担当者が熱血解説!Vol.5 保険料の算定からリスク管理まで、保険の仕組みを支える「アクチュアリー」

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「数学」を武器に、保険の仕事を支える「アクチュアリー」という仕事をご存じでしょうか。近年では保険に限らず、さまざまな業種の企業においてリスク管理のプロフェッショナルとしても、その知識や技術が求められています。そんなアクチュアリーとしてかんぽ生命で働く、梅木 彰大(うめき あきひろ)さんと吉村 翔(よしむら しょう)さんに、その業務内容や、やりがいについて熱血解説してもらいました。

【今回のナビゲーター】

梅木 彰大(うめき あきひろ)さん

株式会社かんぽ生命保険 主計部 企画室 主査

梅木 彰大(うめき あきひろ)さん

2017年、株式会社かんぽ生命保険に入社。主に経済価値ベース指標の計測やリスク分析を担当している。

吉村 翔(よしむら しょう)さん

株式会社かんぽ生命保険 商品開発部 主査

吉村 翔(よしむら しょう)さん

2019年、株式会社かんぽ生命保険に入社。現在は、保険料の算定など、数理面から商品開発に携わっている。

Lesson1 保険料の設定から、会社全体のリスク管理までを担う「数理」のプロ

一般の人にはなかなかなじみがないであろう「アクチュアリー」。梅木さん曰く、端的に表すと、「計算のプロ」のようなものだそうです。

梅木アクチュアリーは、主に生命保険・損害保険・企業年金などの分野において、「計算」によって将来の見通しを立てながら、保険料率・支払保険金額の算定などを行う数理業務の専門職です。「計算」といっても、単純に数を足したり引いたりするということではなく、確率や統計などの手法を用いることで、将来の見通しを算出しています。

吉村:一般にはあまり知られていないのですが、保険の世界には『保険数理』という学問分野があり、保険商品の保険料などもこの理論に基づいて算定されています。

吉村さんが所属している商品開発部は、まさにその「保険数理」をもとに、保険商品の保険料などを算定している部署です。

吉村:保険料の算定にあたっては、その算定式で用いる将来に関するさまざまな「率」を設定する必要があり、統計データなどを用いて算出します。例えば、死亡率(※1)、予定利率(※2)や予定事業費率(※3)をいくらにするかといったところを、確率や統計などの手法を用いて計算して決めるのがアクチュアリーの役割です。

※1 ある集団に属する人のうち、一定期間中に死亡した人の割合

※2 生命保険の契約者に約束する運用の利回り

※3 保険会社の運営に係る諸経費の割合

また、アクチュアリーの仕事の範囲は、保険商品に関する計算だけにとどまりません。

梅木アクチュアリーは、会社全体のリスク管理も担っています。私が在籍している主計部企画室では、会社の財務健全性の評価を行うことが主な業務なのですが、そのほかにも、死亡率の変動によって保険引受リスク(※4)がどれくらい高まるかといったことや、近年では新型コロナウイルス感染症の影響によって損益がどのような見通しになるかなど、主に保険引受分野での会社の資本や収益にかかわるリスクの分析も行っています。

※4 保険事故の発生率等が保険料設定時の予測に反して変動することにより、保険会社が損失を被るリスク

アクチュアリーは高度な専門職なだけに、公益社団法人日本アクチュアリー会が実施している資格試験を受験します。そのため、アクチュアリーを志す人は仕事の傍ら自習をしたり、社内勉強会で先輩に教わるなどして、合格を目指すのが常なのだとか。それでもお二人がアクチュアリーを目指したのは、好きな「数学」を仕事に活かしたいという思いからでした。

梅木:実は最初からアクチュアリーを目指していたわけではなかったんです。大学は理学部で数学を専攻していたのですが、まわりの学生は教師やシステムエンジニアになるという人が多くて。ただ、就職活動でいろいろとリサーチをするなかで、せっかくなら大学で学んできた数学を活かせる仕事に就きたいと思い、アクチュアリーになることを考えはじめました。

梅木さんと吉村さんがアクチュアリーの勉強に使っている参考書

吉村:私は理工学部出身で、就職活動では数学などの大学で学んだ知識を活かせる職業を探していました。調べてみると、金融業界では数学を活かせる職業がけっこうあり、そのなかの一つがアクチュアリーでした。最初は数ある選択肢のなかの一つという位置づけだったんですが、アクチュアリーは異なる業種から転職して目指すのは難しいと聞いたので、新卒でアクチュアリーを志すことにしました。

【ここがポイント!】
資格試験の合格が必要! アクチュアリーは数理を扱う高度な専門職

Lesson 2 若手であっても会社の重要な決定にかかわる仕事ができるところが魅力

同じアクチュアリーでも、所属する部署によって仕事の内容も変わってきます。働く部署は異なれど、アクチュアリー職の魅力としてお二人とも感じているのが、「会社の重要な決定にかかわる仕事ができる」ということ。

梅木私たちのような若手という立場であっても、経営や販売商品という重要事項に関して、「計算」をもとに自分の考えを反映させることができる点はとても魅力的です。

吉村:これはかんぽ生命という会社で働くからこその魅力ですが、かんぽ生命の保険商品は日本全国にある郵便局で扱われます。そうした日本全国という規模で扱われる保険商品について、商品設計の段階から保険料の算定に携わることができるという、会社の重要な決定にかかわれる部分にやりがいを感じますね。

しかしこれらの魅力に気づいたのも、入社後しばらく経ってからのことだったそうです。

梅木:現在の部署に移ってきたことが、一つの転機になったと思います。それまでもアクチュアリーとして業務に携わってはいましたが、今よりもシステマチックなデータの集計作業を主に行っていました。現在は、そうして作られたデータを分析し、将来の見通しなどを考えるなかで、視野が広がったというか。自分が分析した結果をもとに、会社の経営が行われていることを実感できるようになって、自分の仕事が経営の重要事項の決定に寄与できているんだと気づきました。

アクチュアリーは専門性を求められる仕事。日々の勉強も欠かせない

吉村:学生のころは、アクチュアリーの詳しい業務内容など、そこまでイメージができていなかったのですが、入社後にアクチュアリーとして第一線で活躍している方々といっしょに働いていくことで、アクチュアリーの仕事が、自分が思っていたよりも深いというか、こんなにも幅の広い仕事なんだと気づくことができました。

パソコンを使ってデータと向き合う仕事中の吉村さん

【ここがポイント!】
若手社員でも会社の重要な決定にかかわることができる!

Lesson 3 将来を見通すアクチュアリーの技能はますます社会に求められている

最後にお二人に、今後目指していきたいことについて伺いました。

梅木:より経営に役立つ情報を社内へ広げていきたいと思っています。アクチュアリーとして数字という根拠は常に準備していますが、どのような数字が必要なのかは、社会情勢や受け取り手の考え方によっても変わってくるものです。その時々で必要とされるものを見極めつつ、よりよい会社経営につながるような仕事を心がけていきたいです。

吉村:今、アクチュアリーに求められる役割が変わりつつあります。これまでは保険会社の商品開発や主計部門の業務がアクチュアリーの伝統的な業務だったのですが、近年はリスク管理やデータサイエンスなど、アクチュアリーが活躍できる分野が広がっています。時代の変化に合わせて、できることを増やしていきたいというのが個人的な目標ですね。

【ここがポイント!】
複雑化する企業のリスク管理においてもアクチュアリーは欠かせない存在に!

▶舞台裏で見つけたもの

  • アクチュアリーは、不確実な未来を予測して、会社を支える存在!
  • 変化の大きなこの時代に、「数学」という揺るぎない武器を駆使してリスクに立ち向かうプロフェッショナルの姿!

※撮影時のみマスクを外しています。

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