私のオンとオフ スイッチインタビュー 生粋の格闘技好き郵便局社員は地元を愛するプロキックボクサー!?

私のオンとオフ スイッチインタビュー 生粋の格闘技好き郵便局社員は地元を愛するプロキックボクサー!?

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全国に約24,000ある郵便局、そして日本郵政グループの社員はおよそ40万人。この企画では、それぞれの立場で仕事に取り組む社員の姿勢と知られざるプライベートでの横顔、そんなオンとオフの両面で活躍する社員の魅力ある個性を掘り下げていきます。今回お話を伺ったのは、兵庫県姫路市の姫路郵便局に勤務する大野 祐志郎(おおの ゆうじろう)さん。郵便局で要員配置の業務を担当する一方、プライベートではキックボクシングに専念し、2021年12月には「K-1 WORLD GP」(エディオンアリーナ大阪)に出場。K-1ファイターとなり、現在はプロのキックボクサーとして活躍しています。また、「姫路を盛り上げたい」と格闘技道場を設立して、ボランティアで子どもや若者の育成にも力を注いでいるという大野さんに、ふだんの活動の様子を伺いながら、オンとオフを両立する極意を教えていただきました。

大野 祐志郎(おおの ゆうじろう)さん

姫路郵便局 第一集配営業部 主任

大野 祐志郎(おおの ゆうじろう)さん

2006年、日本郵政公社に入社(当時)。兵庫県の市川郵便局での配達業務の経験を経て、2019年に姫路郵便局に配属。現在は要員配置の業務に携わっている。

仕事で大切にしているのは、「どんな仕事もお客さまにつながっている」という意識

大野さんが勤める姫路郵便局

――大野さんのふだんのお仕事について教えてください。

大野:配達員たちのサポート役として、主に要員配置の業務を担当しています。社員の出勤人数や、必要な配達車両台数の確認を行い、どの業務に何人の人員を割り当て、どう動かすかを検討し、社員とコミュニケーションをとりながら配達業務がスムーズに進行できるようにサポートするのが、私の仕事です。

――働いているなかで、どんなときにやりがいを感じますか? また、仕事で心がけていることについても教えてください。

大野:今の業務に就く前は配達業務をしていたので、お客さまと顔を合わせたり、直接お話をさせていただく機会が多く、「ありがとう」と言っていただけることがすごくやりがいになっていました。転属して配達をサポートする内勤業務を担うようになった今は、繫忙期に備えた要員配置が実際にガチっとハマり、業務がスムーズに遂行されたときに、「準備したことが実を結んだぞ」とやりがいを感じますね。お客さまあっての郵便局なので、お客さまとの直接のやり取りがない業務だとしても、最終的にはお客さまにつながるということを意識して仕事に取り組むようにしています。

週6トレーニングに道場開門......好きだから突き詰められるキックボクシング道

©K-1
プロのK-1選手として試合に出場する大野さん

――プライベートではキックボクサーとして活躍されていますが、格闘技はいつごろから始めたのですか?

大野:9歳からです。子どものころは興味本位で水泳や野球、陸上などいろいろなスポーツに挑戦しましたが、空手や格闘技だけは人より抜きん出て成績がよかったんです。きっと格闘技はセンスがあったんでしょうね(笑)。それに、何より格闘技が好きなんですよね。練習が終わった後も時間があれば自主練習をしているくらいでしたから。その流れでキックボクシングの道を志すようになりました。

――好きが高じてプロにまでなったんですね。ちなみに、初めてプロとして試合をしたのはいつでしたか?

大野:21、22歳のときだったと思います。そのころは二輪車での配達業務をしていたのですが、休憩時間になると懸垂をしたり、スクワットをしたり。さらに、同僚に「何回できます?」といっしょに懸垂をやろうと誘ったり、周囲を自分の趣味に巻き込んでいましたね。職場の人からは、「変わったヤツやなあ」と見られていたと思います(笑)。

――プロになられていろいろな試合に出場されてきたと思いますが、これまでで一番記憶に残っている試合を教えてください。

大野:初めてK-1で試合をしたときは、子どものころからテレビで見ていた憧れのリングだったので気分が高揚して試合どころじゃなかったですね。しかも対戦相手は、現K-1世界チャンピオンで憧れの大和 哲也(やまと てつや)選手。敗北しましたが、私のなかでは本当に想いの詰まった試合でした。

©K-1
憧れの大和 哲也選手との対戦が実現した大会

――どんなスケジュールでトレーニングに取り組まれているんですか?

大野:昔も今も週6でトレーニングをしています。1日のタイムスケジュールでいえば、夕方5時に勤務が終わる場合は家に帰って夕飯を食べてから自分が運営している道場に行きます。まず自分のトレーニングをして、その後は道場に来る子どもや会員の指導に入ります。夜10時に指導を終えた後は、夜12時まで2時間、道場生たちといっしょに練習しています。そして、大会については1シーズンに1回のペースで、少なくとも年に3回の頻度で出場しています。

――お仕事以外の時間はずっと格闘技をやっているんですね。しかも、選手として活躍しながら、ご自身で格闘技の道場も作られるなんて相当な熱の入れようですね。

大野:2012年の8月に「華王州(カオス)」という道場を立ち上げました。その前から友達を集めて倉庫を借りて畳を敷いて、格闘技の練習をしていたんです。そのうち、街中でパワーがあり余っていそうな子を見たら声をかけて、道場での練習に誘うようになりました。いっしょに練習して、大会があると「出てみない?」と試合に参加してもらっていくうちに練習生が増えて、正式に道場を立ち上げることになったんです。

郵便局での勤務後、さらなる高みを目指し、日々トレーニングに励んでいる大野さん

――人生を懸けてのめり込めるキックボクシングの魅力とは、ズバリ何でしょうか?

大野:数え上げたらキリがないですが、相手と真剣に戦うという非日常を経験すると、ふだんの仕事関係やプライベートの付き合いとはまた違った感情になるんですよね。キックボクシングで戦う者同士にしかわからない距離の近さを感じるというか、一度試合した相手とはより深い仲になれるんです。そこが私にとってキックボクシングの魅力であり、一番好きなところです。

やりたいことだから、オンもオフも100%の力で突き進む

――仕事をするうえで、キックボクシングの経験が活きていると思うことはありますか?

大野:大いにありますね。キックボクシングは、継続的にトレーニングをしなければ上達しません。だから、毎日「今日はこの練習をやる」と決めたらコツコツと終わるまでやる。継続力や忍耐力が非常に大事なんですね。キックボクシングによって、そういった力は養われましたね。仕事でもその日にやらなければならないことは必ずその日に終わらせるようにしていますし、精神的に強くなったのは間違いないです。

――逆に、郵便局のお仕事の経験がキックボクシングで活きたことはありますか?

大野:業務上、郵便局のサービスをお客さまに紹介するなど、人と話す機会が多いのですが、そのおかげで人前で話すことに慣れているところがあります。格闘家は「しゃべりが苦手」という方も多いのですが、私の場合、記者会見やインタビューでも特に緊張はしません。こういった人前で話すスキルは、郵便局の仕事で培われたものだと思います。

――キックボクシングでは減量もありますよね。お仕事をしながら試合に向けた減量、想像するだけで大変そうです。

大野:空腹感に耐えることは何年やってもしんどいです(苦笑)。日ごろから食事面は気をつけていて、体重が増えすぎないようにセーブしていますし、試合前は脂質の多いものを摂らないように心がけています。職場でお土産のお菓子をもらうこともありますが、減量期間中は皆さん、「今ってあかんやんな」と気を遣いながら渡してくれます (笑)。「試合が終わったら食べよう」と自制できるタイプなので、私としてはまったく問題ないんですけどね。

――職場の方は、大野さんがキックボクサーで試合をしていることはご存じなんですね。

大野:そうなんです。しかも、姫路郵便局だけではなく、過去に勤めた郵便局も含め、どの局でも皆さん応援してくれるんですよね。「頑張れよ」「休みが必要な日があったら言えよ」などの言葉をかけてくださいます。そういうときは「郵便局の仕事あっての格闘技なので、気を遣わないでください」とお伝えするのですが、本当にありがたいです。

――それにしても練習に減量に......仕事とキックボクシングの両立は本当に大変そうです。

大野:確かに両立は大変ですが、どちらもやりたいことなんです。だから、自分のなかでは「オンとオフ」という感覚はなくて、どちらも100%の力で突き進もうと思って取り組んでいます。郵便局で一生勤めようと思っているので、それを軸に自分のモチベーションを上げるために、「この一戦で人生を変えてやる!」という想いでこれまでもリングに上がってきました。

©K-1

何事にも向上心とポジティブ思考で取り組み、生まれ育った地域に恩返ししていきたい

――キックボクシングを続けるなかで、「郵便局社員でよかったな」と思うことはありますか?

大野:キックボクシングや格闘技で生計を立てている選手からはよく、スポンサーさんとの付き合いが大変だという話を聞きます。私がそうしたことを気にせずキックボクシングに打ち込めるのは、郵便局社員として安定した収入を得ているからですし、郵便局に支えてもらっていると思っています。さらに、試合が決まり、記者会見に急きょ出なければならないことがあるのですが、そういうときには休ませていただけるなど、職場の方が協力してくれることもとてもありがたいです。また、格闘技の道場を運営するにあたり、社会的に信用してもらえるという点も郵便局社員でよかったと思うことです。

――オンとオフを両立させ、活躍されている今、描いている将来の夢を教えてください。

大野:オンの面でいえば、向上心をもって仕事に取り組み、最終的には局長を目指したいです。その過程でいろいろな苦労があるとは思います。でも、働くうえで向上心がなかったら、仕事が嫌になり、私生活でもネガティブな発想に陥って、あまり楽しくない人生を送ってしまうんじゃないかと思うんです。なので、常に前向きに、ポジティブに取り組んでいこう、そう意識して、何事にも取り組むようにしています。

――キックボクサーとしての目標はありますか?

大野:これまで「より速く、より強く」を求めてやってきましたが、38歳になり、現役で活躍し続けるのが難しい年齢に差しかかってきました。最後にもう一度、K-1の舞台で試合をして、悔いなく現役を終えたいと思っています。ただ、格闘技は好きなことなので、現役を退いたら今度は指導者としてかかわっていきたいです。今は少しやんちゃしている子たちにも格闘技で成功する道を作ってあげたいですし、地元の姫路市を盛り上げたいという想いも強いですね。姫路市は自分が生まれ育った場所ですし、お世話になった方もたくさんいらっしゃいます。地域の郵便局社員、そしてキックボクサーとして、何かしら恩返しができたらと思っています。

オン・オフ両立の極意

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