同じ未来を目指して走る! 日本郵便×佐川急便による「幹線輸送の共同化」がスタート

INDEX

日本郵便株式会社と佐川急便株式会社は、2021年9月、物流サービスの共創に向けた両社の事業成長を目的とする協業に関して基本合意しました。この合意を受けて両社では、小型宅配荷物の輸送における「飛脚ゆうパケット便」、国際荷物輸送の「飛脚グローバルポスト便」、「クール宅配便」での協業にすでに取り組んでいます。そして、2022年3月1日より、新たな協業の取り組みとして「幹線輸送の共同化」がスタートしました。今回は、この幹線輸送共同化の運用を担当されている、日本郵便株式会社 輸送部の桑原 俊成(くわばら としなり)さんと加治佐 洸介(かじさ こうすけ)さんに、幹線輸送の共同化に取り組む背景や概要、さらに未来へ向けた可能性について伺いました。

日本郵便株式会社 輸送部 専門役

桑原 俊成(くわばら としなり)さん

1987年、郵政省に入省。都内郵便局での10年間の勤務を経て、日本郵便東京支社で施設と輸送を7年間担当。2004年に本社に異動になり、その後、輸送部、国際事業部(JICA郵便サービス能力向上プロジェクト専門家(ミャンマー))、千曲郵便局長などを経て、2022年より現在に至る。

日本郵便株式会社 輸送部 係長

加治佐 洸介(かじさ こうすけ)さん

2013年、日本郵便株式会社に入社。鹿児島中央郵便局での勤務を経て、2014年から本社輸送部に所属。運送便の効率化、運送費の削減などに取り組む。その後、再度、郵便局勤務を経て、2021年より現在に至る。

「物流クライシス」への対応がせまられるなかで始まった新たな取り組み

――はじめに、幹線輸送の共同化を始動するに至った背景から教えていただけますか?

桑原:背景にある一番の要因は、「物流クライシス」とも呼ばれる物流業界全体の問題です。近年の物流業界では、EC市場の急激な拡大をきっかけに荷物取り扱い量が増加する一方で、これを輸送するドライバーや作業員の不足、さらにはトラック輸送におけるCO2排出量の増加が大きな問題となっています。こうした状況のなか、いかに効率的に荷物を運び、お客さまの利便性を向上させていくのかは、大きな課題となっていました。

そこで日本郵便では、企業間競争の垣根を超えて佐川急便株式会社(以下、佐川急便とする)と協業し、両社が持つリソースをシェアすることで、課題解決につなげていくさまざまな取り組みを、2021年9月の協業に関する基本合意が発表されて以降、行ってまいりました。幹線輸送の共同化もその一環として、2021年の秋頃から2社間での話し合いが始まり、2022年3月1日よりトライアルがスタートしたところです。

日本郵便と佐川急便の荷物を積んで走る幹線輸送トラック

――幹線輸送の共同化を始めるにあたって、最初に「東京-郡山(福島県)」における拠点間輸送が選ばれたのはなぜでしょうか?

加治佐:今回始まった2社共同輸送では、お互いに低積載率のトラックを一つにまとめて運用することで、最大の効率化を図っていくことが目的といえます。そこで積載率の低いトラックが走っている区間や時間帯を両社で照らし合わせていったところ、東京-郡山の便が妥当と判断されました。

桑原:東京-郡山の区間距離は約250~260キロメートル。運送時間も4時間ぐらいと、両社で共同してダイヤを組んだ場合にも、比較的ブレなく運べる区間だったということも、選ばれた理由の一つです。

幹線輸送の共同化のオペレーションイメージ

win-winの結果を目指してお互いを尊重し合えたことが成功の要因

――東京-郡山便での輸送共同化の始動後、どういった点に苦労されましたか?

加治佐:基本的な荷物の積み込みフローの部分で、最初は戸惑いがありました。日本郵便では、ロールパレットというカゴ台車に荷物を積み込み、そのロールパレットをトラック荷室へ積載しています。一方、佐川急便ではロールパレットを使わずにトラックの荷室にそのまま荷物を積み込む、直積み輸送を採用しています。現場においては、その違いによるカルチャーショックがありましたし、積み込み方法の違いによってトラックの運行時間にも違いが出てきたことから、調整がなかなか難しかったです。

ただ、両社で事前にすり合わせを行っていった結果、佐川急便のトラックにまず直積みの荷物を積んでもらい、そのあとに日本郵便のロールパレットを積み込む方式が協業のスタートとしては適していることがわかり、課題は解消に向かっていきました。東京-郡山は、実際に輸送共同化が始まってからも現場のオペレーションが特段混乱することもなくスムーズに進行しており、協力いただいた関係者の皆さんに感謝しています。

――輸送共同化の取り組みがスムーズに進んだ、一番の要因はなんだったのでしょうか?

桑原:それはやはり、お互いの歩み寄りだったと思います。荷物の積み込みの部分で、ロールパレットと直積みのルールを統一することに意固地にならず、たとえばロールパレットには荷物を移動させる部分に利点があり、直積みには大量の荷物を積み込める部分に利点があるという、それぞれの長所に目を向けながら、トラックへの積載率を高めてwin-winの結果を目指すことができたからではないでしょうか。

加治佐:私も同じだと思います。お互いの会社の文化は尊重すべきですが、それを守っているだけでは協業は進んでいきません。輸送の効率化という大きな目標に向かって、文化の違いを乗り越え、お互いが手を結ぶことができたのが非常に重要だったと思います。

自社の強みに他社の強みを合わせることで、さらなるお客さまの利便性向上へ

――幹線輸送の共同化をスタートすることで見えてきた、新たな課題や未来への可能性はありますか?

桑原:東京-郡山便では、佐川急便のトラックに日本郵便の荷物を積んで輸送していますが、今後は日本郵便のトラック便に佐川急便の荷物を積むことも考えていきたいです。それによって輸送に利用できるトラックの選択肢を増やし、より効率化を進めていくことで、協業によって得られる効果の最大化を実現していきたいと思います。

加治佐:今回の幹線輸送の共同化は日本郵便と佐川急便の2社だけによる取り組みですが、お互いに低積載の便を1便、確実に減らすことができました。つまり、こうした取り組みを業界全体で行っていくことができれば、「物流クライシス」にも必ず対応していくことができるのではないだろうかと、その可能性に期待を持っています。

――今後、幹線輸送の共同化はどのように展開されていく予定でしょうか?

桑原:現在、検討されているのが「東京-九州」便です。東京-郡山便とは違い、この協業便はフェリーによる輸送をメインとしているため、モーダルシフトによるCO2削減の観点から選定されました。具体的なルートとしては横須賀港から新門司港を想定していて、横須賀港までは輸送にトレーラーを使いますが、フェリーで運ぶのは荷台だけ。トレーラーヘッド(トレーラーを牽引するための車両)は切り離して、ドライバーも現地で解放します。その後、新門司港で再び現地のドライバーが荷台をピックアップして、福岡県にある郵便局まで輸送してもらいます。

加治佐:物流業界では、働き方改革に伴う「時間外労働の上限規制」などが2024年4月から「自動車運転の業務」にも適用される、いわゆる「2024年問題」によってドライバーの確保や長期間労働の改善が大きな課題となっています。これを含めて東京-九州便での幹線輸送の共同化の取り組みは、輸送車両の削減によりドライバー不足が改善されるだけでなく、その労働時間の短縮、モーダルシフトによるCO2の削減など、さまざまな効果が得られるはずです。

――最後に、これからの物流業界において、日本郵便はどのようなポジションを担っていくべきだと考えていますか?

桑原:弊社は「日本郵便」という会社名を名乗っているとおり、郵便ネットワークが大きな強みです。離島や山間部に至るまで、非常に細かな配送ネットワークを持っている。日本全国どこにでも届けるということを大原則としていますので、これを大いに活用し、他社と協業していくことで、お客さまの利便性向上を図っていくことこそが、私たちが担っていくべき部分だと考えています。

加治佐:私も桑原さんと同じ意見です。そのうえで今回の協業をきっかけに発見できた、他社のよい部分をどんどん取り入れ、日本郵便にしかできない郵便・荷物サービスを提供していきたいです。

※撮影時のみマスクを外しています。

未来の物流レボリューションVol.1 ドローンやロボットが当たり前のように街を行き交う未来がやってくる!?
            

#HOT TAG

カテゴリ

おすすめ記事