新規事業化に向け最終段階に! オモカタチャレンジ発「学生服のリユース事業」

新規事業化に向け最終段階に! オモカタチャレンジ発「学生服のリユース事業」

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新サービス実現チャレンジ制度「オモカタチャレンジ」。今回は、事業化に向けて動き出している「学生服のリユース事業」。提案者の髙橋さんに、発案のきっかけや取り組み内容を伺いました。

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髙橋 厚子(たかはし あつこ)さん

日本郵便株式会社 東海支社 経営管理部 地域共創室

髙橋 厚子(たかはし あつこ)さん

2012年、日本郵便株式会社に非常勤社員として入社し、2019年に正社員に登用。岐阜市内の郵便局で4年間窓口業務を担当し、オモカタチャレンジへの応募をきっかけに2023年10月から東海支社に異動し、現職。

「学生服は高級品」。実体験がアイディア創出に

――学生服のリユース事業を思いついたきっかけを教えてください。

髙橋:原点は「制服って高級品なんだな」と思ったことでした。オモカタチャレンジに応募したころは、子どもの高校入学と中学入学の準備が重なって物入りな時期でした。特に学生服は1人当たりフルセットで8万円ほど必要だったんですよね。

――学生服は意外と高級品なんですね。

髙橋:買い替えのときは、卒業生からおさがりを譲ってもらえると家計が助かると思いました。こう感じているのは自分だけではないはず、という想いから、不要になった学生服を必要な人へと循環させる事業が思い浮かび、オモカタチャレンジに応募しました。「こういうものがあれば」と思ったとはいえ、自分のアイディアにはあまり自信がなかったので、書類審査を通過したと聞いたときは本当に驚きました。

――書類審査通過後はどんな活動が始まったのですか。

髙橋:郵便局での通常業務の傍らで、事業としての確度を高めるために、東海支社の社員や外部の専門家からアドバイスを受けながらのリモート勤務が週1日で始まりました。まず行ったのは、この事業がどれだけ社会に必要とされているかの検証です。ただ、すべてが初めてのことばかりで「マネタイズ」や「メンタリング」など、言葉自体がわからずポカンとすることもありました(笑)。その度に一所懸命メモし、あとで意味を調べて少しずつ理解を深めていきました。

――ほかに、事業化に向けて具体的に行ったことはありますか。

髙橋:活動当初は「課題ヒアリング」を中心に行っていました。ママ友にはじまり、その知人、さらに地元のコミュニティセンターや福祉センターなどに「日本郵便の者で、こういう活動をしているのですが、お話を聞かせていただけませんか」と連絡して対象を広げていきました。

――ヒアリング先からはどんな反応がありましたか。

髙橋:多くの方の課題の実在性を確認することができ、「思いつきだったけれども、この仕組みを必要としている人はたくさんいたんだ!」と確認できたのはうれしかったですね。また、「まだ使える学生服を廃棄するのはもったいない」と考えている人が多いこともわかりました。

ヒアリングで得た声や公的データをもとに、ターゲットを高校生とその親御さんに定めて事業のミッションを決定。入学時や買い替え時に新品の制服を買うという慣例に「リユース学生服」という新たな選択肢を示すこと、リユース学生服を流通させて新たな資源循環を生むこと、この2つを大きな目的に設定しました。

地元の高校や行政の協力を取り付け、新たな資源循環の輪を構築

――最終審査通過後、支社に異動して実証実験を行われたそうですね。

髙橋:岐阜市内の9つの公立高校、岐阜市役所に協力を依頼して、着なくなった学生服の無償回収と販売会を開催しました。まず回収は、お知らせのチラシを高校と郵便局で配布し、2024年3~4月、岐阜市内にある24の郵便局に設置した回収ボックスに持ってきていただく方法を採りました。ちなみにチラシのイラストは娘に描いてもらったものです。

回収は初めての試みにもかかわらず、1,700点以上集めることができました。「郵便局であれば安心して寄付できる」というのが多く回収できた要因だと思います。

岐阜市内の郵便局内に、学生服の回収ボックスを設置
学生服の回収の呼びかけや販売会開催のチラシは髙橋さんの手作り。右のチラシのイラストは髙橋さんの娘さん作

――販売会も反応はよかったのでしょうか。

髙橋:2024年9月と2025年3月の2回、岐阜市役所内で実施し、1回目の販売会では学生服の状態や価格に対し、参加者の9割以上から満足との声をいただきました。リユースであってもクリーニングされていれば使用にはほぼ抵抗がないこと、一定のリユース学生服のニーズがあることなどがわかりました。

――2回目の販売会はいかがでしたか。

髙橋:3月だったので新入生をメインターゲットとして開催しました。来場者も多く、新入生にもリユース学生服への需要が高いことが把握できたので、3月開催の販売会は来年以降も継続すべきだと思いましたね。実証実験の段階ではありますが、販売会を通じて自分の想いがカタチになってきたなと実感できました。ただ、実証実験を進めるにつれて、課題もわかってきました。

2025年3月に岐阜市役所で開催した第2回リユース学生服販売会
第2回販売会の初日には開場を待つ約50人が列をつくった

――課題とは、一体どのような内容ですか。

髙橋:最も大きな課題は運営コストです。事業が拡大して複数会場で販売会を開催するとなると、会場使用料を捻出する必要があります。また、実証実験では、学生服の回収や保管は市内の郵便局にお願いし、販売会の運営は支社で行いました。しかし、今後本格的に事業化した場合はどこまで内製で行うのか、もし外部委託をするとした場合はどれくらい費用がかかるのか、その費用はどう工面するかなど、解決すべき問題は多々あることに直面しました。

さらに、販売価格も見直す必要があるとわかりました。私は当初、できるだけ割安な価格で販売したいと考えていましたが、事業として継続的に運営していくためには当然利益を出すことも目指さなければならず、価格の設定にも頭を悩ませています。

岐阜市役所との交渉が縁となり、岐阜市の第11回ごみ減量フォーラムに登壇。「学生服のリユース事業」を発表した

新サービス立ち上げのチャンス! 「挑戦しないはあり得ない!」

――2025年10月には、1カ月間、ECサイトでの販売実験も行ったそうですね。

髙橋:この事業の拡大を見据えたとき、やはりインターネット販売のルートづくりは欠かせません。過去2回の販売会同様、ターゲットは岐阜市内の高校生に限定し、専用のアクセスチャネルを用意します。

試着ができないインターネット販売で、フィットするサイズを選んでもらうための仕組みづくり、魅力的な商品写真の撮影・掲載など課題は多いのですが、本格事業化に向けたプロセスではECサイト販売が最後の実証実験になりますので、最後まで諦めずに臨みます!

――今後の展望を教えてください。

髙橋: 振り返れば応募から今まであっという間の3年間でした。視野が格段に広がり、自分の想いを直接多くの人に届けられる達成感も体験でき、貴重な時間を過ごしてきたと思っています。この事業の原点となった私の子どもが、将来、高校生の子どもを持つ親となったときに「学生服のリユース事業」を利用してもらえたとしたら、こんなにうれしいことはないですね。
そのためにも、まずは事業化できるように引き続き頑張っていきたいと思います。

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