街とつながるJP百景 Vol.9 空き家調査に貢献! 地域に根ざした郵便局の新たな役割

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日本全国に約24,000ある郵便局。それぞれの郵便局の景色は、その街で働く人、暮らす人とのつながりによって作られています。本企画では、地域と協力しながら、ユニークな取り組みをして独特の景色を作りだしている郵便局をピックアップ。
第9回は、三重県玉城町(たまきちょう)で行われている「空き家調査業務」にフォーカス。その土地に根付いた郵便局だからこそできる、自治体が抱える課題を解決する強みと可能性に迫ります。
玉城郵便局 局長
大西 建也(おおにし たつや)さん
1994年、郵政省(当時)に入省。静岡県内の郵便局で勤務した後に地元にUターン。2021年より現職。
松阪郵便局 第一集配営業部 玉城集配センター 課長
加納 幸浩(かのう ゆきひろ)さん
1989年、郵政省(当時)に入省。鳥羽郵便局など三重県内の郵便局で経験を積み、2024年4月から現職。空き家調査に従事している。
松阪郵便局 第一集配営業部 玉城集配センター
見並 芳記(みなみ よしき)さん
2018年、日本郵便株式会社に入社。2022年度から空き家調査業務に従事。精度の高い調査と、調査物件に対する的確なコメントに定評。
玉城町 まちづくり推進課 課長
中川 泰成(なかがわ やすなり)さん
日常的な意見交換を重ね、町の"困りごと"を把握して業務を提案
三重県南勢の伊勢志摩エリアにあり、古来より伊勢参宮の宿場町として、また、世界遺産・熊野古道の街道起点をなす要衝として栄えた地、玉城町。

そんな玉城町と郵便局がタッグを組み、日本郵政グループとして初となる「空き家調査」を実施しました。一体どのような取り組みなのか、取り組みを推進する皆さんにお話を伺いました。
2020年の国勢調査で玉城町の人口が減少傾向に転じたことが判明。人口が減少すると増えてくるのが空き家。空き家は、地域の防災や衛生、景観などへの悪影響を及ぼしかねない存在です。
玉城町が把握していた空き家は約300軒(2022年度調査)。実際に空き家がどのくらいあってどういう状況なのかなど、実態は把握できていませんでした。そこで、調査をしようと玉城町が空き家の現状確認を最初に依頼したのは、各自治区の会長たちでした。
「空き家の現状確認は自治会長さんにとって大きな負担となってしまいます。調査した空き家は、紙の地図を広げて一つひとつ塗りつぶすなど、アナログな作業の連続です。これでは生産性がなさすぎると、みんなで頭を抱えていました」と、玉城町 まちづくり推進課の中川さんは当時を振り返ります。
調査対象となる空き家の写真があるはずもなく、住所だけを頼りに空き家をまわるのにひと苦労。調査後は紙の調査票を保管するにとどまり、データ化は行われていませんでした。

その後、2021年に玉城町と日本郵便が包括連携協定を締結します。
「協定をきっかけに、玉城町と何かできればと思っていました」と話すのは、玉城郵便局 局長の大西さんです。大西さんは、玉城町と意見交換を重ねるなかで町が抱える課題を知ります。総務省の実証事業である郵便局活性化推進事業において、宮城県東松島市で行った郵便局社員による空き家調査の取り組みをヒントに 、空き家調査を提案しました。
「私たち郵便局は、日ごろの業務を通して地域のことをよく知っています。毎日のように地域を配達してまわっているので道や土地にも詳しい。空き家調査は、郵便局の強みを活かせると思いました」(大西さん)

そして、日本郵便は「空き家調査業務」を玉城町より受託、2023年1~3月に空き家調査を実施しました。
「年末年始の繁忙期が落ち着いて、雨の日が少ない2月を中心に調査を行いたいと考え、この時期に設定しました。それから毎年、同じ時期に空き家調査を実施し、2025年で3回目となります」(大西さん)
空き家調査業務に密着! デジタルで効率化され、新たなやりがいも創出
空き家調査は、どのように行われているのでしょうか。
まず郵便局は、玉城町から調査対象となる空き家リストのデータを受け取ります。そのリストに掲載された空き家物件を調査するのは、日ごろの集配業務を通じてその土地に精通している郵便局社員です。
該当する住宅に到着すると、集配業務を一旦中止し、「玉城町」の腕章をつけて調査業務を始めます。

手にしているのは、タブレット端末。空き家の外観を目視で確認して、玉城町から指定された7つの調査項目をもとにチェックします。
そのほかに気になったことや現場で得られた情報は備考欄に入力します。
「近所の方が話しかけてくれることもあって、コミュニケーションをとる機会にもなっています」(見並さん)

タブレット端末上のマップには、空き家の位置がピンで表示され、郵便局社員は効率よく調査を行うことができます。
さらに、空き家の写真も状況を伝える大事な要素です。
「状況がわかりやすいように引いて撮ったり、ズームにして撮ってみたりと工夫をしながら撮影しています」(加納さん)
現地に足を運んでみるからこそ、収集できる情報がたくさん。時には空き家リストに載っている住所に誤りがあったり、すでに住宅などの建物がなく空き地になっていたりする場合もあります。そのようなケースも含めて、空き家の最新状況を洗い出すことができています。
空き家調査は郵便局社員の新たなやりがいにもつながっています。
「私は玉城町で生まれ育ったので、地域に恩返しできたらという気持ちで調査をしています」(見並さん)
「空き家調査という新しい業務にチャレンジできますし、自分が住んでいる玉城町の課題を解決する取り組みに携われてやりがいを感じています」(加納さん)
このような社員一人ひとりの想いが地域の課題解決への原動力となり、玉城町の未来を支える力となっています。
ダブルチェックで調査の精度をアップ。さらなる取り組みも検討!
空き家調査で取得した画像付きの調査票は玉城町から自治会長へ渡され、それをもとに自治会長が再度、空き家を調査します。
「玉城町にとって二重投資になるのではと思われるかもしれませんが、それは違います。まず、郵便局が調査することで自治会長さんの負担を軽減することになり、ダブルチェックをすることで調査の精度を上げることができます」(中川さん)
空き家調査から発展して、玉城町では空き家を「売りたい人・貸したい人」と「買いたい人・借りたい人」をつなぐ「空き家バンク」も実施し、登録が増え始めました。このマッチング施策が順調に運び、空き家の活用につながっています。
「最終的な目標は空き家の解決、つまり空き家をなくすことですね。そして、空き家調査の精度を上げることと効率化すること。この両方をやらないと住民サービスはよくなりません。郵便局の力も借りて、これからもよりよい住民サービスを実践していきたいと思います」(中川さん)
玉城町では、今後も引き続き空き家調査を実施していく予定です。さらに、空き家調査を契機に、郵便局の"地域と行政をつなぐ役割"も期待されています。
「全国には約24,000もの郵便局があります。それぞれの地域に合った、それぞれの郵便局の役割があると思います。対企業のビジネス物流であったり、対個人の"よろず相談所"であったりです。その土地、地域で役割を果たせる郵便局になれればいいですね」(大西さん)

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