たびぽすと 明治~昭和の息吹を感じ、思いをはせる街歩き旅―世界遺産《富岡製糸場》

あなたに伝えたい旅路がある。

そこでしか見られない景色、そこでしか感じられないものを写真に収めながら旅を進めていく。四季の移り変わりや美しい自然のなかに佇むポストを訪ねる旅へ出発です。

今回の旅先は群馬県富岡市。古い街並みを残したレトロでどこかノスタルジックな空気感をまとうこの街は、歩いているだけでもシャッターを切りたくなる瞬間にあふれます。
はじめに訪れたのは世界遺産に登録をされている富岡製糸場。明治時代、絹産業の近代化を支えた製糸場をひと目見ようと日々観光客が訪れ、正門には丸型の郵便ポストが設置されています。

明治の近代化と絹文化の発展を支えた「富岡製糸場」

画像の代替テキスト
画像の代替テキスト

世界遺産に登録されている『富岡製糸場』

富岡製糸場は、フランスをはじめとしたヨーロッパの技術を取り入れた本格的な器械製糸工場として1872年に設立され、近代的な製糸技術やノウハウを広める拠点となりました。その後、富岡製糸場を模範として、日本各地に製糸工場が設立されていきました。この工場がきっかけとなり、日本の絹は世界市場に輸出され、経済成長に大きく貢献したという、まさに一つの時代を支えた工場なのです。

また、正門に設置されている丸型ポストの原型は、富岡製糸場と同様に明治時代に誕生しました。1901年、火事に強い素材として鉄が使われ、赤い円柱形の郵便ポストが試験的に設置されたのが丸型ポストの始まりです。
どこか懐かしく愛らしい丸型ポスト。昔も現在もどれほどの「想い」を届けてきたのでしょうか? そんなことを考えていると、ふと今日という一日を手紙に残して、遠く離れた友人に送りたくなりました。場内の売店で目に留まった絵はがきを購入して、さっそく旅を始めます。

画像の代替テキスト
画像の代替テキスト
画像の代替テキスト

多くの工女が繭から糸を取る作業を行っていた繰糸所は、長さ約140mの巨大な工場となっており、左右におよそ300機の繰糸器がならぶその姿は圧巻です。

画像の代替テキスト

そして、正門から見える東置繭所(ひがしおきまゆじょ)には設立年である「明治5年」のキーストーンが!
どちらも目にしたら、押さえておきたいフォトスポットです。

画像の代替テキスト

時代を象徴する煉瓦を基調とした建物に、木造部分の淡いライトブルーの配色がどこか西洋っぽさを感じる、古さだけではなく、ちょっぴりかわいさのある外観の西置繭所(にしおきまゆじょ)。

画像の代替テキスト

そんな西置繭所は、2020年に保存整備工事が完了し、1階内部には構造補強用の鉄骨で骨組みされたガラスの多目的ホールが誕生。むき出しになった当時の建物の構造とガラスという、明治モダンと現代的なコントラストがなんとも言えないカッコよさを演出するこの空間は、コンサートや結婚式会場などとして借りることができるそうです。

画像の代替テキスト
画像の代替テキスト
画像の代替テキスト

工場内を歩くと、ところどころで時代を感じるサインプレートや今では見かけないタイプの電柱、当時書かれたであろう筆跡など、時代の雰囲気を感じることができ、隠れた明治の面影を探すのも意外な楽しみ方の一つです。

画像の代替テキスト

現場での働き手となった工女の宿舎も当時の面影そのままに

最盛期には多くの工女たちが寝食を共にし、300人以上が一度に働くことのできた富岡製糸場は、1987年の操業停止まで、115年間にわたって日本の絹産業を支え続けました。

ニューレトロな雰囲気漂う、市内の街歩き&郷土料理

画像の代替テキスト

世界遺産をあとにして、次に向かった先は富岡製糸場の目の前にある「絹工房」。
店頭では、泡立てた富岡シルク石鹸の実演販売をしており、弾力のあるふわふわな泡で洗った手は、違いがわかるほどスベスベに! 思わぬところで繊維以外の絹のすごさを実感することができました。

画像の代替テキスト
画像の代替テキスト

たくさん歩いてお腹が空いたら、せっかくなら地元のものを食べたい!ということで上州名物のおきりこみを目当てに「みの助茶屋」へ。

画像の代替テキスト

濃厚な味噌味のスープに、たくさんの野菜と存在感のある平たい幅広麺が特徴的な群馬県の郷土料理。古くはこねた小麦や野菜を切り込んで入れたことから、「おきりこみ」の名前の由来になっているのだとか。おきりこみは素朴でありながら土鍋いっぱいに大根をはじめ野菜がたっぷり。味噌との相性もよく、どこか家庭の温かみを感じながら、この土地の名物をいただきました。

画像の代替テキスト

富岡製糸場の周辺一帯は、明治から昭和にかけての日本の歴史を感じさせる、どこか懐かしい雰囲気を醸し出し、まるで時を遡ったかのようなノスタルジックな風景が広がり、歩いているだけでもその空気感を存分に楽しめます。

時折タイムスリップしたような気分にもなり、その風景をはがきにスケッチしたくなりました。

簡単に写真を送れるようになった時代だからこそ、今日は文章や絵だけで見たもの・感じたことを手紙で綴りたい。手紙で気持ちや見ている景色を伝えることの楽しさと難しさを久しぶりに思い出しながら、街歩きを続けます。

画像の代替テキスト
画像の代替テキスト
画像の代替テキスト

群馬ならではの"アレ"を使ったスイーツとおいしいコーヒーで、ほっとひと息

画像の代替テキスト

たくさん街なかを歩いたあとは、甘いものとおいしいコーヒーでちょっとひと息。

立ち寄ったのは富岡製糸場から歩いてすぐの「CAFÉ DROME(カフェドローム)」。1875年に建てられたという古民家を改装した外観と店内は、どこかヨーロッパの異国感が漂う雰囲気。それもそのはず、店名の由来である「ドローム」は、富岡製糸場のフランス人技術指導者の出身地「ドローム県」から名付けられたとのことで、インテリアなどからはレトロモダンとヨーロッパを感じることができます。

画像の代替テキスト
画像の代替テキスト

お店の一番人気は、群馬名産の味噌を使ったプリン、その名も「プリンそこがみそ」。文字どおり、底のカラメルソースが味噌味になっており、ありそうでなかったこの組み合わせに思わず、「おいしい!」と声を漏らしてしまうほど。ブリュレされたパリパリの表面と、とろとろの中身のプリンに味噌のソースが絡まり、3層にわたって楽しい食感と味わいが楽しめます。

今日一日の出来事を振り返り、コーヒーの香りに包まれながら、絵はがきを前に友人に向けたメッセージを考える。静かに流れる時間を感じながら、ほっとひと息のカフェタイムでした。

画像の代替テキスト

世界遺産の入り口で、多くの人の行き来を見届けるかのような丸型ポスト

画像の代替テキスト

旅の終わりに、再び「富岡製糸場」の正門へ。

今日一日の旅の思い出と、遠く離れた友人に宛てた絵はがきを投函しに向かいます。
ポストに投函するとき、(どんな顔をしてこの絵はがきを読んでくれるだろうか?)(喜んでくれるだろうか?)(返事は来るだろうか?)、今ではすっかり忘れていた感情がよみがえりました。

スマホもパソコンもない時代は多くの人の想いが手紙となり、郵便ポストに投函されて全国各地に届けられていたことでしょう。

そんなことを思い巡らせながら富岡製糸場をあとにしました。

古きよき歴史を感じられる街、富岡市。一度訪れてみてはいかがでしょうか?

画像の代替テキスト

撮影協力:富岡市・富岡製糸場



津々浦々からのフォト便り 連載記事一覧はこちら

JP CAST 公式アプリのダウンロードはこちらから!
JP CAST 公式アプリのダウンロードはこちらから!
            

#HOT TAG

カテゴリ

おすすめ記事