「おかえり!」 日本選手権優勝&アジア選手権準優勝の廣中 璃梨佳に聞く、「復活までの道のり」

【東京2025世界陸上 出場決定!】「おかえり!」 日本選手権優勝&アジア選手権準優勝の廣中 璃梨佳に聞く、「復活までの道のり」

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日本郵政グループ女子陸上部・POSTIES(ポスティーズ)に所属する、廣中選手。2024年シーズンはケガで思うように走ることができなかったなか、クイーンズ駅伝で復活の兆しを見せると、2025年4月の日本選手権女子10000mでは見事に優勝。5月のアジア選手権(韓国)でも準優勝と、"強い"廣中選手が戻ってきました。復活までの道のりと、今後のレースに向けた意気込みを伺いました。

廣中 璃梨佳(ひろなか りりか)選手

廣中 璃梨佳(ひろなか りりか)選手

長崎県出身。2019年入社。2024年は長期間ケガとリハビリに苦しんだものの、今年は完全復活に向けた走りを見せる。2021年東京オリンピック10000m7位入賞、2023年ブダペスト世界選手権10000m入賞。

「もう走りたくない」 初めて経験した、ケガと向き合う日々

2024年の廣中選手は、右膝のケガによって長期間にわたって満足に走ることができませんでした。そしてやっと走れることになった矢先、今度は仙骨の疲労骨折にも見舞われます。

半年もまともに走れないというのは経験したことがなかったので大変でした。最初の2カ月くらいは焦りを感じましたし、その後もなかなか走ることができず、『もう走りたくない』という気持ちにもなりました」(廣中選手)

先の見えない暗いトンネルのなかで、もがき苦しむような時間だったようです。

「右膝はすごく腫れてしまい日常生活を送るのもつらい状態でした。こんなに長期間ケガをしたことがなかったので、どうやってコンディションを戻していけばいいのかもわかりませんでした。まわりの方から励ましをいただいても、走れない自分の状況に悩む日々でした」(廣中選手)

結果的に、期待されていた2024年のパリオリンピック出場はかないませんでしたが、廣中選手は前を向くことができたといいます。

「パリオリンピックはテレビで観戦することになりましたが、選手の皆さんの頑張りからすごく刺激をもらえたんです。私もあんなふうにまた世界と戦いたいと、"やる気"が湧いてきました」(廣中選手)

練習に復帰。そしてクイーンズ駅伝優勝に貢献

2024年の8月、ドクターの許可が下りて廣中選手は練習を再開させます。日本郵政グループ女子陸上部恒例の北海道合宿に合流し、仲間といっしょに過ごす日常が戻ってきました。

「合宿の序盤はあまり走ることができず、サイクリングなど別メニューからのスタートでした。でもチームのみんなと時間を共有していくことで、『いっしょに走りたい』と、改めて思えたんです。合宿後半はみんなと同じメニューで練習できるようになり、いっしょに走れる『喜び』を感じられて、それが自信を取り戻すきっかけになりました」(廣中選手)

仲間との絆がモチベーションになっただけでなく、仲間や先輩の持っている経験から学ぶこともあったといいます。

「琴菜さん(太田 琴菜(おおた ことな)選手)からはトレーナーさんを紹介してもらって、体のバランスを診ていただきました。すると、膝のケガの原因は膝だけにあるのではなく、股関節の柔軟性や足首の動き方も影響していたことがわかるなど、新たな気づきを得られました」(廣中選手)

2024年の北海道合宿から。田島 愛梨(たしま あいり)選手と笑顔を見せる廣中選手(右)。このころからチームメイトと走る喜びを再認識したという

そして11月下旬、日本郵政グループ女子陸上部は、創部10周年という節目の年にクイーンズ駅伝で4度目の優勝を果たします。

廣中選手が任されたのは、各チームのエースがそろう最長区間(10.6㎞)となる「花の3区」。しかし、そこには本人にしかわからない"葛藤"もありました。

正直、当時の私は3区を走れるようなレベルにはなく、『本当に自分でいいのだろうか』と自問自答しましたね。でも、自分ができる準備はやってきたという自負もありましたし、みんなを信じて走るだけだと心に決めてスタートラインに立ちました。

結果として、自分のこれまでのクイーンズ駅伝での走りには及びませんでしたが、1秒でも早く次のランナーにたすきを渡すんだという強い気持ちはつなげたかなと思います」(廣中選手)

大きな応援を得て、4年ぶり4度目のクイーンズ駅伝優勝を果たした

日本選手権優勝、アジア選手権準優勝で「完全復活」

そして迎えた2025年のシーズン。
4月に熊本で開催された日本選手権女子10000mにおいて、廣中選手は2年ぶり4度目の優勝を果たします。強い雨が降る悪条件のもとでの見事な復活劇でした。

「タイム的にはそれほどよくなかったのですが、冷たい雨の降るなかでやり切りました」と、廣中選手。

「私は冷え性で、寒い時期にコンディションを崩してしまうことが多かったんです。でも、この冬のトレーニングではしっかり練習ができました。それがこの結果につながったんだと思います。2月、3月にコンスタントに走れていたので、4月のレースにいい状態で臨めたというのが、一番の収穫ではないでしょうか」(廣中選手)

強い雨が降りしきる中、日本選手権女子10000mで4度目の優勝を飾り、歓喜のフィニッシュ。 ©フォート・キシモト

足先が冷えることで足首をケガしたりして、寒い時期のトレーニングがうまくいかないことが多かった廣中選手。ホットクリームを塗るなどして、ケガの予防に心がけたそうです。

『絶対、冬季に走り込むんだ』という強い意志を持って取り組みました。もうケガでは苦しみたくないという気持ちがありましたから」(廣中選手)

続く5月のアジア選手権(韓国)においても女子10000mに出場。なんとまた豪雨、さらには雷と暴風にも見舞われ、一旦スタートしたレースが5200m地点で中止になってしまいました。レース途中での中止は陸上の大会では大変珍しいことです。

「すでに半分は走っていて、ここから追い上げていこうというタイミングだったんです。途中でレースが止められるというのは私も初めての経験だったので、スタッフから制止されたときは何が起こったのか全く理解ができず、驚きました。コースも水たまりになって、前の選手が霞んで見えなくなるくらい視界が悪く、雷も鳴っていたので、今振り返ると仕方がなかったと思います」(廣中選手)

それでも翌日の午前中に行われた再レースでは、自身のベストタイムに迫る30分56秒32という好タイムを記録し、第2位でフィニッシュ。

「久しぶりに30分台を出すことができたので、自分のなかでも自信になったレースでした。5000m以降は単独走になったなかでタイムをまとめられたのはよかったです。 秋にも大きな大会があるので、もっとスピードで勝負できるような練習をしていきたいですね」(廣中選手)

アジア選手権で獲得した銀メダル

「廣中、おかえり!」 励まされた沿道からの声援

廣中選手は、ケガに苦しんだ昨年からの復調を振り返って、レースの現場で「おかえり!」という声をかけてもらえたことが、とてもうれしかったといいます。

「日本選手権で優勝したあとにも皆さんから声をかけていただきましたが、実は(昨年の)クイーンズ駅伝で走っているときも、沿道から、『廣中おかえり!』って声援をいただいたんです。沿道からの声援って、選手には結構聞こえているものなんですよ(笑)。そうやって声をかけていただけることは、本当に私の毎日の励みになっています。

2024年はなかなか皆さんにお目にかかることができませんでしたが、今年は元気に、走っている姿をたくさんお見せできるように頑張りたいと思います!」(廣中選手)

「昨年走れなかった分、今年は頑張りたい」と廣中選手。次はどのような走りを見せてくれるのでしょうか

廣中選手の座右の銘は「不撓不屈(ふとうふくつ)」。どんな困難な状況でも、くじけずに立ち向かう強い意志を表す言葉です。

本人は、「一つ一つ、目の前のことをコツコツと頑張っていくことを忘れないようにしています」と話します。つらい時期を過ごしたからこそより強くなった、廣中選手。今後のさらなる活躍が楽しみです。

日本郵政グループ女子陸上部についてはこちら

■廣中選手は9月13日に開幕する大会に出場します!
出場するレースの時間は以下のとおりになりますので、ぜひ応援をお願いします!(TBS系列で生中継)

  • 9月13日(土) 女子10000m  21時30分スタート
  • 9月18日(木) 女子 5000m予選 19時05分スタート
  • 9月20日(土) 女子 5000m決勝 21時29分スタート

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