として何ができるか。阿部さんの移住経験が活きる

「手紙の書き方教室は、全学年を対象に年2回ほど実施しています。内容としては、手紙を書いてもらい、ポストに投函するところまでを行うのですが、初めて手紙を出す子どもたちのなかには『せっかく書いたのに出すのがもったいない』と、なかなか手紙を手離さない子もいます(笑)。」(阿部さん)

波照間島をモチーフにした消しゴムスタンプ(左)。局内には靴を脱いでスタンプを押せるスペースが。これも阿部さんのアイディア(右)。

この手紙の書き方教室をきっかけに知り合った子どもたちが、郵便局を訪れるようになり、継続的な交流が生まれているそうです。ほかにも、中学生から美術の授業で制作した消しゴムスタンプを寄贈してもらうなど、島の人々と郵便局をつなげる取り組みが次々と広がっています。

波照間郵便局の皆さん

玉那覇さんは、郵便局としてあるべき姿について次のように語ってくれました。

「気軽に来て話ができるような場でありたいですね。特に普段外に出歩くことが少ないご年配の方は、郵便局に行くのが貴重な機会になっている方も多いと思います。ぜひゆっくりしていってもらいたいですし、親しみやすい郵便局であり続けたいと思います」

最後に、阿部さんおすすめのスポット、「ウラピナ浜」と「底名(そこな)溜池展望台」をご紹介。いずれも波照間島の自然を存分に感じられる場所で、ゆったりとした島時間を心ゆくまで味わえます。

プライベートビーチのような静かな雰囲気のウラピナ浜。白く砕けたサンゴがあたり一面に広がっている
島内には歴史を感じさせる遺構も残っている。かつて海上を行く船の監視に使われた「コート盛」

JP CASTのアラカルト 連載記事一覧はこちら