私のオンとオフ スイッチインタビュー「走る前の準備が何より大切」鈴鹿8耐に出場した郵便局社員が語る、オンとオフの共通点

INDEX

全国24,000ある郵便局、そして日本郵政グループの社員はおよそ40万人。この企画では、それぞれの立場で仕事に取り組む社員の姿勢と知られざるプライベートでの横顔、そんなオンとオフの両面で活躍する社員の魅力ある個性を掘り下げていきます。今回お話を聞いたのは、三重県桑名市にある桑名郵便局の集配営業部に勤務する可部谷 雄矢(かべたに ゆうや)さん。二輪車(以降、バイク)や四輪車に乗って集荷や配達業務を行いながら、2022年には世界最高峰のオートバイ耐久レース「FIM世界耐久選手権 "コカ·コーラ" 鈴鹿8時間耐久ロードレース(以降、鈴鹿8耐)」に出場するレーサーとしての顔を持ち合わせます。一般公道とサーキットという、まったく違うフィールドをバイクで走る可部谷さんが感じる、オンとオフの意外な共通点とは?

桑名郵便局 集配営業部

可部谷 雄矢(かべたに ゆうや)さん

2015年、日本郵便株式会社に入社。プライベートでは、2019年からバイクレースに本格的に参戦。国際競技運転者許可証A(国際Aライセンス)を保有。2022年には鈴鹿8耐に初出場。

<History>

2014年 高等専門学校在学中に普通二輪免許を取得

2015年 日本郵便に入社し、桑名郵便局の集配営業部に配属となる

2019年 アマチュアの登竜門のレース(250cc)で優勝

     本格的にレースの世界へ

2020年 JSB1000クラスへ(1,000cc)へステップアップ

2022年 鈴鹿8耐に初出場

バイクに乗ることができる仕事に憧れて日本郵便に就職

──今この仕事に就こうと思ったきっかけを教えてください。

可部谷:小さいころから乗りものに興味があったのですが、工業高等専門学校在学中に普通二輪免許を取って、バイクに乗り始めました。住んでいたところが田舎だったので、日常の足として毎日のように通学や休日にツーリングを楽しんでいるうちに、バイクに乗る仕事がしたいと考え、1番に思い浮かんだのが日本郵便でした。

──普段は、どのような業務を行っていますか?

可部谷:バイクや四輪車などに乗って、集荷や配達を行うのが基本業務です。また、集荷に伺ったお客さまに切手シートやレターパックなどの販売促進活動も行っています。

──集荷や配達をするうえで、気をつけていることはありますか?

可部谷:郵便局の仕事は、その地域に暮らす方や企業とつながり、支えていくことだと思っています。皆さまが生活で使用している道路を走行して郵便物などを配達しているので、とにかく安全運転を心がけていますね。

あとは、集荷や配達、営業をどういう流れで行うかなど、一日の仕事も自分で組み立てるので、スムーズに仕事をするためには段取りが大事になってきます。前もってしっかりと準備するようにしています。

まわりにすすめられてレースに本格参戦。世界最高峰の舞台へ!

──プライベートでは2022年に3年ぶりに鈴鹿サーキットで開催された鈴鹿8耐に出場されました。

可部谷:バイクのレースは、排気量や周回数など、さまざまなカテゴリーに分かれているのですが、鈴鹿8耐は1台のバイクを2〜3人で交代しながら8時間を走りきり、順位を競う耐久レースです。これまで40回以上鈴鹿サーキットで開催された歴史ある大会なのですが、世界耐久選手権のシリーズに組み込まれていて、日本だけではなく世界のトップチームが参戦しています。

一定条件をクリアしたレースで好成績を残し、ライセンスを取得しないとエントリーすらできません。世界レベルの選手と走行できる唯一のロードレースなので、レーシングライダーとして、夢の場所なんです。

可部谷さんがレースで乗るのは、市販されているバイクをレース用にチューニングしたもの。最高時速は300kmに迫るそう

──真夏の炎天下のなかで8時間のレース......、かなり過酷な環境ですね。

可部谷:普段参加しているレースはサーキットを12〜14周を周回するものが多いのですが、鈴鹿8耐では普段の倍以上を走らなければいけません。エンジンもかなり高温になるので、日中にランニングをして炎天下のなかで心拍数を整えたり、サウナに通って暑さに体を順応したりといったトレーニングをして準備してきました。その効果なのか、仕事でも、夏の配達業務ではいつもより身体が楽だったような気がします(笑)。

──そもそも可部谷さんがバイクレースの世界に入ったきっかけは何だったのでしょうか?

可部谷:もともとは、私の住んでいたところが田舎だったので、通学用として免許を取得したのですが、たまたま学校の先輩が参加していたバイクレースに観戦に行ってみたらとても面白そうで、「自分も挑戦してみよう!」と思ったことがきっかけです。

──モータースポーツの魅力とは一体どこにありますか?

可部谷:コンマ何秒を短縮するために集中力を高めて神経を張り巡らせる、日常生活では味わえない感覚です。そのために時速300km近い速度で、持てる実力や体力をフルに発揮する必要があります。そして、結果が数字となって残るところも、魅力の一つですね。

──レースを始めた当時から、トップカテゴリーを目指していましたか?

可部谷:本格的にトップカテゴリーを意識し始めたのは、3年前からです。アマチュアレースの登竜門のようなカテゴリーがあるのですが、そこでチャンピオンを獲得した時に、いろいろな方に声をかけていただいて、今のチームでレース活動できる環境を作ることができました。

それまでは、レースに参加するバイクは自分の手でメンテナンスしていましたが、今はチームのメカニックが自分のために調整してくれます。サーキットでもサポートしてくれる方やファンとのコミュニケーションを取る場面が多くなりました。

可部谷さんがレースで獲得してきたトロフィー。本格的なレース参戦から約3年での国際レース出場は、異例とも言えるスピード

仕事もバイクレースも、本番前の準備が重要

──鈴鹿8耐というビッグレースに出場して世界のトップレベルのなかに身を置くことで、肌で感じたものはありますか?

可部谷:2022年は、8月2日の火曜日から8月7日の日曜日に行われた決勝レースまで全6日間開催されました。国内外のトップチームの動き方をみていると、最短ルートへのライン取りや、アクセルワーク、サスペンションの動きを感じ取りながらの体重移動といった些細なことでも、すべて細かく丁寧な仕事をしていると思いました。サーキットを走行する際も、その些細なことが積み重なって、結果につながっていくことを実感しました。

──鈴鹿8耐を経験したことで、郵便局での仕事にも変化はありましたか?

可部谷:何ごとも準備が大切だということを、実感することができましたね。レースに参加する前の体力作りはもちろん、自分の体もバイクもメンテナンスをしっかり行うことで、いいパフォーマンスにつながります。
同じように、仕事でも配達に出発する前に、郵便物を配達する順番に並べる工程があるのですが、スピーディーかつ間違いがないよう確認しながら並べることで、効率よく正確に配達ができます。また、路面の状況などを把握し、より安全に運転するということの大切さも再確認しました。

──仕事とレース参戦を両立するために行っていることはありますか?

可部谷:レースは基本的に週末に開催されるのですが、木曜日や金曜日に事前にサーキットに入って、テスト走行や予選が行われることが多いんです。だから、レースに参戦する時は、上司や同僚の協力のもと、スケジュールを調整させてもらっています。

──身近に理解者がいることは心強いですね。周囲の理解を得るために心がけていることはありますか?

可部谷:やはり、仕事もレースも、自分が楽しんで、本気で取り組んでいくことが大事だと思います。そういった私の姿を見て応援してくれる方々がいるからこそ、仕事もレースもやり遂げることができます。お客さまとの会話の中で「普段は赤いバイクで配達していますが、バイクレースにも出ています!」と話すと、活躍を楽しみにしてくれることも多いです。また、職場のつながりで鈴鹿8耐に応援にきてくださった方もいて、本当にありがたいですね。

──最後に、今後取り組んでいきたいことをオンとオフの両面で教えてください。

可部谷:仕事では、バイクレースで身に着けた知識をもとに、メンテナンス面などでも貢献できたらと思います。
そしてレースでは、まずは来年、鈴鹿8耐にもう一度参戦して、応援してくださっている方、サポートいただいている方に喜んでもらえる結果を残したいです。
さらに、モータースポーツやバイクを身近に感じて、楽しさを知ってもらう取り組みなどにも携わっていけたらうれしいですね。

「まずは国内のトップカテゴリーへシリーズ参戦し、来年度の鈴鹿8耐で成績アップを目指していきたい」と話す可部谷さん。今後の活動からも目が離せません!

※撮影時のみマスクを外しています。

私のオンとオフ スイッチインタビュー 連載記事一覧はこちら

            

#HOT TAG

カテゴリ

おすすめ記事