ゆうちょ銀行が「女性が活躍する会社BEST100」で銀行部門1位に。勤務地域や役職を「越境」したダイバーシティ推進への取り組み

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2025年版「女性が活躍する会社BEST100」(日経BP)で、ゆうちょ銀行が銀行部門で1位(総合9位)を獲得しました。ゆうちょ銀行では、勤務地域や部署、役職を越えて対話ができる施策や、女性リーダーが集まって新たなネットワークを組成する施策など、さまざまな独自の取り組みを展開しています。これらの取り組みについて、ダイバーシティ推進部の斎藤さん、小野寺さん、片山さんにお話を伺いました。

株式会社ゆうちょ銀行 ダイバーシティ推進部 部長
斎藤 美香子(さいとう みかこ)さん
直営店店長、エリア本部長(四国・近畿)を経て、2023年6月から現職。新規施策「女性リーダーネットワーク」を立ち上げるなど、DE&I推進、キャリア支援に取り組む。

株式会社ゆうちょ銀行 ダイバーシティ推進部 マネジャー
小野寺 祐子(おのでら ゆうこ)さん
直営店やコンプライアンス統括部、エリア本部での勤務を経て、2024年度から現職。「女性リーダーネットワーク」の運営の中心を担う。

株式会社ゆうちょ銀行 ダイバーシティ推進部 主任
片山 遥(かたやま はるか)さん
直営店や人事部、調査部での勤務を経て、2024年度から現職。社内へのDE&I情報発信や、社外へのPRを担当。
「女性が活躍する会社BEST100」で銀行部門1位獲得! ゆうちょ銀行が取り組むダイバーシティ推進とは
――2025年版「女性が活躍する会社BEST100」※(日経BP)で、ゆうちょ銀行が銀行部門で1位(総合9位)を獲得しました。まず、受賞された感想を聞かせてください。
斎藤:ゆうちょ銀行の女性活躍推進やダイバーシティ推進の取り組みが評価されたことを大変光栄に思っています。
※女性誌『日経WOMAN』と日本経済新聞社グループの「日経ウーマノミクス・プロジェクト」が共同で実施している「企業の女性活躍度調査」の結果をまとめたもの

――1位となった要因について、どう分析されていますか。
小野寺:中期経営計画で掲げた人事戦略のなかで、「多様性を活かす」ことを一つの軸としています。なかでも女性活躍のさらなる推進を重点取組事項に設定し、さまざまな施策を実施してきました。このように、経営トップからダイバーシティ推進や女性活躍の重要性を明確に発信し、会社全体で課題感を持って取り組めたことが大きいと思います。

――ダイバーシティ推進部ではどのような取り組みを行っているのですか。
斎藤:「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」に「Equity(公平性)」を加えた「DE&I」の考え方に基づき、女性活躍をはじめとするさまざまな施策を実施しています。企業が持続的に成長するためには多様な人財の活躍が必要です。各組織の課題を踏まえ、社員一人ひとりがそれぞれの職場環境で活躍できるようさまざまな施策を企画し、施策を通して管理者や社員の意識改革と行動変容を目指しています。
小野寺:具体的には、全社員向けに外部の有識者を招いたフォーラムを開催したり、管理者層への意識付けとしてダイバーシティに関する研修や勉強会を実施したりしています。
片山:研修や勉強会の内容は社内外に情報発信して、啓発活動につなげています。また、育児や介護、病気など、さまざまな事情がある方が生活と仕事を両立できる職場づくりや、LGBTQ+の理解促進、シニア人財の活躍といったことにも幅広く取り組んでいます。

――「重点取組事項」とされている女性活躍については、今現在どのような課題を感じ、取り組みを実施していますか。
小野寺:いくつかありますが、管理者層の意識の醸成や、女性社員自身がキャリアに対して前向きに取り組んでいけるようなキャリア開発が課題ですね。そのため、実践的な学びを重視し、ロールモデルになるような方と女性社員がセッションする対話型のラウンドテーブルなどの機会を多く作っています。
斎藤:最初は誰かの話を聞いて学ぶというインプットが中心でしたが、人と人が対話することで多様性への理解が深まるので、現在はそこで得た知識を使って可能な限りワークショップやセッションを行っています。しっかりと聴き合うことで新たな気づきを得ることを重要視しています。
小野寺:対話型のラウンドテーブルで判明した課題から生まれた取り組みとして、全国の女性管理者と女性社員が対話をする「ナナメの1on1」を2023年から展開し、社内でとても好評です。2024年には、女性活躍のさらなる推進を目指して「女性リーダーネットワーク」という組織を組成しています。
女性リーダーが集い、毎月議論
――「女性リーダーネットワーク」はどのような組織ですか。
斎藤:女性役員と本社の部長層などの女性メンバーによる組織です。発足当初は17人だったのですが、少しずつ増え、2025年4月には28人になりました。メンバーが増えること自体にも意味がありますし、人数が増えたことによりできることも多くなりました。

斎藤:女性リーダー層が日ごろ感じている課題を話し合うことで気づきが共有できます。なかには他社での経験を持つメンバーもいるのでそこにも多様性があり、それぞれの経験を活かして、女性社員がいかに活躍できるかを議論しています。
小野寺:メンバーが増えたこともあり、今年から全体を3つのグループに分けて月1回の会議を行い、全体会議を隔月で行っています。
グループに分かれての会議では、実際に女性社員の声を聴いて抽出した、女性活躍推進のための3つの課題をテーマに議論をしています。テーマの1つ目は、「リーダー・上司に対してどういった働きかけをするか」。2つ目は、「女性の若手リーダー層や役職者層へどういった働きかけをするか」。そして3つ目は、「生活と仕事との両立について」です。

――参加した社員からの感想をお聞かせください。
斎藤:私も女性リーダーネットワークのメンバーの一人ですが、同じ会社にいても部署が違うとお互い知らないことも多いと感じています。これまでのキャリアや価値観、考え方がそれぞれ異なるメンバー間で議論をすることで、多くの気づきや学びを得ることができ、アウトプットする内容もより豊かになります。また、活動を経て、女性リーダーネットワークの活動以外の場でも、意見交換や相談が気軽にできる関係性ができつつあると思います。
小野寺:「自分の会社にこんなに頑張っている人がいるということがわかって励みになった」という声や、「自分のキャリアを見つめ直すことができて、新たな気持ちで仕事に取り組むことができる」という声をいただいています。
「ナナメの1on1」で勤務地域・部署・役職を越えて女性社員が対話
――女性リーダーネットワークは本社社員による組織ですが、全国で働く社員に向けてはどのような施策をしていますか。
小野寺:冒頭でお伝えした「ナナメの1on1」がまさにそれです。希望する全国の女性管理者と若手女性社員が、勤務地域や部署、役職を越えてランダムでペアとなり、まさに"ナナメ"での対話を半年ごとに実施しています。

片山:ナナメの1on1は今年で3年目の取り組みとなりますが、全国で延べ450組ほどのペアが誕生しています。なかにはリピートで参加する方もいるほか、以前施策を経験された方からおすすめされて参加したいと手を挙げる方もいます。
斎藤:勤務地域も部署も役職も違う、お互いを知らない社員同士だからこそ聴ける、話せることがあり、気づきが生まれるようです。これは、先入観なく対話することが大事だということを示していると思います。
また、ナナメの1on1での対話がきっかけで、社員自らが手を挙げて部署異動を希望することのできる「キャリアチャレンジ制度」を利用したという、うれしい報告も届いています。
キーワードは「越境」。さらなるダイバーシティ推進へ
――ダイバーシティ推進部設立から数年を経て、どんなところに成果を感じていますか。
小野寺:女性管理者数比率は2025年4月現在で19.8%と、2026年目標の20%に手が届きそうなところまで来ています。男性の育児休暇取得率も100%となり、取得するのが当たり前になっています。こうした数字の面では、かなりDE&Iの理念が浸透していることが見えていると思います。
片山:ゆうちょ銀行は人事制度が充実していると思いますが、社内で対話の機会が増え、発言しやすい空気が醸成されることで、人事制度の利用が促進されるようになってきたと思います。また、女性リーダー同士や全国で働く社員の他組織同士のつながりもできてきたと感じます。

斎藤:社員一人ひとりが勤務地域や部署、役職を「越境」して対話することによってつながりを持つことが、新たな気づきとなり、社員の力、ひいては組織の力になると思っています。研修でも越境の機会を取り入れ、社外との交流も増やしていきたいと考えています。
――今後、ゆうちょ銀行では、どのようにダイバーシティを進めていきたいですか。
小野寺:働きやすく、そして働きがいのある職場づくりを進めていきたいです。ダイバーシティ推進の施策に参加している若手社員の方の話を聴くと、すごく前向きで、「お客さまの役に立ちたい」「会社の役に立ちたい」というパワーを感じます。そのパワーが活かせるようにサポートしていきたいです。
片山:私はダイバーシティの推進や、それ以外の社風も含めて、もっとゆうちょ銀行のよさを、いろいろな方に知っていただきたいと思っています。新卒採用の面や、お客さまへの広報も含め、多くの方に広めていくことが目標です。

斎藤:「成長を促す」「能力を引き出す」「多様性を活かす」という3つの人事戦略が掛け合わされることで、社員の成長と会社の成長が両立すると考えています。ダイバーシティ推進部だけではなく、制度を作る部署、それを機能させる部署と協力しながら、一人ひとりの力を組織の力にする文化醸成につなげていきたいと思っています。
取り組む前は気づかなかったのですが、ダイバーシティを推進していくと、周囲が応援する空気に変わっていくのを体感しています。そういう風土の醸成をこれからも推進していきたいと思います。


