未来の物流レボリューションVol.3 配送ロボットがオフィスのなかで荷物を届ける未来へ。オフィスビル内で実施した、配送ロボットを活用した試行をレポート

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試行・メディア説明会の様子はこちら

NTTグループが管理する名古屋市内のオフィスビルで、この10月にビルを管理するNTTグループと日本郵便により、ロボットを活用した館内物流の試行が行われました。

段階的に配送ロボットの試行を行ってきた日本郵便にとって、今回は初の外部のオフィスビルでの試行となります。果たしてどのような内容だったのか、2022年10月18日に行われたメディア向け説明会の模様を取材しました。

日本郵便では初! 外部オフィスビルでの、配送ロボットの試行

日本郵便では、これまで大手町本社ビルでの社内便の配送(2020年度)や、オートロック付きマンションでの配送(2021年度)など、継続的に物流分野での配送ロボットの活用に向けた試行をしてきました。それらの試行を踏まえて、この2022年10月3日から10月21日に、日本郵便では初となる外部オフィスビルでの配送ロボットによる館内物流を試行実施。テナント企業さまの郵便物等の配送・取り集めを通じて、屋内配送ロボットの運用課題の抽出や今後の展開に向けた要件整理を行いました。

検証のポイントとなるのは、第一に受取人にストレスがなく郵便物等を受け取ってもらえるかということ。そして、受取人に届けるまでの過程において、受取人のみならず、ほかのビルの利用者の妨げとなることなく配送することができるか、ということ。この試行を通じて、ユーザーにとっての使いやすさや、実現可能性の確認を行いました。

今回の試行の舞台となった名古屋市のオフィスビル
ビルで稼働するロボット。写真左から警備ロボット「ugo」、配送ロボット「RICE」、フードデリバリーロボット「DeliRo」、清掃・警備・案内ロボット「Toritoss」)。今回、日本郵便は「RICE」による配送を実施しました

オフィスワーカーのなかに溶け込みながら荷物を安全に配送

今回の試行で使用した機体は、配送ロボット「RICE」。高さ76cm、重量55kg、最大積載量は10kgで、80サイズ(縦・横・高さの合計サイズが80cm以下)程度の配送物を想定しています。

ロボットは自律移動型で、ビル内を通行するオフィスワーカーに入り混じって、人の導線の妨げにならないように走行します。さらに、階の移動にはエレベーターを利用。

エレベーターホールに入ってきた「RICE」は、ドアの前に立ち止まると自動でエレベーターを呼び出します。エレベーターが降りてきてドアが開くと、乗っていた数人の利用者が降車するのをしっかりと待ってから乗り込みました。回転半径が小さいため、エレベーターの狭い空間のなかでも器用に方向転換します。

このようにスムーズな動きを見せたRICEですが、もちろんロボットのなかに人がいるわけでも、外部で遠隔操作しているわけでもありません。搭載されている各種センサーを活用し、ロボット自身が人や障害物を検知し、走行可能なスペースを判断して走行しています。

フロアには、荷物を取り集め、配送する場所が数カ所設定されており、配送の場合はRICEが到着すると、受取人のもとに電話とeメールが来てお知らせしてくれます。ロボット背面の操作パネルで暗証番号を押すと、ボックスが開いて荷物を受け取ることが可能です。これで荷物の誤配や盗難を防ぐことができます。

テナントへの模擬配送の様子。今回はメディア向けとして、メディアが集まる会議室へ配送が行われました

RICEは自律型ロボットではありますが、現在地やバッテリー状況などのステータスを、管理システムを通じてタブレットなどで常に確認することが可能です。

また、テナントから取り集めた荷物は、RICEが自動で館内物流センターに届けてくれます。配送や取り集めが終わると、ロボットは待機位置に戻っていきます。

館内物流センターにRICEが到着したところ

人間とロボットが協調して新しい物流サービスを実現

最後に、日本郵便株式会社 オペレーション改革部 部長 西嶋 優(にしじま ゆたか)さん、同 係長 伊藤 康浩(いとう やすひろ)さんに、今回の試行の状況や、今後のロボット活用への期待や展望についてお話を伺いました。

――館内配送ロボットの試行、利用者からの反応はいかがでしょうか。

伊藤:テナントさまからは非常にポジティブな反応をいただいております。ロボットの見た目が愛らしいというご意見もあれば、取り集めに呼びやすいとか、操作がとても簡単だとか、手軽に利用できるという点でも評価をいただいており、今回の試行に関して利用者さまからは非常に喜んでいただけていることを感じています。

――今後の物流分野でのロボット活用について抱負をお聞かせください。

西嶋:いつの時代も、物を人から人へ届けるという物流サービスは必要不可欠なものです。その物流分野において、日本郵便は人とロボットの協調体制を持続可能な形で実現し、新しい物流サービスを提供していきたいと考えています。人とロボット、それぞれの得意分野を活かして、より深い物流サービスを導き出せるよう取り組んでいきたいと思います。

人とロボットが手を取り合って、物流による新しい価値を提供していく。今回の試行は、そんな未来へ前進するための一歩となりそうです。

※撮影時のみマスクを外しています。

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