私のオンとオフ スイッチインタビュー 「大切なのは"自己分析"」 母娘でマスターズ陸上日本新記録を樹立したゆうちょ銀行社員が語る成長の秘訣

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全国24,000ある郵便局、そして日本郵政グループの社員はおよそ40万人。この企画では、それぞれの立場で仕事に取り組む社員の姿勢と知られざるプライベートでの横顔、そんなオンとオフの両面で活躍する社員の魅力ある個性を掘り下げていきます。今回話を聞いたのは、ゆうちょ銀行松山支店ブロック今治店の渉外部に所属する堀部 舞(ほりべ まい)さん。FC(ファイナンシャル・コンサルタント)として窓口・渉外業務で活躍する一方、陸上競技に打ち込み、2022年8月に開催された「四国マスターズ陸上」の「女子100m障害」では日本新記録を打ち立てました。堀部さんが語る、オンとオフともに力を伸ばす秘訣とは?

ゆうちょ銀行 松山支店ブロック今治店

堀部 舞(ほりべ まい)さん

2020年株式会社ゆうちょ銀行に入社。高知店に配属され、1年間の窓口業務を経て、2年目にFC(ファイナンシャル・コンサルタント)に。2022年4月に今治店に配属。窓口を支援しながら、お客さま宅を訪ねる渉外業務も行う。プライベートでは、中学から100mハードル走を中心に陸上競技に打ち込む。2022年8月20日の四国マスターズ陸上「女子100m障害」に出場し、「女子400m」に出場した母の奈津子さんとそろって日本新記録を樹立した。

経験の浅さをチャンスと捉え、FCとしての信頼を得る

――堀部さんが就かれているFC(ファイナンシャル・コンサルタント)の仕事内容を教えてください。

堀部:お客さま一人ひとりのライフプランに合わせ、投資信託やつみたてNISA(少額投資非課税制度)などを提案して、資産運用のお手伝いをする仕事です。将来設計や抱えている不安など、プライバシーにかかわるお話をしていただくことが必要になるため、当初は緊張していたり、警戒感をお持ちだったりする方も多いです。なので、まずはリラックスした雰囲気を作ることが大切だと思っています。

堀部さんが所属するゆうちょ銀行 今治店(今治郵便局に併設)

――リラックスしていただくための工夫はありますか?

堀部:世間話や趣味、お天気など、資産運用とは無関係の話題から始めて、少しずつ雰囲気を和らげるようにしています。私がまだ若手の社員ということで、正直、お客さまから「頼りなさそうだな......」と思われている空気を感じることもありますが、それはむしろチャンス。的確な情報やアドバイスをお伝えすることで、第一印象とのギャップから、より深い信頼を得られると思っています。とはいえ、FCになってまだ2年目。先輩、上司からの助言をいただく場面も少なくありません。まだ経験が浅いうちに頼るべきところは頼り、仕事の仕方、お客さまとの接し方などを学んで、成長していきたいと考えています。

――既に結果を出されているとお聞きしています。

堀部:ありがとうございます。現在は、窓口応援も行いながら、資産運用をされているお客さまのアフターフォローや新規のお取引に向けたご提案をしていまして、投資信託やNISA受付など少しずつ結果が出てきているところです。また、先日は、郵便局の担当者を対象とする投資信託の案内方法に関する勉強会に携わりました。ほかの社員をお客さま役にして私が商品をおすすめするロールプレイだったのですが、「わかりやすく、参考になった」との反響をいただきました。

――現在抱えている課題は何でしょうか。

堀部:昨年度までは、つみたてNISAなど少額から手軽に始められる商品をおすすめすることが中心でしたが、お客さまによっては、例えば、100万円単位など、もう少し高額の資産運用を検討されている方もいらっしゃいます。金額に対する捉え方はお客さまそれぞれですが、個人的な感覚では、大きな額になるとより緊張することもあるので、経験を重ねて、FCとしての知見を広げていきたいと思っています。

入社後に陸上再開、オン・オフ双方への集中力が増した

――プライベートでは陸上競技に打ち込まれていて、2022年8月20日「四国マスターズ陸上」の「女子100m障害」において日本新記録を樹立されたとのこと。しかも同じ大会で「女子400m」に出場したお母さまの奈津子さんも日本新記録を樹立されたそうですね。陸上競技を始めた経緯を教えてください。

堀部:母、兄、いとこと、陸上競技をしている人に囲まれた環境で育ちました。陸上を始めたきっかけは、小学生のときに、ハードル競技に出場しているいとこの応援で競技場へ行き、遊びでハードルを飛んでみたら、いとこに「上手だね!」と褒められたから(笑)その後、中学で陸上部に入り、ハードル競技を中心に高校、大学と継続して打ち込んできました。

学生時代は、愛媛県大会、四国大会には出場していましたが、断続的にケガをしてしまったこともあって、それほど目立つ結果を残せていたわけではありません。社会人になってからは、コロナ禍もあり、しばらく陸上から遠ざかっていたのですが、それまで続けていた身体を動かす習慣がなくなったことで生活のバランスが取れず、少しストレスを感じていました。

――そこで陸上競技を再開されたと。

堀部:はい。陸上クラブに所属しました。再開してすぐ「走ることはやっぱり楽しい!」と実感しましたね。ただ、クラブがあるのは愛媛県の松山市なので、最初に配属された高知県、そして現在勤務している今治市でも、平日はソロで練習しています。
定時の18時15分に退社後、公園の広場に行き、身体の動き方を確認しながら60~90分間、スピードのトレーニングを中心に行っています。実際にハードルを飛ぶ練習ができるのは、週末の松山市にある競技場でのみ。平日の練習で得たイメージを確認したり、アドバイスをいただいたりしています。

――平日は仕事と練習の両立は大変ですか?

堀部:公園でのトレーニング後、20時頃には帰宅するのですが、それから夕食、洗濯、入浴などをしているとあっという間に23~24時くらいに。それでもこの生活は私に良い影響を与えてくれて、仕事とトレーニングそれぞれに集中でき、オン・オフとも充実するようになりました。

ちなみに母は4年前に陸上を再開したのですが、仕事と家事をこなしながら続け、しかも好記録を連発しているので、改めて母のすごさを実感しています。よくLINEで連絡を取り合っていて、夜遅い時間に「今、練習が終わったところ」などとメッセージをもらうと、「私も頑張らなきゃ!」と刺激をもらいますね。

――お母さまとの同時日本新記録樹立は、狙っていたのですか?

堀部:はい。母は2022年の春から私と同じクラブに入り、いっしょに練習を重ねて着実にタイムを伸ばしていたので「獲れるかもしれないね」と。「母娘で日本新」ということで地元紙にも紹介され、四国のほかの店舗からもたくさん連絡をいただきました。何より周りの方々が喜んでくれていたことが嬉しく、続けてきてよかったと思いました。

週末にトラックで行うクラブでのトレーニング。平日のソロ練習での気づきを確認しながら走る。母の奈津子さんとシューズのカラーをそろえている

自分を振り返り、改善し続けることで未来が輝く

――マスターズ陸上でのハードル走の日本新記録樹立。この経験が仕事に活かされる側面はあるでしょうか?

堀部:仕事とハードル走で考えると、前者はお客さまとのコミュニケーションが基本である一方、後者は完全な個人競技。両者に関係はなさそうなのですが、共通点があって、それは「自己分析が大切」ということです。

前傾姿勢を保ち、リズミカルにハードルをクリアしていく(先頭が堀部さん)

――具体的にはどんな分析なのでしょうか?

堀部:FCの仕事は振り返りが欠かせません。お客さまとの話の内容を思い返すと「アプローチの仕方をこうすればよかった、あの部分はもっと深掘りすべきだった」などと必ず反省点が出てきます。
なぜ適切なアプローチができなかったのか、どうすればよりお客さまのご意向に沿ったご提案ができたのかを自己分析して理由を明確にすると、以降のお客さまとのお話に、確実に活かすことができるんです。

そして、この思考方法は陸上でも同じように有効です。ハードル走のトレーニングでは、走っている最中に、腕のバランス、後ろ脚の膝の曲げ方、ハードル間のテンポ、踏み切る位置など、多様なポイントを意識しながら走っています。そして終了後にそれらを振り返り、改善点を見つけてまた走る......というサイクルを回しています。これを繰り返すことで、コンマ何秒単位でタイムが伸びていく。実際、その後の大会では、日本記録をさらに更新することができました。

――その都度、自分を振り返り、改善点を見つける作業を継続することで、未来がいっそう輝くわけですね。では最後に、オンとオフ両面の目標を教えてください。

堀部:仕事ではFCとして、店舗を引っ張っていく存在になりたいと思っています。お客さまから「あなたに、あの商品を提案してもらってよかった」と言われる回数をどんどん増やしていきたいですね。

陸上では、学生時代のベストタイムを上回ることです。社会人の競技は、外部からの強制力がなく、すべては自分次第ですし、トレーニング時間も十分には取れません。それでも、私にはよき練習仲間であり、ライバルでもある母がいます。お互いに切磋琢磨しながらタイムを追求しつつ、いっしょに走ることの楽しさを長く味わっていきたいと考えています。

※撮影時のみマスクを外しています。

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