地域を耕し、未来を育てる。郵便局が取り組む、これからの「農業支援」

地域を耕し、未来を育てる。郵便局が取り組む、これからの「農業支援」

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JAふくしま未来と日本郵政グループがタッグを組んだ農業支援の取り組みが、福島県北部地域でスタートし注目を集めています。取り組みを進める担当者や、農業支援を始めた社員の想いを伺うとともに、2025年11月に行われた「援農支援体験会」の様子をレポートします。

當麻 真生(とうま まさお)さん

日本郵政株式会社 JP未来戦略ラボ グループリーダー

當麻 真生(とうま まさお)さん

2010年、当時の郵便局株式会社に入社。2021年の立ち上げからJP未来戦略ラボのメンバーとなり、本検討に参画。奈良県の五條須恵郵便局で局長を務めた経験をその後の業務に活かしている。趣味は釣りと音楽鑑賞。

浜野 寿和(はまの としかず)さん

日本郵政株式会社 JP未来戦略ラボ マネジャー

浜野 寿和(はまの としかず)さん

2012年、株式会社ゆうちょ銀行に入社。2023年に日本郵政株式会社との兼務となり、本検討に参画。2021年には郵政創業150年に関する取り組みとしてロゴマークなどの制作に携わる。趣味はゴルフ。

高橋 恵美(たかはし えみ)さん

日本郵便株式会社 文知摺(もちずり)郵便局

高橋 恵美(たかはし えみ)さん

2019年、日本郵便株式会社に入社。主に郵便と貯金の窓口業務を担当。2025年から兼業として農業支援を行う。かつてはミスピーチキャンペーンクルーとして、福島のPR活動を行った経歴を持つ。

郵便局による農業支援の取り組みとは

――農業支援の取り組みが始まった経緯を教えてください。

當麻:福島県北部地域の郵便局とJP未来戦略ラボが、地域の課題について協議を行ったのが始まりで、郵便局として地域に何か貢献できないかと出した案の一つが農業支援でした。福島県北部地域は農業が盛んなうえに、地域のJAとのつながりも強いので、どんな農業支援ができるのかを郵便局の皆さんと協議して兼業で開始するという形になりました。

――具体的にはどのようにして農業支援を行うのですか。

當麻:福島県北部地域の郵便局に勤務している社員から希望者を募り、JAふくしま未来が提供している農業支援のマッチングスキームを活用して、人手を必要としている農家の支援を行っています。

――JAを通じて郵便局社員と農家をつないでいるのですね。雇用契約のおおまかなステップを教えてください。

浜野:農業支援を希望する社員は、まず自分が働く郵便局で兼業申請をします。承認が下りたらJAふくしま未来の職業紹介所に登録します。農家からお手伝いの希望が出たら、職業紹介所から連絡が入るので、日を決めて農業支援に行き、後日、農家の方から報酬を受け取るという流れです。

JAふくしま未来の職業紹介所をハブとして、既存の兼業スキームを活用した農業支援の仕組みを構築

――状況に応じて、働きたいときに無理なく働くことができますね。郵便局が農業支援を行う意義やメリットは、どのような点にありますか。

當麻:当然のことですが、郵便局で販売している地域の農作物も、生産されなければ取り扱うことはできません。農家の人手不足などの課題に対応していくことで、持続可能な地域の発展に貢献できると考えています。

浜野:さらに、地域のJAや農家への理解を深めることで具体的な課題が見えてきます。その課題に対して、郵便・物流や販売機能などの"郵便局アセット"を活用し、シナジーを生み出すことにも期待しています。

農業支援の登録者第1号。農業経験が窓口業務にも活きる

――文知摺郵便局に勤務する高橋さんは、農業支援を行う社員第1号として活動しています。どんな想いで農業支援を始めましたか。

高橋:"いで湯とくだものの里"というキャッチフレーズを持つ福島市は果物の名産地です。そんな地元を盛り上げたい、微力ながら貢献したいという想いで始めました。祖父母がリンゴ農家ということもあって、幼いころから農業が身近な存在だったということもありますね。

リンゴ農家で農作業を行う高橋さん。摘蕾(てきらい)作業(※)や収穫など、季節や生育状況に応じた作業を行う
※樹に負担がかからないように余計な蕾を取り除くこと

――兼業で農業支援をやってみていかがですか。

高橋:私自身はまったくの素人なので、お役に立てるかという心配な気持ちと、兼業への不安もありました。でも、農家の方は「手伝ってくれてありがとう、また来てね!」と、本当に温かく受け入れてくれました。

――農業支援のどんなところにやりがいを感じますか。

高橋:小さな実が大きく育って、みんなにおいしいねって喜ばれるのを見ていると、まるで子育てしているようでやりがいを感じます。また、農業支援を始めてからは、自信を持って地元の農作物をお客さまに紹介できるようにもなりました。

「農家のおばあちゃんが来局することもあって、お互い顔を見ると安心するんです」と高橋さん

――業務にも農業支援の経験が活きているのですね。

高橋:窓口では、郵便や貯金の業務のほかに、地域の特産品の販売にも力を入れています。お客さまには、兼業で農作業をしているというお話もするのですが、果樹の品種や特徴、収穫時期などの情報を正確にお伝えできるようになり、郵便局の売り上げにもつながっていると思います。物販業務も自信を持って取り組めることは、新しいやりがいになっています。

いっしょに働く文知摺郵便局の皆さんと(右から2番目が高橋さん)

農作業のリアルに触れる「援農支援体験会」を開催!

2025年11月のとある土曜日、高橋さんのような兼業登録者の増加を目的に、JAふくしま未来と共同で、それぞれの社員を対象にした「援農支援体験会」が開催されました。

おそろいのユニフォームに身を包んだ郵便局社員たちが柿農園へ向かう

晴れ渡る青空のもと、参加者が集まったのは福島県伊達市にある柿農園です。地域の名産である「あんぽ柿」は、カタログ販売として取り扱いをしていることもあり、原材料となる柿の収穫体験を行うことになりました。

この日、郵便局からは14名が参加し、JAふくしま未来の方たちが講師役となり、班に分かれて農作業を進めます。

安全に作業を行うため、道具の使い方からレクチャー。斜面でも使える脚立に乗り、柿を収穫する

脚立や道具の安全な使い方を学んでから、はさみを手に収穫スタート。つややかな柿は濃く色づき、手にするとずっしりと重みを感じます。

4つの班に分かれて黙々と作業を進める。しばらくすると柿はコンテナいっぱいに!

作業はもうひと工程。枝をT字に残しながら再度カットします。このT字にした枝に紐をかけて加工すると「あんぽ柿」になります。初めての農作業ながらも楽しそうに作業をこなしていく参加者の姿がありました。

枝をT字にする作業。ガイドとなる棒を当てて適度な長さにカットする

この取り組みについて、JAふくしま未来の佐藤さんと、福島県北部地域にある岩代郵便局で局長を務める太田さんにお話を伺いました。

JAふくしま未来 営農経済部 営農経済企画課
課長 兼 みどりの食料システム戦略推進担当
佐藤 剛(さとう ごう)さん

福島県の農業の課題は、やはり高齢化です。アンケート調査では、かなり多くの農家が10年後には辞める予定とあり、生産を維持していくのが大きな課題になっています。そんななかで郵便局の皆さんに支援に入っていただけることを非常にありがたく感じています。体験会では、農作業が初めての方が多かったようですが、皆さん楽しそうに作業されていてよかったです。

岩代郵便局(福島県)局長
太田 浩幸(おおた ひろゆき)さん

農業支援の取り組みは、JAふくしま未来とのつながりが深い地域だからこそできるもので、共同でやることに大きな意義があります。経営理念にある「社会と地域の発展への貢献」を達成するため農業支援を実施していきます。また地域の農家をサポートすることで、郵便局社員一人ひとりの成長も期待できます。

体験会に参加した社員にも感想を伺いました。

福島豊田町郵便局
佐藤 翔(さとう しょう)さん

柿や桃など、郵便局でも販売している商品がどのように育てられているか実際に見ることができてよかったです。この経験をもとに果物の物販など、お客さまへのご提案に活かしていこうと思います。

平野郵便局(福島県)
小賀坂 建一(こがさか けんいち)さん

農家の皆さんに協力できればという想いで参加しました。農作業について勉強になりましたし、いっしょに働く仲間たちと外で作業できて気持ちがよかったです。

農業への理解を深め、地域の課題解決のきっかけに

――援農支援体験会を振り返って、感想をお聞かせください。

當麻:みんな楽しそうに作業されていて本当によかったです。

浜野:多くの方が参加され、興味を持っていただけてありがたいですね。

――郵便局社員の皆さんにとってもよい機会だったようですね。

當麻:そのようですね。これまで施策を進めるなかで、地域の郵便局社員から「農業に興味があるけれど、自分ができるのかわからなくて二の足を踏んでいる」、「何かきっかけが欲しい」といった声がありました。そこで、まず気軽に農業に触れてもらう機会をつくろうと、JAふくしま未来や地域の農家と協力して企画したのですが、功を奏したようです。

――では最後に、今後の展望や期待することをお聞かせください。

當麻:今回のイベントを通じて、改めて地域における郵便局の存在感の大きさを実感しました。地域にしっかり溶け込んでいる郵便局だからこそ聞き取れる地域の困りごとも多くあると思います。

今回の取り組みが、さまざまな分野の地域課題に取り組んでいく一つのきっかけになればうれしいです。

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