私のオンとオフ スイッチインタビュー「将棋の経験が仕事にも活きている」アマ名人戦4連覇の郵便局社員が語る、オン×オフ両立のヒント

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全国24,000ある郵便局、そして日本郵政グループの社員はおよそ40万人。この企画では、それぞれの立場で仕事に取り組む社員の姿勢と知られざるプライベートでの横顔、そんなオンとオフの両面で活躍する社員の魅力ある個性を掘り下げていきます。今回お話を聞いたのは、北海道江別市の江別見晴台郵便局に勤務する横山 大樹(よこやま だいき)さん。地域の人に愛される郵便局員として働きながら、趣味の将棋では朝日アマチュア将棋名人戦で4連覇を達成(2021年)するほどの実力者。横山さんのお話からは、郵便局の仕事と将棋を指すことという、オンとオフの意外な関係性とその魅力的な人柄が見えてきました。

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江別見晴台郵便局

横山 大樹(よこやま だいき)さん

北海道札幌市出身、31歳(2022年4月現在)。

日常会話からお客さまの要望が見えてくる

――横山さんのこれまでの経歴を教えていただけますか。

横山:地域の方にとって欠かせない存在である郵便局で働きたいと思い、2013年に入社しました。その後、道内で5つの郵便局での勤務を経て、今年(2022年)の4月から江別見晴台郵便局で働いています。業務は一貫して、貯金・保険の窓口を担当しています。

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江別見晴台郵便局の外観

――ずっと北海道で働かれているということですが、現在の郵便局はどのような環境でしょうか。

横山:局員が全員で6名のアットホームな環境です。江別市の中心地から離れているという地域柄、お客さまは高齢の方が多いですね。局員とお客さまの距離感がとても近いというのも特徴で、郵便局に来たらまずは親しい局員のところに行くという方もいらっしゃいます。

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横山さんと江別見晴台郵便局の皆さん
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郵便局内で勤務中の横山さん

――横山さんはお客さまとどのような関係を築かれていますか?

横山:話をするのが好きなお客さまが多いので、窓口の対応をしながらも自然と会話が弾みます。実は、そういった何気ない雑談のなかから、お客さまがどういうサービスや商品をお求めなのか見えてきたりするので、お客さまとの日常会話はとても大事なことだと思っています。

――ほかに仕事をする中で、常に心がけていることはありますか。

横山:やはり郵便局は地域の方々にとって身近な場所だと思いますので、利用してよかったなと思ってもらえるような環境づくり、雰囲気づくりは常に意識しています。何か一つでもお客さまのためになれることはないかといつも考えていますし、だからこそお客さまから感謝のことばなどをいただけたときは、特にうれしく感じますね。

目標はアマ名人戦で連覇の新記録を打ち立てること

――プライベートでは2021年に朝日新聞社主催「朝日アマチュア将棋名人戦」で4連覇を果たされたそうですね。......あらためて教えていただけますか。

横山:新聞社が主催しているアマチュア大会は全部で6つあり、そのなかの一つが「朝日アマチュア将棋名人戦」です。特徴としては、6大会のなかで唯一タイトルマッチ形式が採用されていまして、各地域の予選を勝ち抜いた32人による全国大会の後、その優勝者と朝日アマ名人(前回の優勝者)との三番勝負が行われます。

――タイトル防衛戦、かなり盛り上がりそうですね。

横山:はい。注目度の高い大会です。また、朝日アマ名人と全国大会ベスト8以上の人は、プロ公式戦の朝日杯将棋オープン戦の出場権を得ることもできます。普段、プロの方と対戦する機会はあまりありませんし、やはりその世界で食べている方々なわけですから、対局を通じて必ず何かしらの発見があります。朝日アマはほかの大会と比べると出場権を得られる枠が大きいので、アマチュアにとっては本当に夢のある大会ですね。

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――そうなると、アマチュアとはいえど相当な強者が集まってくる大会なのでしょうか。

横山:そうですね。私も初めて優勝するまでに20年かかりました。また名人戦ともなると、全国大会を勝ち抜いた強者との決戦となるため、毎回厳しい戦いになります。

――名人としてのプレッシャーも大きそうですし、連覇は相当難しそうですね。

横山:初優勝、初めての防衛と、毎回特別な想いを持って挑みましたが、5連覇に挑む今年は特に気合が入っています。歴代では5連覇した方が2名いらっしゃるのですが、まずはその記録に並びたい。さらにはその記録を抜き去りたいという想いが、今はとても強いです。

※インタビューは2022年4月に実施しています。同年6月開催の第44期朝日アマチュア将棋名人戦にて、見事5連覇を達成しました。

将棋を通じた世代間交流の経験が郵便局の仕事にも活きている

――そもそも横山さんが将棋を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

横山:実家に祖父の代から使っている将棋セットがあったのですが、家で手がかからず遊べるものを、ということで父が私と兄に将棋を教えたのが始まりでした。私が5歳の時です。ほどなくして、父と外出している時にたまたま街で将棋道場(お金を払って自由に将棋が楽しめる場所)を見かけて「入ってみようか」と。今まで兄しか対戦相手がいなかったので、そこからさまざまな年代の方と対戦することで世界が広がり、将棋の楽しさに目覚めました。当時は一人で地下鉄に乗って毎週のように将棋道場に通っていましたね。

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――将棋のどういった部分に魅了されましたか。

横山:ゲームとしての魅力は、同じ戦力(手持ちの駒)で、平等に戦えること。またゲームとしての「結論」が出ていないことです。将棋は戦い方のセオリーが日々変わるゲームだとも言われていまして、だからこそ「自由」と言いますか、自分の好きなように戦略を立てることができる。それが一番の魅力だと思います。

――「平等」というのはいいですね。極端な話、ルールさえ理解していれば、年の差も関係なく、互角に対戦できますしね。

横山:まさに世代の垣根を越えられるというのも大きな魅力ですね。それこそ将棋道場に行くと、小学生から80歳ぐらいの方まで、本当に幅広い年齢層の方々がいるので、将棋を通じていろいろな人と交流することができました。この時の経験が、現在の仕事にも活かされているように感じます。

――先ほど、郵便局の窓口ではお客さまとの会話が大事というお話をされていましたね。

横山:そうですね。もともと私は口下手で、人見知りの気もあったのですが、今のようにお客さまと自然に日常会話ができるようになったのも、将棋を通じて本当に老若男女関係なくさまざまな世代や地域の方々と交流する機会があったからこそだと思います。

――趣味の将棋がお仕事にも良い影響を与えているということですね。

横山:はい。また逆に将棋の調子が悪くて落ち込んでしまった時は、仕事に打ち込むことで気持ちの切り替えができるので、自分のなかでは「オン」と「オフ」がお互いに良い影響を与えていると思います。

郵便局を起点に将棋の楽しさを広めていきたい

――趣味とお仕事を両立する上で、何か工夫されていることはありますか。

横山:どんなに時間がなくても、疲れている日でも、練習時間をゼロにはしないということだけは心がけています。将棋にはすぐ上達する練習方法というものはなく、継続がすべてなんです。集中力を要するゲームなので、疲労感があるとつい練習をサボりたくもなりますが、一回休むと癖になってしまうので、1日の練習時間を絶対にゼロにしないよう気をつけています。

――オンとオフの両立には理解者を増やすことも大切かと思います。周囲の理解を得るために、何かされていることはありますか。

横山:将棋というゲームの良さを広められる機会があれば、積極的に参加するようにしています。将棋の楽しさを知っていただくことで、私が将棋をしている理由も理解していただけると思うからです。実際に2017年には、当別郵便局(石狩郡当別町)で地域の子どもたちを対象にした「こども将棋教室」を開催しました。

――どういった経緯で開催されたのですか。

横山:当時勤務していた江別大麻郵便局の局長から、将棋という一芸を使って地域貢献のために何かしてみないか、と声をかけていただいたのがきっかけでした。当別町は祖父母と一緒に住んでいる子どもが多い地域です。そのため自宅に将棋セットがそろっている家庭が多く、また当時は藤井 聡太(ふじい そうた)さんの影響で将棋ブームとなっていたので、世代を超えて手軽に遊べるゲームとして将棋を知ってもらうきっかけになればと思い、教室を企画しました。結果的に子どもたちや親御さんにも大変喜んでいただけました。

――最後にオンとオフ、両面で取り組んでいきたいことを教えてください。

横山:仕事に関しては、まだまだ未熟ではありますが、目の前のことを一生懸命やりながら、一つずつ経験を積み、少しでもお客さまのお役に立てるように頑張りたいなと思っています。将棋の方は、これから少しずつコロナ禍で中止となっていた将棋の大会も再開していくと思いますので、今まで以上の結果を残しつつ、仕事と趣味、両方に良い影響が生まれるように将棋を広める活動に取り組んでいきたいですね。

※撮影時のみマスクを外しています。

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