たびぽすと 岐阜《馬籠宿》の丸型ポストから歩き出す、江戸時代の面影残る宿場町で街道さんぽ

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あなたに伝えたい旅路がある。

そこでしか見られない景色、そこでしか感じられないものを写真に収めながら旅を進めていく。四季の移り変わりや美しい自然の中に佇むポストを訪ねる旅へ出発です。

今回の旅先は石畳が続く中山道の「馬籠宿」。山間部にある江戸時代の面影を色濃く残す宿場町です。最近は海外観光客にも人気で、伝統の「ひのき笠」をかぶって街道をハイキングする姿も多く目にします。日本の原風景を思わせるノスタルジックな街並みは、歩いているだけでシャッターを切る手を自然と動かされる瞬間がたくさん。

ノスタルジックな石畳が続く「馬籠宿まごめじゅく

馬籠宿の入口から広がるのは、全長約600メートルの坂の石畳。歴史の重みを感じさせるこの道は、かつての旅人たちの足跡を今も静かに宿しており、一歩踏み出すごとに、時代を超えた風景が心を引き寄せます。

江戸以前からこの地で作られ、現代でも実用品として田んぼ作業などに使われている「ひのき笠」はお土産としても人気。かぶって中山道を巡る国内外の観光客の方とも何度かすれ違いました。

馬籠宿は木曽山脈の山間に作られた町です。少し道を逸れると山間に続く里山の風景を見渡すことができ、実際に笠をかぶって田畑の作業をする地元の方の姿も。

自然とともに生活する地元の人の姿を見ていると、こちらの心も穏やかにさせてくれるので不思議です。

今回、旅の起点にしたのは「馬籠郵便局」です。馬籠宿に建ち、宿場町を行き交う人々をずっと見守ってきた郵便局。その前にはかわいらしいレトロな丸型ポストが建っていました。

平成の大合併前まで馬籠は長野県の一部でした。「馬籠郵便局」も長野県の管轄だったのですが、現在は岐阜県に。郵便番号が変わるなど時代の移り変わりを眺めてきた局でもあります。

歴史ある宿場町に佇む馬籠郵便局の周辺にはどんな素敵な場所があるのでしょうか。さっそく巡ってみることにします。

馬籠宿の下入口から入ると坂道に2度に渡って続く急カーブがあります。これは「枡形」と呼ばれているもので、敵の侵入を防ぐためにあえて作られたものなのだそう。「枡形」の先には馬籠宿の象徴となっている大きな水車があります。

馬籠では昭和初期から水車を使い小水力発電が行われており、なんと今でもこの水車で実際に発電されているんだとか。

長年愛されてきた木製の水車は風情たっぷりです。

木曽川山系からの水を利用し水車を回すため、宿場町には水路が巡っています。水のせせらぎを感じながら散策ができるのもうれしいポイント。

石畳の途中、昔飛脚が駆け抜けたこの地に、颯爽と現れた鮮やかな赤の郵便バイクが目に留まります。

時代が変わり運び手が変わったとはいえ、その想いは変わらない。

そんな歴史の継承を感じる場面でした。

馬籠の豊富な食べ歩きグルメを堪能

馬籠には木曽の郷土料理を気軽にいただける食べ歩きグルメも豊富。

ぜひ食べてもらいたいのが、中部地方の山間部で古くから伝わる五平餅。馬籠宿にもいくつか店舗があるのですが、今回訪れたのは「かなめや」です。

各家庭、お店によってそれぞれの味があると言われている五平餅ですが、「かなめや」では馬籠産のうるち米を使って作られているのがポイントだそう。コクのあるタレも、くるみ、ごま、落花生、しょう油を用いて独自のブレンドをしているのだとか。

わらじ型とだんご型の五平餅があり好きな形をチョイス。付け合わせに出される手作りの漬物も美味。冷やし甘酒などもあるので栄養補給にもぴったりです。

続いて見つけたのが、肉寿司をいただくことができる「新清水屋」です。

こちらでいただいたのは、岐阜県産の飛騨牛と長野県産のりんご和牛信州牛の肉寿司。岐阜、長野両方の文化を持つ馬籠という土地ならではのメニューです。注文と同時に軽く炙っているそうで、ほのかな香ばしさが広がり、シンプルながらも深い味わいを堪能することができます。

展望台からの絶景と、おいしいコーヒーでひと休み

遊歩道を登り切った先には、岐阜県側の山並みを一望できる展望広場があります。馬籠出身の作家、島崎藤村も『夜明け前』の文中で「馬籠はこんな峠の上ですから、隣の国まで見えます。どうかするとお天気の好い日には、遠い伊吹山まで見える」(島崎藤村『夜明け前 第一部(上)』.第6冊, 岩波書店, 2008年, p72 第一章(三))と綴っています。その言葉の通り、眼下にはどこまでも見渡せる景色が広がっていました。

さらに景色を堪能しに向かったのは、馬籠宿から徒歩10分ほどの場所にある通称「馬籠宿の池」。天気のいい日は、水面に恵那山と空が映り込んだ絶景を見ることができます。この景色を見るために遠くから来る人も少なくないのだそう。

チョウやトンボ、季節の植物、池を泳ぎ回るコイたちなど、自然のあふれる馬籠。

その自然のなかで捉えた瞬間は、風景と相まって絵画のような美しさを放っていました。

歩き疲れたので、ちょっとひと息。

古民家を改修したおしゃれなコーヒースタンド「HillBilly Coffee Company」にお邪魔します。

2017年にオープンしたお店で、古民家の1階が店舗に。オーナーがよく訪れたアメリカのコーヒースタンドにインスピレーションを受けたという店内はハイセンス。

店で取り扱う豆は基本的にスペシャルティコーヒーのみ。一杯ずつ丁寧に抽出していただけるハンドドリップは中煎りの「馬籠ブレンド」と深煎りの「妻籠ブレンド」。ラテアートが描かれたカフェラテもおすすめです。

「藤村記念館」で小説に書かれた馬籠宿の世界を知る

馬籠宿出身の作家島崎藤村のことを知ることができる「藤村記念館」はぜひ立ち寄りたいスポット。藤村の小説は馬籠やその周辺を舞台にしたものも多く、ゆかりの場所がそのまま残っており、それを知るとまた馬籠の観光が楽しくなります。記念館はかつて本陣だった藤村の実家の跡地に建てられています。

記念館には『夜明け前』の原稿や遺愛品、周辺資料など約6,000点の藤村コレクションを所蔵。現存する藤村宅(馬籠宿本陣)跡と隠居所は日本遺産にも認定されています。

藤村の作品の源流ともいえる故郷・馬籠の風景。その情緒あふれる背景を知れば、歩くたびに小説の世界が目の前に広がります。受付に藤村の小説から切り取った文章が載った絵はがきが販売されているので購入。これに今回の旅の想いをしたためることにします。

旅の思い出をしたためて、はがきを出す

馬籠宿を満喫したら再び「馬籠郵便局」へ。

馬籠郵便局では、藤村記念館冠木門・富士見台・サクラがモチーフになった風景印を押してもらえるのもうれしいポイント。

藤村記念館で購入した『夜明け前』の情景と一文が刻まれた絵はがき。その歴史的な背景とともに、友人への気持ちを込めて書き留め、丸型ポストへ投函。

江戸時代の面影が残る馬籠宿の散策は、歴史的遺産から地元ならではの食べ歩きグルメまで見どころが満載。

その昔、江戸と京都を行き来するために多くの旅人が行き交った馬籠宿。その歴史に想いを馳せながら、当時の雰囲気が漂う石畳の町に佇むレトロな丸型ポストを訪れてみてはいかがでしょうか。

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