郵便局に新鮮卵が! 地元名産品の無人販売で地域のよりどころを目指す

郵便局に新鮮卵が! 地元名産品の無人販売で地域のよりどころを目指す

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神奈川県秦野市の西秦野郵便局では、2024年より地域貢献につながる新たな取り組みを始めています。局内のロビーの一角を地元事業者に貸し出し、地域の特産品などを「無人販売」するという試みです。この取り組みの狙いなどについて、お話を伺いました。

松本 まゆみ(まつもと まゆみ)さん

西秦野郵便局 局長

松本 まゆみ(まつもと まゆみ)さん

2009年、西秦野郵便局にアルバイトとして採用され、2012年に正社員登用。2017年にはCS(顧客満足度)のさらなる向上を目指して西秦野郵便局の局長に就任し現在に至る。生まれ育った九州から遠く離れた地での暮らしのなかで、秦野市の人々の温かさに支えられたことが大きな助けとなったそう。

地域貢献から始まった郵便局での無人販売

――西秦野郵便局がある秦野市はどんな特徴の地域ですか。

松本:神奈川県北西部にある丹沢山地の南東から東側に広がる「表丹沢」エリアの麓に位置します。丹沢の山並みがすぐそばに迫り、高台からは富士山も美しく望めます。もう一つの自慢が「水」です。「地下水盆」という地形構造が天然の水がめとなり、地下には豊富な水が蓄えられていて、地下水をボトリングした「おいしい秦野の水~丹沢の雫~」は、環境省が2016年に実施した名水百選選抜総選挙において「おいしさが素晴らしい名水部門」で全国1位にも輝いています。

秦野市から望む富士山。特に、午前中がきれいに見える
西秦野郵便局

――松本さんが感じる、秦野市の魅力は何でしょうか。

松本:人の温かさですね。郵便局にお越しになるお客さまはもちろん、街で暮らす皆さんが本当に親切です。私は結婚を機に秦野へ移り住み、地元を離れて心細い時期がありましたが、地域の方々に支えられてきました。子育ても、ご近所の助けがなければ乗り切れなかったでしょう。そのご恩を少しでもお返ししたい、という想いが今回の取り組みにもつながっていると思います。

――無人販売を始めた経緯や目的を教えてください。

松本:昨年、市外の別の郵便局を訪れた際、近隣の福祉施設で作られた品を無人販売しているのを目にしました。「こんな取り組みができるのか」と驚くとともに、地域貢献につながる取り組みだと思い、すぐに自局でも取り入れようと決めました。

無人販売を通じて、地域の魅力を発信する場に

――具体的には、どのような取り組みから始めたのですか。

松本:秦野市と日本郵便は包括連携協定を締結しているのですが、タイミングよく丹沢の水の無人販売の話がまとまりました。さらに、この丹沢の水を使った特産品がいっしょに並べば相乗効果が生まれると考え、お茶・卵・そばなどを扱う事業者(西秦野郵便局の近隣に店舗や工場がある会社)さんで、日ごろから郵便局をご利用いただいている方々に声をかけました。

私自身が実際に食べておいしさを知っている商品やお店なので、来局されるお客さまにも、そういった地域の魅力的なお店や商品をぜひ知っていただきたかったのです。

――隠れた名品・名店に出合えるということですね。

松本:そのとおりです。取り扱う商品は食品だけでなく、同じく丹沢の水を使用した化粧品もあります。また、過去にはシーグラスのアクセサリーや間伐材(かんばつざい)で作ったおもちゃなども販売しており、今後、販売の再開を予定しています。

窓口ロビーに設置された無人販売スペース(2025年9月現在)
秦野市に研究工場を持つ横浜油脂工業株式会社の化粧品(2025年9月現在)

「とりあえず郵便局へ」と思える地域のよりどころに

――無人販売を始めて、局内での変化はありましたか。

松本:無人販売をきっかけに来局する方が増え、お客さまとのコミュニケーションの機会も広がったように感じます。商品についての質問から話が弾み、「そういえば保険に関する手紙が届いたけれど、話を聞いていいですか」と、郵便局のサービスに話題が及ぶこともあります。ATMのみを利用されていたお客さまが、無人販売の商品を見に窓口ロビーまで入ってこられることも多くなりましたね。

――西秦野郵便局で自社製品を出品している事業者の皆さんにもお話を伺いました。(2025年9月現在)

左から横浜油脂工業株式会社の永田さん、みくるべたまご自然農場の澤口さん、西秦野郵便局の松本さん、NICO KIKURAGE(有限会社山昌)の山口さん、石庄丹沢そば茶屋本舗の坂上さん

NICO KIKURAGE(有限会社山昌)
山口 裕子(やまぐち ゆうこ)さん
秦野でIoTを用いたキクラゲのコンテナ栽培を行っています。西秦野郵便局での販売に参加するきっかけは知人からの紹介でした。説明がないと手に取ってもらいにくい商品かなと思っていましたが、多くの方にお買い求めいただき驚いています。

有限会社 石庄丹沢そば茶屋本舗
坂上 絵里子(さかうえ えりこ)さん
私は以前から西秦野郵便局を利用しており、松本さんもお客さまとして当店に足を運んでくださっていました。ですので、お声がけには迷わず"ぜひ"とお返事しました。無人販売をきっかけに当店を知り、実際に来店される方もいらっしゃいます。

みくるべたまご自然農場
澤口 裕師(さわぐち ひろのり)さん
お声がけいただいたのは、私が「子どもの食育につなげたい」との思いで第三者事業承継をし、養鶏を引き継いで間もないころでした。先代からのお客さまはいましたが、新しい方々に知っていただく好機だと思いました。今では卵を目当てに郵便局へ足を運んでくださる方もいてありがたく思っています。

横浜油脂工業株式会社
永田 実(ながた みのる)さん
当初、松本さんから「郵便局を通じて地元の魅力を発信したい」という強い想いを伺い、当時の社長(現在は会長)に報告したところ、すぐに全面協力が決まりました。地域貢献にも力を入れている当社としては、郵便局を通じて地域の皆さんに商品を知っていただくことは大変ありがたいです。

――今後の無人販売の展望について教えてください。

松本:無人販売の品ぞろえをさらに充実させたいと考えています。目標は、道の駅以上の充実度で「郵便局に行けば何でもそろう」と思ってもらえることです。近隣の方の買い物の助けとなり、皆さんが気軽に「とりあえず西秦野郵便局へ」と思える拠点に育てていきます。理想は、「地域のよりどころ」です。用事がなくても、ふらっと立ち寄れるような場所になれたらいいですね。

西秦野郵便局の皆さん。課長代理の神保 翼(じんぼ つばさ)さんは「無人販売の取り組みによって、私自身も事業主の皆さんからいただくパワーが、仕事の"やる気"につながっています!」と語る(写真後列左から2人目)
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