「手紙を出すので鉄道に揺られてくる。」 海が見える駅 《長崎県 千綿駅》行き

旅先で美しい景色を見たとき、「あの人にも見せてあげたかったな」と大切な人の顔が思い浮かぶ。

鉄道に乗りながら日本全国を巡り、大切な人に手紙を送る旅に出ます。

時代を感じさせる素敵な駅舎や、車窓からの素晴らしい眺め、その風景に馴染んだポスト。旅先で出会った記憶に残る光景を、フォトグラファーが写真に収めます。

「手紙」と「鉄道」をテーマにした旅。

リュックに便箋とカメラを入れて出発です。

私には息子が二人いるのですが、よく手紙を書いてくれる。

誕生日、父の日、そういったイベントの日だけではなく、仕事が忙しかったりして帰宅が遅い日が続くと、労いの言葉を添えた手紙が机の上に置いてあったりする。本当によい息子たちを持ちました。

手紙というには拙い言葉で綴られているのですが、財布に大切に入れてあります。仕事柄、取材や撮影などで家を空けることが多く、疲れているときは財布に入っている手紙を読み返して、「よっしゃ頑張るぞ!」と元気をもらっています。

今回は博多にやってきました。

長崎県に千綿(ちわた)駅という駅があります。

九州にはロケで使われるような、雰囲気のある駅舎が数多く存在します。そのなかでも千綿駅は絶景スポットとして有名です。そして駅舎の横には、昔懐かしいポストが佇んでいます。今回はそのポストを目的地として、旅をしたいと思います。

私は昔から鉄道旅行が好きでした。大好きな祖父が頻繁に鉄道旅行に連れて行ってくれたので、旅は電車でするものだと物心がつくころには自然とそう思っていました。旅先の車内で仲良くなった人とおしゃべりをしたり、お菓子をもらったりしたのは子供のころのよい思い出です。

高校時代の夏休みには青春18きっぷを握りしめて、北は青森、南は鹿児島まで全国を電車で旅しました。青春18きっぷは鈍行列車に乗って一日でどこまで移動できるのかが勝負のカギになってきます。極端な話、夜の12時から24時間在来線乗り放題なので、分厚い時刻表とにらめっこをしながら、ベストな乗り換えスケジュールを捻り出していました。

今回の目的地、千綿駅はこちら。長崎県の中央部に位置する大村湾の海岸線にある駅です。

引用元:Google Map

博多から電車で二時間半の距離。

去年から今年にかけて、博多に引っ越しをする人が私の周りにたくさんいました。

福岡・博多のよいところはたくさんありますが、なんと言っても交通の便がよいです。

福岡空港から博多駅まで地下鉄で約5分。市街地までのアクセスが良い空港ランキングでは堂々1位。家賃は東京の半分くらいの物件も探せば見つかります。食べ物もおいしいですし、もう九州全体が魅力的な土地なので、博多に引っ越すことを本気で検討しなくてはいけないですね。

博多駅から【ハウステンボス号】に乗車。

ハウステンボスはオランダの街並みを再現したテーマパークです。

ボディーの鮮やかなオレンジ色はオランダのナショナルカラー。サッカーのオランダ代表のユニホームも一緒の色ですよね。

オレンジ色は元々オランダ王家が由来となっている色です。オランダの建国の父である「オラニエ公ヴィレム」の【オラニエ(Oranje)】は英語で【オレンジ色(Orange)】という意味。王様の名前が【オレンジ公】だったんですね。

今でもオランダの王様の誕生日をお祝いする「キングスデー」では街中がオレンジ一色に染まり、国を挙げてお祭りをするそうです。

横からのアングルもすごくカッコいいですよね。

それもそのはず、ハウステンボス号は鉄道デザインの第一人者の水戸岡 鋭治(みとおか えいじ)さんが手がけた列車のひとつです。豪華列車の「ななつ星in九州」九州新幹線「つばめ」などJR九州の数多くの特急車両を世に送り出した、鉄道ファンなら誰もが知る伝説の工業デザイナーです。

水戸岡さんが以前インタビューで工業デザイナーとしての役割を、「旅という物語のための舞台を作る係なんです」と語っていました。鉄道旅は車両のデザイン、車窓からの景色、駅舎、駅弁、などさまざまな舞台装置があるからこそ、印象に残る、思い出深いものになるのだな、と水戸岡さんのお話を聞いて感じました。

そういった視点で電車に乗っていると、旅の楽しみ方も増えていくような気がします。

そんなことを思いながら、息子たちへ手紙を書いてみます。息子たちとは本格的な鉄道旅をまだしたことがありません。

今どんな景色が見えるのか、旅の様子を書いてみます。この手紙を読み、将来は旅に出て欲しいなと思いました。

手紙を書いていたらあっという間にハウステンボス駅に到着。

駅の横には大村湾へとつながる早岐瀬戸が流れています。水面にオレンジの車体がよく映えています。

ハウステンボス駅のホームから見えるホテルオークラ。ホテルと言うよりも、もはやお城ですね。

近くで見るとますます、城。見事な建物です。

長崎県の海辺に、このお城のようなホテルを作ろうと思った人たちの想像力は本当にすごい。

乗り換え時間があまりなかったので、角煮バーガーだけ食べてハウステンボスを後にします。次はゆっくりとオランダ観光がしたいですね。

JR大村線に乗り換えたら5駅で目的地の千綿駅に着きます。

線路沿いにすぐ海が見えてきました。

左手に見える大村湾は長崎県の中央部に位置します。打ち寄せる波がいつも穏やかなので「琴の海」とも呼ばれています。車窓から眺める大村湾は、たしかに湖のように静かでした。

そして千綿駅に到着。

駅は緩やかなカーブに面した位置にあるので、ホームを過ぎ去った車両は海に吸い込まれるように、消えていきました。

そしてこれが千綿駅のホームからの眺めです。本当にすぐそこが海。まさに絶景。

駅舎は1928(昭和3)年に建てられて、改築などもされながら今も大切に使われています。レトロな雰囲気を残しながら、地元の人や写真愛好家、鉄道ファンにも愛されている駅です。

ちなみに千綿駅は、私がよくお世話になっている青春18きっぷのポスターのロケ地として使われたことがあります。一日の平均乗車人数は130人の本当に小さな駅なのですが、

駅舎はおいしいカレーを出すカフェになっています。

2016年に食堂の店主 兼 駅長である湯下 龍之介(ゆした りゅうのすけ)さんが千綿駅内に「千綿食堂」を移転オープンさせました。

扉を開けるとスパイスの良い香りが駅舎のなかに漂っています。お昼時だったのですが、地元のお客さんもたくさんいて、とてもにぎわっていました。おいしいキャラメルマキアートを飲みながら、店内の本棚にあった漫画を読み、カレーを待ちます。

こちらが本日の日替わりカレーです。千綿食堂のカレーはルーや小麦粉を使用しない本格的なカレーです。今日はチキンカレーでした。スパイスは効いていますがクセもなくモリモリと食べられます。副菜のオクラ、ひよこ豆、ロマネスコ、ピクルスどれもおいしくてヘルシー。地元のお客さんに愛されるのも納得です。

腹ごしらえも済んだので、いよいよポストとご対面。

「THE レトロポスト」

背景の駅舎とも相まって、昭和にタイムスリップしたような気分になります。

駅前の歩道橋から見下ろすと、『電車』、『駅舎』、『ポスト』の3ショットが撮れました。

歴史のある駅舎とその横でずっと佇んでいたポスト。

時代が流れてもここだけはずっと変わらないのかもしれませんね。

息子たちに宛てた手紙をポストに投かんして、今回の旅は終了です。

明日には家に帰るので、この手紙が届くのは僕の帰宅より後になると思いますが、大切なのは旅先で投かんするということだと思います。

今度は息子たちを連れて九州鉄道旅でもしようかな。旅先で一緒に手紙を書いてみたいですね。

フォトグラファー:武井 博昭

ライター:5歳

企画・制作:CURBON

「手紙を出すので鉄道に揺られてくる。」 自然に囲まれた日本最南端の駅 《鹿児島県 西大山駅》行き

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