私のオンとオフ スイッチインタビュー 「笑い文字」で、お互いを尊重して思いやりのあるコミュニケーションを

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全国24,000ある郵便局、そして日本郵政グループの社員はおよそ40万人。この企画では、それぞれの立場で仕事に取り組む社員の姿勢と知られざるプライベートでの横顔、そんなオンとオフの両面で活躍する社員の魅力ある個性を掘り下げていきます。今回話を聞いたのは、青森県の野辺地郵便局で窓口営業部長を務める、中津 かおる(なかつ かおる)さん。日ごろ、窓口業務のマネジメントを行う中津さんには、「笑い文字上級講師」という一面があります。「笑い文字」とはいったいどんなものなのか、そして、笑い文字を学び、広げる活動を通して得られたよろこびや、業務への好影響についてお話しいただきました。

中津 かおる(なかつ かおる)さん

野辺地郵便局 窓口営業部長

中津 かおる(なかつ かおる)さん

1989年、当時の郵政省に入省。青森県の弘前浜ノ町郵便局から窓口業務に従事し、現在勤務する野辺地郵便局では、窓口営業部長を務める。

マネジメントは、双方向のコミュニケーションを大切に

――お勤めの野辺地郵便局がある野辺地町について教えてください。

中津:青森県にある野辺地町は、下北半島と津軽半島に囲まれた、陸奥(むつ)湾の最奥に位置します。かつては、北前船※の寄港地として栄え、地域経済の中心地でした。野辺地の名物は「葉つきこかぶ」。葉っぱがついた小ぶりなカブは、手で皮がむけるほどやわらかく、果物のようにジューシーです。

※①大阪と北海道(江戸時代の地名では大坂と蝦夷地)を日本海回りで往復していた、②寄港地で積荷を売り、新たな仕入れもした、③帆船「北前船とは | 北前船 KITAMAE 公式サイト【日本遺産・観光案内】 (kitamae-bune.com)」 

野辺地駅から歩いて20分ほどのところにある野辺地郵便局。陸奥湾も目と鼻の先

――現在のお仕事について教えてください。

中津:郵便・貯金・保険を取り扱う窓口業務において、複数名の社員のマネジメントをしています。窓口やロビーに出て、お客さまと接することもあります。幅広い業務を少人数で対応するので、日々学ぶことも多く大変ですが、充実しています。マネジメントするうえでは、社員それぞれの考えや意見を尊重し、一方的な押し付けをしないように心がけています。

勤務中の中津さん。地域の方と、郵便窓口やロビーで会話することも

心が通い合うコミュニケーションツール「笑い文字」に出会って

――中津さんは「笑い文字上級講師」という一面もお持ちということで、笑い文字について教えていただけますか?

中津:笑い文字は、満面の笑顔が入った筆文字です。5年ほど前、郵便局の先輩が、はがきに私の名前をモチーフにした笑い文字を書いてくれたんです。その文字があまりにかわいくて、受け取ったその場で先輩にお願いし、「ありがとう」の笑い文字の書き方を教えてもらったことが、笑い文字を書くようになったきっかけです。

受け取った方も思わず笑顔になる、笑い文字のメッセージたち

笑い文字の特徴は、ただ文字を書くのではなく、人にお渡しして完成するという点です。最初は、かわいらしさに惹かれて書き始めたのですが、笑い文字は人と人とのコミュニケーションツールだと教わり、その奥深さに魅せられました。日ごろ言えない感謝の気持ちや、想いを伝えたい人へ笑い文字を書き、その方にお渡しすることで、笑顔と感謝が行き交うことが素敵だなと感じています。

――中津さんが笑い文字をお渡しした方との、思い出深い交流はありますか?

中津:ある飲食店の方との交流は印象的でしたね。そのお店のパスタがいつもおいしくて、感謝の気持ちを伝えたくて笑い文字を書いてお持ちしたのですが、多忙なお店の方に手渡しする申し訳なさと気恥ずかしさで、テーブルの上に置いて帰ったんです。その後、再度来店したらまたお店は大忙し。結局、前回と同じく笑い文字を置いてお会計を済ませると、今度はお店の方が外まで追いかけてきてくれて、「前に(笑い文字を)もらったとき、また頑張ろうと思えた。うれしくて、ずっとかばんの中に入れて持ち歩いていました」と伝えてくださったんです。

――すごく、いいお話ですね。

中津:本当にうれしかったです。今は、1枚目も、2枚目もお店に飾ってくださっています。1枚目は書き始めたばかりのころの笑い文字で、正直クオリティが伴わず恥ずかしいのですが、お店の方は「あのときの感情を忘れたくないから」と、大切にしてくださっています。

――まさに、心が通い合うエピソードですね。現在は、笑い文字に関してどのような活動をされていますか?

中津:現在は、笑い文字普及協会の上級講師として、講座やワークショップを開いたり、イベントにお越しになった方のお名前を笑い文字で書いたりしています。講座は、月に1、2回のペースで、オンラインでも開催しています。講座でも「書いたら終わりではなく、感謝や想いを伝えたい人に実際にお渡しして、笑顔と気持ちのやり取りを味わってみてください」と伝えています。

また、さまざまな場所で作品の展示も行っています。青森駅の東西自由通路での展示は反響が大きく、通勤、通学の際に展示を見てくださった方が数多く講座に来てくださいました。なかには、けがに苦しんでいたアスリートの方が「飾られていた笑い文字に励まされるような気がして、ずっと見ていたんですよ」と、習いに来てくれたこともありました。

――中津さんの笑い文字が、どこかで誰かを笑顔にしたり、励ましているんですね。では、作品づくりで大切にされていることを教えてください。

中津:直接、お渡しする場合はお相手のことを考えて、展示会でも、来場されるお客さまのことを想って書くことです。

――お相手のことを考えながら書くと、同じデザインでも違いが出ますか?

中津:そうですね。笑顔ひとつとっても、ほっぺの大きさなどが変わります。先日も、笑い文字であるお子さんのお名前を書いたのですが、お名前の由来や、お子さんの普段のご様子を親御さんに伺いながら仕上げました。できあがって「〇〇に表情が似ている!」と喜んでいただけると、笑い文字を通してお客さまと心を通わせることができたのかなと感じて、うれしくなります。

心を通わせることのうれしさを教えてくれた「笑い文字」を職場でもフル活用

――郵便局のお客さまや、職場の方に作品をお渡しになったことはありますか?

中津:展示イベントが開催されるときや、感謝を伝えたいときには、お客さまにも郵便局の同僚社員にもお渡ししています。最近だと、同僚の誕生日に「Happy Birthday」の笑い文字をプレゼントしました。

――笑い文字の活動が、仕事にも活かされていると感じることを教えてください。

中津:自分自身、あまりことばが達者ではないのですが、笑い文字のおかげで、自分の気持ちが伝えやすくなった気がします。心を通わせることのうれしさを知ったことで、相手の想いや考えも、よりしっかり受け止めたいと思えるようになりましたね。

――郵便局内で笑い文字を使うことはありますか?

中津:野辺地郵便局内のロビーに、季節のことばを表現した笑い文字を飾らせていただいています。窓口業務は、お客さまとのコミュニケーションが重要なので、お客さまとの会話のきっかけになればと思っています。
 今年は母の日を前に、「笑い文字でありがとうのメッセージはがきを贈ろう」というワークショップを行いました。気軽に参加できるよう、笑顔に、ほっぺの赤みとハートを書き入れるだけで、笑い文字の「ありがとう」が仕上げられるよう工夫しました。

その後、参加者の方々には、はがきの裏にお母さんへのメッセージを書いてもらうのですが、感謝のことばがすらすらと出てきたことには、私も驚かされました。お母さんを想って笑い文字を仕上げたことで、普段言えない、素直な気持ちが湧いてきたのかなと感じます。

「笑い文字」で、感謝が行き交うぬくもりのある世界を広げたい

――郵便局でのお仕事と、笑い文字の活動の両立は大変ではないですか?

中津:笑い文字を受け取った方の笑顔を見られるのは自分にとって幸せですし、受講生とみんなで笑い文字を書くことで、自分自身も元気づけられます。笑い文字の活動は、休日の土曜日に行うことが多いのですが、活動を始めてからは疲れ知らずです。

――これからの、オン・オフ両方の目標を教えてください。

中津:業務に関しては、これからも、双方向のコミュニケーションを大切に、職場の仲間とともに日々仕事に打ち込んでいきたいです。笑い文字の活動では、イベントや展示会の開催を増やし、笑い文字を見ていただける機会をまず増やしたいですね。たくさんの方に、笑い文字を書き、渡すというプロセスを体験していただきたいですし、将来的には、介護施設等でもワークショップを開きたいと考えています。

――笑い文字を書いて渡すと、中津さんはどんなことが起きると実感されていますか?

中津:笑い文字の書き手としては、お渡しした方の笑顔を見て間違いなく元気になれますし、書き手はもちろん、きっと受け取り手の方も温かな気持ちになり、周りの方に感謝できて、やさしく接してくださると思います。そういったポジティブな感情が人づてにどんどん広がっていけば、世の中によりぬくもりがあふれていくのではないでしょうか。

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※撮影時のみマスクを外しています。

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