街とつながるJP百景 Vol.1 屋上に蜂が6万匹!? 地域と協力して養蜂を行う青葉台郵便局

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日本全国にある2万4,000もの郵便局。それぞれの郵便局の景色は、その街で働く人、暮らす人とのつながりによって作られています。本企画では、地域と協力しながら、ユニークな取り組みをして独特の景色を作りだしている郵便局をピックアップ。第1回は、「次世代交流まちづくり」のモデル地区である神奈川県横浜市青葉区にある青葉台郵便局の取り組みについて紹介します。

郵便局の屋上に、養蜂場が出現!? 地域と取り組む「ハニービープロジェクト」

青葉台郵便局は、東急田園都市線青葉台駅からほど近い場所に立地しています。

1967年に開局した青葉台郵便局
1967年に開局した青葉台郵便局。2002年から、郵便物・荷物の配達業務を青葉郵便局に移し、現在は併設するゆうちょ銀行青葉台店とともに郵便・貯金・保険を中心とした窓口サービスを提供している。

同局では2021年3月から、地域の方と協働して西洋ミツバチを飼育する「ハニービープロジェクト」を開始しました。郵便局の屋上スペースを活用し、2箱の巣箱を設置。一時期は6万匹ものミツバチが集まり、7kgほどのハチミツを採取したと言います。

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このプロジェクトの中心となったのは、青葉台郵便局と近隣にある青葉台駅前郵便局の2人の局長、さらに青葉区エリアの他の郵便局の局長や、地域の養蜂家、工務店や花屋、ボランティアの方々です。今では地域の方から「青葉台郵便局と言えばミツバチ」と認識されるほど、街を象徴する取り組みになりました。

青葉台郵便局 局長 小泉敦志さん(左)と青葉台駅前郵便局 局長で青葉台ハニービープロジェクト代表の村野浩一さん(右)。
青葉台郵便局局長の小泉 敦司(こいずみ あつし)さん(左)と青葉台駅前郵便局局長で青葉台ハニービープロジェクト代表の村野 浩一(むらの ひろかず)さん(右)。

残念ながら取材をした2021年12月には、飼育の難しさから一時的にミツバチがいなくなっていますが、引き続きプロジェクトは続けていく予定で準備を進めています。

地域の人たちもこの取り組みに対し理解を示してくれていると、発起人である青葉台駅前郵便局 局長 村野 浩一さんは話します。「多くの方が『よい取り組みをしている』と評価してくれています。このプロジェクトを始めて、地域の皆さんが理解して協力してくださったのが何よりも一番うれしかったですね」(村野さん)

青葉台郵便局 局長 小泉 敦司さんは、「はじめは社員も蜂を怖がっていたのですが、朝礼や日々のコミュニケーションのなかでミツバチについて話をしたり、採取したハチミツを配ったりしたことで、ミツバチが安全な生き物だと理解してくれて、徐々に興味を持ってくれるようになりました。また、ボランティアの方と共同作業をするよい機会となり、今までと違うかたちでのコミュニケーションが生まれたと感じています」(小泉さん)

横浜美術大学と連携して作成した青葉台郵便局の壁画。
横浜美術大学と連携して作成した青葉台郵便局の壁画。緑豊かな青葉台でたくさんの笑顔が咲くように、花とミツバチがデザインされている。

青葉台駅前郵便局の局長が発起人となり、2021年3月から本格始動!

もともと村野さんは「青葉台の街に花と緑を増やしたい」との想いを持っていたものの、その具体的な手段を模索していたと言います。そんなとき、日本郵便のある社員から「養蜂をやりたい」と話があり、「それなら空いている、青葉台郵便局の屋上のスペースが活用できるのではないか」と、始めることを決意しました。

その後、青葉区役所からの紹介で、区内で養蜂を行っている方を紹介してもらうと、一から養蜂の技術を学んでいったそうです。

「青葉区役所から紹介してもらった養蜂に詳しい方は、青葉台郵便局のすぐ近くにお住まいで、さらに驚いたことに電気技術士さんとしてこの建物のメンテナンスをしてくださっている方だったんです。偶然ではありますが、郵便局の構造をよく理解されていたため、話がスムーズに進みました」と小泉さん。

「『そもそも屋上のスペースを使っていいものか』という部分が大きな壁でした。安全面の確保を最優先するために、地域の工務店にご協力いただき、柵を設置したり耐荷重を計算してもらったりと、養蜂場所として活用できる状態にすることに一番苦労しましたね」と村野さんは振り返ります。

地域のスペシャリストやボランティアたちの協力のもと、青葉台郵便局の屋上を養蜂のための空間に改造。

さまざまな知識や知見を持った地域の人たちと出会い、協力をあおぎながら青葉台ハニービープロジェクトはスピーディーに展開していきました。

西洋ミツバチの採蜜会を開催! 養蜂活動に興味のある街の人との触れ合い

2021年3月に養蜂を開始して以来、順調にミツバチの数が増え、7月と9月には「採蜜会」を実施できるほどになりました。

初めての試みとなった7月の採蜜会には、エリアの局長や社員、地域の方が20名ほど参加し、実際にハチミツの採取を体験。その場で実際にハチミツを味わってもらい、これからの養蜂をどう行っていくかを一緒に考える場になりました。

取れたハチミツは「地産地消したい」との想いから、社員やボランティアの方などに配られたほか、オリジナルスイーツや地元の畑で取れた小麦から作られるビールに使用したりして販売。いずれも完売してしまうほど大盛況でした。

採蜜されたハチミツが使われた、限定200本で販売された「Aoba Beer 横浜市青葉区産はちみつとこむぎのエール」と、郵便局でカタログ販売されたスイーツ「沁(しみ)フィナンシェ」。
採取したハチミツが使われた、限定200本で販売された「Aoba Beer 横浜市青葉区産はちみつとこむぎのエール」と、郵便局でカタログ販売されたスイーツ「沁(しみ)フィナンシェ」。

続く9月の採蜜会には、地元の日本女子サッカーリーグ「日体大FIELDS横浜(なでしこ1部)」の選手と、そのサポーターたちが参加。採取したハチミツは、横浜市役所2階のTSUBAKI食堂で限定販売された「横浜18区丼(青葉区丼:アスリート丼)」にも使用されました。

地域のボランティアの方のなかには、養蜂経験者や知識豊富な方が多く、とても心強い存在でした。実際に採蜜をしていただいたことで、さらに皆さんが協力的になってくれたと感じています」と村野さん。

集合巣箱作成

郵便局が、地域の方から「頼られる存在」へ

青葉台郵便局含め、青葉区エリアの郵便局では、「ハニービープロジェクト」以外にも、地域の方との交流を活性化するための取り組みを積極的に行っています。

例えば、「日体大FIELDS横浜」の選手とともに、小学校でサッカー教室を行うのと同時に、子どもたちに選手たちへのお礼の手紙を書く「手紙の書き方教室」を開催し、好評を得ています。

2021年7月には、日本郵便から青葉台郵便局の2階・3階を借り受けている東急株式会社が当該フロアをリノベーションし、コミュニティ&コワーキングラウンジ「スプラス青葉台」をオープン。東急田園都市線沿線エリアにおける郊外住宅地再生の取り組み「次世代郊外まちづくり」の一環として、横浜市と協力して東急株式会社が立ち上げました。

「実は、過去に1年ほど地域の方に郵便局のスペースを貸し出していた時期があるんです。そのとき、地域の方に大変喜ばれました。今回も、青葉台郵便局を地域のコミュニティの拠点にしてほしいという想いがあり、空き空間を活用していただくことになりました。まだまだ認知度は低いですが、これから街づくりの拠点となり、養蜂をはじめとした私たちのプロジェクトへの参画も呼びかけられるような場になってほしいと思っています」と村野さんは話します。

青葉台郵便局では今後、小学校での金融教室や、日体大FIELDS横浜とのコラボレーションにも力を入れていく予定です。小泉さんは「青葉台郵便局は、街のランドーマークとしてはもちろん、『頼られる存在』でもありたいと考えています。先日も、地域の保育園からの依頼を受け、防犯訓練を実施しました。『怖いことがあったら、郵便局に来て頼ってほしい』と子どもたちに伝えています。そんなふうに、地域の方の困りごとを気軽に相談できる場所として、地域の方とともに、この街をよりよくしていきたいです」と話します。

※撮影時のみマスクを外しています

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