#みんなで作るみんなの郵便局 +エコ郵便局 Vol.2 みんなで作った焼杉を外壁に使った丸山郵便局が完成!

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「+エコ郵便局(ぷらすエコゆうびんきょく)」の第1号として生まれ変わる丸山郵便局(千葉県南房総市)。子どもたちといっしょに製作した焼杉を使用した局舎が、いよいよ完成しました! 地域の皆さんへお披露目した時の様子とともに紹介します。

みんなの想いが実現した、昨秋の焼杉ワークショップ

循環型資源の有効活用や再生可能エネルギーの導入を行う、環境に配慮した「+エコ郵便局」。その第1号である丸山郵便局では、郵便局として初めてCLT(※)を使用することで循環型資源を効率的に利用し、林業の活性化にも貢献します。さらに、丸山郵便局は西日本の伝統的な工法である焼杉を壁材に採用しました。

「焼杉は、表面の炭化層が防腐・防蟻の役割を果たして、非常に耐久性があるのが特徴です」と話すのは、焼杉を提案し、局舎の設計を担当した施設部の冨永 初穂(とみなが はつほ)さんです。

日本郵政株式会社 施設部 冨永 初穂さん(一級建築士)

「シンプルな木の板なので比較的安価ですし、将来的には貼り替えることもできる循環型資源の建材です。丸山郵便局では千葉県産材を使っているので地産地消にも役立ちます」(冨永さん)

市販の焼杉を入手する方法もありましたが、丸山郵便局局長である小池 栄夫(こいけ ひでお)さんと打ち合わせを重ねるなかで、杉の板を自分たちで焼いて焼杉を作ることにしました。

丸山郵便局局長 小池 栄夫さん

「これまで郵便局の職場体験や手紙の書き方教室などを通じて、地元の子どもたちとのかかわりを続けてきました。日本で初めての+エコ郵便局だからこそ、地域の人たちと一緒に焼杉を作りたいという想いがあったんです」(小池さん)

2021年11月にはワークショップを開催し、地域の皆さんと丸山郵便局社員・地元郵便局の局長たちが一丸となって焼杉を焼き上げました。

「焼杉は経年変化も楽しむことができますし、何より地域の皆さんと一緒に作り上げたことで、地域とともにある郵便局の建築として最適な材料になったと思います」(冨永さん)

前回の焼杉製作ワークショップの様子はこちら

建設中から注目を集める、新しい試みの局舎

その後、ワークショップで製作した焼杉は、乾燥させてから選定を行い、保護塗料を塗った後、外壁に利用されました。

みんなで焼き上げた焼杉。裏面には子どもたちが描いたイラストや文字も。

「手作りなので木材の縮みや焼け方のムラがあったのですが、職人さんは苦労しつつもきれいに施工してくれました」(冨永さん)

一方、郵便局として初めて使用するCLTは工場から運んでクレーンで組み立てました。

※CLT(直交集成板)とは、長い板状の木材を縦横交互に張り合わせた厚型のパネル。強度や断熱性に優れ、CO2の発生を抑制できるメリットがある。

建設中の丸山郵便局。この後、屋根面には太陽光による自家発電設備が設置されます。

「最長12mの材料を組み上げて、あっという間に建物が立ち上がっていく様子は圧巻でした。建設中には、地域の皆さんが『何ができるの?』と聞いてきたり写真を撮っていかれたりして、期待されていることを感じました」(冨永さん)

南房総市からも問い合わせがあったんですよ。それだけ注目を集めていたのだと思います。」(小池さん)

ついに新局舎が完成! 内覧会では地域の皆さんから喜びの声が

2022年3月、環境に配慮した建材や設備が詰まった丸山郵便局が完成しました! ワークショップに参加した地域の皆さんに招待状を送り、移転オープン前に特別に建物のお披露目の場が設けられました。

シックな焼杉と大きなガラス面が目を引く外観。入口側に設けた2.3mもの長い庇は、CLTならでは。

「窓が大きいので局舎内がとても明るいんですよ。焼杉は黒ですが奥行きのある色で、広いガラス面とのマッチングもしゃれているなと感じます」(小池さん)

明るく温かみのある内観。皆さん、見て、触れて、新しい丸山郵便局を"体感"

CLTは、広がりを感じる天井や作り付けの家具にも使用しています。小池さんのリクエストがあり、お客さまが送り状などを座って書ける台や、荷物を置けるスペースも新たに設けました。

内覧会では、興味深そうに焼杉に触れる子どもたちの姿も見られました。

自分が焼いた杉が郵便局に使われていることを友だちに自慢したい!

今度おじいちゃんとおばあちゃんが家に遊びに来るから、郵便局に連れて行きたいです

地域の子どもたちの手で作った焼杉が使われているということで、地域のスポットになると思いました

自分たちが作ったものが使われているので、子どもの一生の思い出になります

このように、内覧会を訪れた地域の皆さんからも喜びの言葉をいただきました。

「招待状を握りしめた子どもたち、顔なじみのお客さま、予想以上に多くの方が来てくださいました。皆さんが局舎に入った瞬間、『きれいだね!』『木の感じがいいね!』という声が上がり、『おめでとう!』とも声を掛けられました。郵便局に堅いイメージを持つ方が多いようですが、『郵便局のイメージが変わるね』と言ってくださる人もいました」(小池さん)

内覧会は、冨永さんにとってもうれしい日になりました。

「設計担当として無事に建物が完成し、ホッとしています。開局前に郵便局をお披露目する機会ってなかなかないのですが、地域の皆さんに受け入れられていく様子を直接見ることができてうれしく思っています」(冨永さん)

小池さんは、環境に配慮した建材や設備が充実した局舎で働くことで新しい発見もあったようです。

「CLTを多用している空間は、木のぬくもりが感じられてとても満足しています。屋根に設置されている太陽光パネルは、直接見えないものの、お天気がいい日には『充電できているな』と感じ、環境への気づきにもなりました。改めて環境への意識も強くしていきたいですね」(小池さん)

"地域とのつながりの場"として期待される、丸山郵便局の未来

焼杉製作や内覧会以外にも、「郵便局を利用する皆さんに喜んでもらいたい」という想いから工夫した点がいくつもあります。開局してからの丸山郵便局はそんな想いをきっかけに、地域の人たちとの会話が広がっています。

丸山地区は"酪農発祥の地"と呼ばれていることからポストを白牛に変身させました。

「白牛のポストの写真を撮っている人も多いですね。『この外壁は何でできているの?』と聞かれることもあります。郵便物を出しに来る人はもちろんのこと、局舎の前を通りかかる人たちも注目してくれます。個性的なポストや局舎などをきっかけにして、地域の皆さんが立ち寄ってくれる場所になれればと思います」(小池さん)

外には大きなベンチも設置しました。
「ベンチでお茶を飲んでもらったり、ひと息ついたりしてもらえればいいですね。ベンチ前のスペースがゆったりしていますから、近い将来、カフェのようなスペースにしてもいいよね、なんて声も上がっています」(小池さん)

「そんなふうに、皆さんから新しいアイディアが出てきて、これからもっともっとよい場所になっていってくれたら、本当に設計者冥利に尽きます」と、冨永さんは笑顔を見せます。

「私たちは日本郵政グループ内の一級建築事務所として、さまざまな施設の設計をしているのですが、このような地域とともにある建物を造ることこそが私たちの原点だなと感じます。これから長い間愛される郵便局になってほしいなと思います」(冨永さん)

その想いは小池さんも変わりません。

また来てみたいと思える場所であり、地域の人たちはもちろん、南房総市へ観光に来た人にも愛されるような郵便局になりたいです」(小池さん)

内覧会に訪れた子どもたちは終始笑顔を見せていました
焼杉ワークショップに参加した子どもたちから届いたはがきにはうれしい感想が

地域の子どもたちは、やがて大人になり故郷を離れることも多いとは思いますが、『いつかは戻って住みたいところ』と、親しみを抱いてもらえる理由の一つになればと思います」(小池さん)

「+エコ郵便局」は、丸山郵便局をスタートに、2023年度までに全国各地で10局程度を建設予定です。これからも地域の人々に愛される郵便局を作っていきますので、どうぞご期待ください。

※撮影時のみマスクを外しています。

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