私のオンとオフ スイッチインタビュー 想いを乗せて。筝曲演奏家が奏でる二重奏

私のオンとオフ スイッチインタビュー 想いを乗せて。筝曲演奏家が奏でる二重奏

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約24,000ある郵便局をはじめ、全国で働く約40万人の日本郵政グループの社員。この企画では、それぞれの立場で仕事に取り組む社員の姿勢と知られざるプライベートでの横顔、そんなオンとオフの両面で活躍する社員の魅力ある個性を掘り下げていきます。
今回、お話を聞いたのは、愛知県一宮市の一宮久古見郵便局に勤務する長瀬さん。社員として働きながら、伝統的な和楽器である「箏(こと)」の普及に努める箏曲(そうきょく)演奏家としての顔も持つ長瀬さん。それぞれの活動の意外な共通点を探りました。

長瀬 あずさ(ながせ あずさ)さん

一宮久古見郵便局 課長

長瀬 あずさ(ながせ あずさ)さん

2007年、当時の日本郵政公社に入社。2025年4月より一宮久古見郵便局に勤務し、主に貯金と保険の窓口業務を担当している。

郵便局が好きな祖母のすすめで入社

――まずは、入社のきっかけを教えてください。

長瀬:きっかけは、祖母です。祖母は郵便局が大好きで、貯金や保険など、すべて郵便局にお願いしていました。対応してくれる社員さんの優しい人柄にも惹かれたみたいです。そういう経緯もあり、祖母から郵便局で働くことをすすめられ、私も祖母を通じて郵便局にはよいイメージを抱いていたので、目指すことにしました。

――現在はどのようなお仕事をされていますか。

長瀬:主に貯金・保険の窓口業務や、窓口で受け付けた書類の検査などを担当しています。そのほか、若手社員の育成も任されています。

――仕事のやりがいを教えてください。

長瀬:お客さまとお話をすることですね。楽しくて、時に元気をいただくこともあって、それがやりがいにつながっています。ただ、もちろん仕事としては「楽しい」だけで終わってしまってはダメで、お客さまのお役に立てるようなサービスや商品をどうやったらご提案できるか、そんなことも考えながら、日々コミュニケーションをとっています。

窓口に立つときは、お客さまとの対話を通じて、お困りごとやニーズをくみ取るよう心がけている

――仕事をするうえで意識していることはありますか。

長瀬:「笑顔で明るく元気!」をモットーにしています。お客さまに対しても、同じ局のメンバーに対しても、それは変わりません。 よい仕事をするには、よい環境とよい仲間が必要です。職場の雰囲気をよくするためにも、常に笑顔で明るく元気でいることを心がけています。

演奏のうまさだけではない、想いが伝わる演奏がしたい

――長瀬さんが奏する「箏(こと)」についてお聞きしたいのですが、そもそも箏とはどういう楽器なのでしょうか。

長瀬:お箏は、奈良時代に唐から伝わってきた13本の絃を持つ伝統的な和楽器です。ハープのように絃を弾いて演奏するので、英語訳では「ジャパニーズ・ハープ」といわれることもあります。お箏を演奏する人のことは「箏曲(そうきょく)演奏家」と呼びます。

長瀬さんにとってかけがえのない相棒である、愛用の爪(左)と箏(右)

――ちなみに、「琴」という書き方もよく目にしますが、箏と琴は同じ楽器なのですか。

長瀬:よく混同されるのですが、別の楽器です。
琴といってもさまざまな種類があって、例えば皆さんが琴と聞いてよくイメージされるのは「文化琴」と呼ばれるもので、机にも載るコンパクトサイズで軽量なのに対し、お箏は長さが約180cmもあります。大きさだけでなく、絃を弾くときに使う「爪」の形状も違いますし、音色もまったく異なります。

――代表的な箏の楽曲は何でしょうか。

長瀬:誰もが聴いたことのある楽曲でしたら、お正月に耳にすることが多い「春の海」でしょうか。また「六段の調(しらべ)」も有名な箏曲です。ですが、演奏会では古典の楽曲だけでなく、はやりのJ-POPやアニメソングなどの曲を演奏することもあるんですよ。

箏曲の楽譜は五線譜を縦書きにしたような形式で、一行に四小節が並ぶのが一般的。音は漢数字で表記される

――長瀬さんが箏を始められたきっかけを教えてください。

長瀬:お箏を始めたきっかけも祖母でした。姉が私より先にお箏を始めていたので、私が10歳のころ、祖母から「やってみない?」とすすめてくれたんです。最初は「きれいな衣装が着られるから」という軽い動機でしたが、先生に「上手だね」と褒められるうちにどんどん楽しくなり、小学生で全国コンクールにも出場するほど夢中になりました。

小学生当時の長瀬さん。演奏の原体験が、現在の活動へとつながっている

――印象に残っているコンサートや発表会はありますか。

長瀬:高校時代、2005年日本国際博覧会「愛・地球博」でお箏の演奏をさせていただきました。晴れ舞台ではありましたが、お箏は屋外向きの楽器ではないため日差しが気になったり、出演直前に絃を支える箏柱(ことじ)が割れてしまったりと、いろいろな意味で印象深いステージとなりました(笑)。また、20代最後の年には、若手箏曲演奏家の登竜門である「賢順(けんじゅん)記念全国箏曲祭」で最高位の賢順賞をいただき、本当にうれしかったです。

――長瀬さんにとって、箏の魅力とは何ですか。

長瀬:お箏は、1本の絃でも押し手(絃を押して音程を変える技法)を使えば1音から1音半違いの音を出すことが可能です。13本という限られた絃の数でも幅広い音域を表現できることが魅力だと感じています。

――箏を演奏するうえで心がけていることはありますか。

長瀬:ただ技術的に上手な演奏を目指すのではなく、お客さまの心に届くような「曲想」、つまり曲に表情をつけて想いを込めることを大切にしています。そのために、爪の当て方一つにもこだわりながら、音色を追求しています。

日常のなかに流れる静謐な練習時間。指先に神経を集中させ、一音一音を確かめる

長年両立できているのは、楽しみながら取り組んできたから

――箏の魅力を次世代に伝える活動をされているとも聞きました。

長瀬:地元・愛知県の高校で、月に数回ですが箏曲部の技術指導を行っています。また、2024年からは文化庁からの委託で「邦楽普及大使」としても活動しており、全国の高校生や大学生を対象に、お箏の指導や演奏披露を行っています。

箏曲演奏家の姉とのユニット「SMILE SUN」では息の合ったセッションを披露

――学生の皆さんには、箏を通じてどのようなことを学んでほしいですか。

長瀬:演奏技術の向上だけではなく、挨拶や所作、楽器の扱い方といったお箏に向き合う姿勢についても伝えていますので、そうした経験や学びを、演奏力だけではなく、人としての成長にもつなげてほしいと考えています。

筝曲部の生徒たちの演奏に寄り添いながら、丁寧な指導を行う

――職場の皆さんからの反応はいかがでしょうか。

長瀬:時には演奏会に来てくれることもあります。応援してくれていることもそうですが、お箏のことを知ってもらえるきっかけになれているのかなと思うと、うれしいですね。邦楽普及大使の活動が直前で決まることもあるんですが、勤務スケジュールを調整していただき、両立することができています。本当にありがたいことです。

一宮久古見郵便局の皆さんと長瀬さん(中央)

――箏の活動が仕事によい影響を与えている面はありますか。

長瀬:小さいころからお箏の世界に身を置き、年が離れた方々と触れ合う機会が多かったので、誰とでも緊張せずにコミュニケーションが図れていると思います。

職場内の連携がスムーズだからこそ、和やかで活気ある雰囲気が生まれている

――今後、それぞれの活動でどのような姿を目指したいですか。

長瀬:仕事面では後輩がお手本にしたいと思えるような存在を目指し、お箏の活動ではお客さまの心に届く演奏を届けて、お箏のファンを増やしていきたいです。

和の装いに身を包み、箏の音に想いを乗せて演奏する(©一般社団法人福知山芸術文化振興会)

――最後に、オンとオフを両立するための極意を教えていただけますか。

長瀬:ポジティブに取り組む姿勢が大切だと思います。仕事もお箏も、日々さまざまな課題に直面しますが、大変だからといってネガティブにならず、基礎を大切に、一つひとつ丁寧に向き合えば、きっとよい結果につながるはずです。子どものころから学業とお箏の両方に取り組んできた私にとって、両立はごく自然なこと。でも、それを長く続けてこられたのは、常に楽しみながらかかわってきたからだと思います。これからも、仕事もお箏も、前向きな姿勢で取り組んでいきたいです。

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