私のオンとオフ スイッチインタビュー 「不利をチャンスに変える!」 逆転の発想で勝利をつかむ郵便局社員のバドミントンへの情熱

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約24,000ある郵便局をはじめ、全国で働く約40万人の日本郵政グループの社員。この企画では、それぞれの立場で仕事に取り組む社員の姿勢と知られざるプライベートでの横顔、そんなオンとオフの両面で活躍する社員の魅力ある個性を掘り下げていきます。
今回、お話を聞いたのは、神奈川県の横浜鶴ヶ峰郵便局に勤務する中村さん。郵便局の仕事と並行しながら、バドミントンのシニア世界大会でメダルを獲得するなど、目覚ましい活躍を続けています。そんな中村さんに、競技を続ける難しさや、仕事との両立で得た特別な価値、そして、そのひたむきな姿の裏にある思いを伺いました。

横浜鶴ヶ峰郵便局
中村 玲子(なかむら れいこ)さん
2003年から鶴ヶ峯駅前郵便局に非正規社員として勤務し、育児を機に一度退職したものの、2009年に横浜鶴ヶ峰郵便局に再就職。現在は窓口業務を担当している。
郵便局はお客さまの思いを受け取る「窓口」
――郵便局で働くようになったきっかけを教えてください。
中村:横浜へ引っ越してきた翌年の2003年に、鶴ヶ峯駅前郵便局で非正規社員の募集があり、応募したのがきっかけです。そのころは、「定形郵便」という単語もわからないくらい、まったく郵便の知識がなくて(笑)。本当に一から教えていただきました。

――普段のお仕事で心がけていることは何でしょうか。
中村:できるだけお客さまの立場で考えるようにしています。今は発送方法にしてもいろいろあるので、初めての方だと「どれを選べばいいのかわからない」となってしまうんです。だからこそ、「どんなふうに届けたいか」を丁寧に聞いて、できるだけリーズナブルで、そのお客さまの目的に合った方法を提案するようにしています。

――郵便局の仕事のやりがいを教えてください。
中村:郵便窓口に持ち込まれる荷物には、例えば「誕生日に届けたい」「壊れやすいものだから気をつけて運んでほしい」など、送り手のさまざまな思いが込められています。荷物がお届け先に届くまでには多くの人がかかわりますが、そのなかで私は、お客さまの思いを最初に受け取る「窓口」として、大切な気持ちを預かり、安全かつ確実に届けるお手伝いができることに、大きなやりがいを感じています。
――職場の雰囲気はどのような感じでしょうか。
中村:とてもよい雰囲気です。バドミントンとの両立についても理解して、応援してくれているので、本当にありがたい環境です。

高校で諦めたバドミントンへの情熱が再燃! 再びバドミントンの世界へ
――バドミントン競技では、世界大会でメダルを獲得するほどの実力をお持ちだと伺いました。そもそも、バドミントンを始めたきっかけは何だったのですか。
中村:幼いころから運動が好きで、中学時代にバドミントン部に入ったのが最初です。やり始めるととても楽しくて、夢中になって。全国大会にも出場したのですが、高校では部活よりも勉強を優先しようと思い、高校1年生で競技から離れてしまいました。
――その後、いつバドミントンを再開されたのでしょうか。
中村:長男が小学校に入学したとき、PTAのバドミントンクラブがあると聞いて、「またバドミントンができる!」とかつての思いが再燃したんです。20年以上ぶりの挑戦でした(笑)。
――バドミントン選手としては、現在どのような活動をされていますか。
中村:年に1度の県大会には欠かさず参加しています。勝ち上がれば、関東大会、全国大会と進み、全国大会で優秀な成績を残せば、2年に1度の世界大会にも出場できます。地域で開催されている大会などにも参加しているので、平均すると月に1回は試合に出ていますね。また、地域のバドミントン教室などで初級者向けに指導することもあります。
――毎月試合に出ているとはすごいですね! これまでの戦績も教えてください。
中村:2023年の全国大会(全日本シニアバドミントン選手権大会)で、シングルス・ダブルスともに優勝し、二冠を達成しました。私にとって初の金メダルでしたので、とてもうれしかったです! 同年、韓国で開催された世界大会(世界シニアバドミントン選手権大会)にも出場し、シングルス・ダブルスともに3位に入賞することができました。


実は、2024年の全国大会でもシングルスで優勝、ダブルスで準優勝しているので、今年9月にタイで開催される世界大会に出場することができます。出場するかどうかは自分の意思次第ですが、局長は「行っておいで」と背中を押してくれています。遠征で長期間お休みをいただくことにも、職場の皆さんが理解を示してくれているので、ありがたいです。



――そこまで情熱を注ぎ込めるバドミントンの魅力は何でしょうか。
中村:何といっても多彩なショットが打てること。羽根とコルクでできたシャトルは独特の動きをするので、速いショットから柔らかいフェイントまで、いろいろな攻め方ができます。
若いころはスマッシュが魅力的だったんですけど、年齢を重ねるごとに、相手との駆け引きや作戦が面白くなってきて。今では「いかに相手の裏を読むか」を本気で考えてしまう自分がいて、「私って意地悪だな......」と思うこともあります(笑)。でも、そういう自分をさらけ出せる場があるって、すごくありがたいなって思うんですよね。

過去の自分を裏切らないため、諦めずに継続していきたい
――トレーニングは日々どのように行っていますか。
中村:とにかくバドミントンをやることが一番のトレーニングになっています。多いときは週5回、平日なら仕事終わりに約1時間半、土日は3時間ほどコートに立って、ほぼゲーム形式の実戦練習で鍛えています。限られた時間のなかで、やれることをしっかりやる。それが今の私のトレーニングですね。
――かなりハードですね。
中村:実は以前、膝に大けがをして、しばらく競技から離れていた時期がありました。やめようと思ったこともありましたが、それでも続けてこられたのは、仕事もバドミントンも完璧を求めすぎなかったからかもしれません。それぞれの場面で自分なりに最善を尽くし、失敗しても「次はこうしよう」と気持ちを切り替えて前に進む。そうした柔軟な姿勢が、継続のためには大切だと感じています。

――仕事とバドミントンを両立させることのメリットは何でしょうか。
中村:仕事でどんなに疲れても、バドミントンで体を動かして仲間たちと笑い合えば、気持ちが切り替えられて、「また明日から仕事を頑張ろう!」って思えるんですよね。いろいろなことに忙しくチャレンジしている方が私には合っているなと感じます。趣味を作ると世界も広がるので、それも魅力です。
――バドミントンの活動が郵便局の仕事に与えた影響はありますか。
中村:私は背が低いため、バドミントンでは不利な面もあります。しかし、小さな体だからこそ、背が高い人が打ちにくい場所にも潜り込んでシャトルを打てるのだと発想を転換。弱みを強みに変えることで、試合にも勝てるようになりました。こうした「不利をチャンスに変える発想」は、郵便局の仕事にも活きていると感じています。
例えば、横浜鶴ヶ峰郵便局のお客さまは、長くご利用いただいている方が多いので新しいニーズが生まれにくいですが、信頼関係を築きやすいという強みがあります。この強みを活かしながら、日々の丁寧なサポートを通じて、困ったときに相談してもらえる存在になることを私は目指しています。
――最後に、オンとオフ、それぞれでの目標を教えてください。
中村:新しいことに挑戦するというよりは、どちらも毎日を丁寧に、一日一日を、手を抜かずに積み重ねていくことが目標です。
そのうえで、仕事ではこれからも自分に与えられた役割をきちんと果たしていき、バドミントンでは、若い選手のプレーに憧れることもありますが、自分のペースで、自分にできることを続けていく。ここで諦めたら過去の自分を裏切ることになってしまうので、「今日をしっかり頑張れた」と思える一日を積み重ねていくことを大切にしたいです。


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