地域の高齢者とそのご家族に安心を届ける。自治体とタッグで取り組むスマートスピーカーを活用した郵便局のみまもりサービス

長野県の南部に位置する、下伊那郡大鹿村(しもいなぐんおおしかむら)。人口1,023人のうち約半数を65歳以上の高齢者が占めています(※)。高齢化率が45.5%となっている大鹿村で、2022年から「スマートスピーカーを活用した郵便局のみまもりサービス」がスタートしました。高齢者の孤立や孤独が課題となるなか、どのような効果が期待されているのでしょうか。実際に使っている方の様子とともに紹介します。

※国勢調査(2020年)より

スマートスピーカーを活用した郵便局のみまもりサービス 大鹿村(長野県)の導入事例はこちら

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離れていても家族とつながれる。利用者からは「にぎやかで楽しい」の声

91歳の菅沼 信夫(すがぬま のぶお)さんは、長野県大鹿村で妻の政子(まさこ)さんと二人暮らしをしています。長女は遠方に住んでおり、長男は地元に住んでいるもののコロナ禍ということもあり、なかなかご家族と直接会えない状況です。

そんな菅沼さんの楽しみは、二人のお子さんから定期的に届く写真。それをチェックするのは、ディスプレイ付きのスマートスピーカーです。ご家族からの写真を受信するのは、日本郵便が提供するみまもりのアプリケーション。写真やメッセージ、動画が届くと、日本郵便のキャラクター「ぽすくま」がそれを通知してくれます。

日本郵便のキャラクター ぽすくま
居間にスマートスピーカーを置いて活用している菅沼 信夫さんと妻の政子さん

【ぽすくまとのやりとり】

ぽすくま:信夫さん、メッセージが届いています。読みますか。

菅沼さん:はい。

ぽすくま:写真です。

息子さん(章夫さん)からお孫さんの写真が届きました

このように会話形式で操作ができ、離れた家族とコミュニケーションが取れます。

ほかにも菅沼さんは起床後に、スマートスピーカーからの「よく眠れましたか?」、「体調はいかがですか?」などの声がけに対し、「はい!」と元気よく答えます。また、朝・昼・夜の食後に「お薬は飲みましたか?」と服薬を確認する機能も活用中です。こうした菅沼さんの反応を、家族や自治体で確認できるのがこのサービスの特徴。使い心地を伺ったところ、菅沼さんは「にぎやかでいいなって。こういうふうに写真が見られていいなって」と笑顔で話します。

スマートスピーカーを使って天気予報を聞いたり、演歌を楽しんだりもしているそう

従来の郵便局のみまもりサービスがICTの力でさらに進化

日本郵便は、全国にある郵便局ネットワークを活かし、2017年から郵便局社員が直接ご自宅に訪問する形での郵便局のみまもりサービスを提供してきました。そして、2019年からはICT技術を取り入れた双方向コミュニケーションを実現するため、スマートスピーカーを活用した郵便局のみまもりサービスの実証実験を開始。2022年1月から、大鹿村で本格的にサービスの提供を始めました。

●スマートスピーカーを活用した郵便局のみまもりサービスのイメージ

【サービスを活用してできること】

・生活状況(体調、食事、睡眠、服薬など)の確認

・アプリケーションを通じた生活状況の確認(ご家族向け)

・自治体などからのお知らせ通知

・写真、動画の受信

・ビデオ通話 など

日本郵便の担当者である、地方創生推進部 課長の工藤 随史(くどう ゆきひと)さんは、このサービスの提供を始めた背景について、地域における高齢者に関する課題を解決することにあると話します。

「昨今、日本では地域ごとにさまざまな課題があります。特に、高齢者の一人暮らしの世帯の増加、高齢者を支える地域の担い手不足は顕著な問題です。各自治体が抱えるこうした課題に対し何か解決策を提供できないかと考え、今回の新サービスを検討してきました。郵便局では、2017年から『郵便局のみまもりサービス』を提供してきましたが、昨今の新型コロナウイルスの感染拡大状況も踏まえ、デジタル技術を活用した非対面での新たなみまもりサービスとして『スマートスピーカーを活用した郵便局のみまもりサービス』を2022年1月から販売開始したところです。地方自治体やご家族の方は、スマートスピーカーを通じて高齢者の生活状況を把握することができます」(工藤さん)

日本郵便株式会社 地方創生推進部 課長 工藤 随史さん。1999年、日本郵便株式会社に入社。徳島県の郵便局窓口、四国支社を経て本社に異動。現在は、スマートスピーカーを活用したみまもりサービスを担当している

サービス開始にあたって、日本郵便ではスマートスピーカー内で起動するみまもりサービス専用のアプリケーションを開発。高齢者の方が毎日使っていただけるような仕組み、利用する自治体の利便性を重視した工夫を随所に施したと工藤さんは話します。

「高齢者の方のなかには、『機器は苦手』という方もいらっしゃいます。そのため、そういった方でも毎日使っていただけるよう、『スマートスピーカーから話しかける』という仕掛けを構築し、話しかける声のトーンやスピードなども時間をかけて検討しました。また、『今日は何の日』、『クイズ』、『スタンプ』などの機能も加え、日々、楽しんで使ってもらえる工夫も盛り込んでいます。自治体の方に使ってもらうことを想定しているサービスであるため、管理画面も直感的に使えるよう改良を重ねてきました」(工藤さん)

音声でつながれるのが最大のメリット。異変の早期発見にも活用

2022年1月から、全国に先駆け、このスマートスピーカーを活用した郵便局のみまもりサービスを導入した、長野県下伊那郡大鹿村。導入の背景について、大鹿村 保健福祉課 福祉係 塩澤 大樹(しおざわ だいき)さんは次のように話します。

大鹿村 保健福祉課 福祉係 塩澤 大樹さん。管理栄養士として栄養の相談や献立づくりのほか、在宅介護支援センターの介護支援専門員として活動している

「今までも、何かあったときにボタンを押していただくと役場につながる『緊急通報装置』というものはあったのですが、活用するうえで役場の人手不足などによる課題がありました。その緊急通報装置に代わるものとして、日本郵便のスマートスピーカーを活用した郵便局のみまもりサービスを導入し、運用を始めたところです。高齢者の方だと、スマートフォンやパソコンで文字を打つことに抵抗があったり、難しさを感じたりする方も少なくありませんが、スマートスピーカーであれば、声で直感的に操作を行うことができます。声でコミュニケーションが図れる、それがこのサービスを導入した最大の決め手です」(塩澤さん)

南アルプスの麓にある大鹿村は、300余年前から伝承されてきた「大鹿歌舞伎」でも知られる

このサービスを活用することで、自治体だけでなく家族の方も高齢者の生活状況を把握することができます。また、一方的に通知のみ行うのではなく、双方向でコミュニケーションが図れる点も特徴の一つです。このように高齢者の孤立・孤独を防ぎ、早期に異変に気づいて迅速な対応ができる点にメリットがあると塩澤さんは話します。

「何かお知らせが来たら自分で回答したり、話したりするという部分、そして音が鳴ったり画面に通知してくれたりするのが大きなメリットだと感じています。あとは、ビデオ通話でご家族とつながれる点も大きな利点の一つです。回答や反応がなければ『大丈夫かな?』という気づくきっかけになりますし、コロナ禍であっても遠方の人と話ができる。ご家族としても『どうしているだろう』という心配の解消につながると思っています。本格的に導入する前に実証実験を行ったのですが、その際『そんなのはできん』という声もありました。でも、実際に使っていただくと、意外と好反応だったんです。職員がお知らせを送ると『見たよ』とお話ししてくださる方もいて、拒否感が少なくなっていった印象です」(塩澤さん)

企業や自治体と協力し合い、一人でも多くの高齢者を支える社会に

日本郵便の工藤さんは、今後、利用者の声を反映させながら、高齢者の方がさらに安心して楽しく毎日を送れるサービスに育てていきたいと話します。

「私たちが目指すところは、高齢者の方の笑顔です。その笑顔を一つでも増やすために、実際にご利用いただく高齢者の方、そして自治体の方の声を聞きながら、よりよいサービスに発展させていきたいです。高齢者の方が安心して、そして楽しみながら毎日を送るためのお手伝いができればと思っています」(工藤さん)

また、今後の展開として、より多くの人で高齢者を支える仕組みを構築していきたいとも話します。

「今は自治体の方を中心にご案内をさせていただいておりますが、これからは法人の方や個人の方にも知っていただき、一人でも多くの方で高齢者の方を支えるようなサービスに育てていきたいです。」(工藤さん)

距離が離れていても、家族や自治体の方とつながれる。そして何より、高齢者の方とその家族が安心感を得ることができる、日本郵便の進化したみまもりサービス。社会全体で高齢者を支えていこうとするこの取り組みが、加速する高齢化社会の一助となるサービスとして育っていくことが期待されます。

「郵便局のみまもりサービス」の詳細はこちら

※撮影時のみマスクを外しています。

            

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