私のオンとオフ スイッチインタビュー 内部監査と野球審判員を両立するプロフェッショナル

私のオンとオフ スイッチインタビュー 内部監査と野球審判員を両立するプロフェッショナル

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約24,000ある郵便局をはじめ、全国で働く日本郵政グループの社員。この企画では、それぞれの立場で仕事に取り組む社員の姿勢と知られざるプライベートでの横顔、そんなオンとオフの両面で活躍する社員の魅力ある個性を掘り下げていきます。今回話を聞いたのは、日本郵政株式会社 内部監査部に勤める美濃 正隆(みの まさたか)さんです。平日は仕事に打ち込みながら、休日は野球の審判員として日本、ときに世界の球場を駆けまわる美濃さん。その活躍の様子とオンとオフの共通点に迫ります。

美濃 正隆(みの まさたか)さん

日本郵政株式会社 内部監査部

美濃 正隆(みの まさたか)さん

1999年、当時の郵政省へ入省。郵便局での貯金外務職員などを経て、2021年より現職。座右の銘は「公平、公正、フェアプレイ」。

自ら監査の仕事を志願

――美濃さんはいつから内部監査の仕事をされているのか教えてください。

美濃:採用されてから数年は、郵便局の貯金課の外務職員として働いていたのですが、自分の手でよりよい組織をつくっていく仕事がしたいと思い、当時、特別司法警察職員にあたる「郵政監察官」という職があったので、そうした仕事があるなら私もと試験を受け、2006年に合格したことが始まりです。

――内部監査部の業務や役割について教えていただけますか。

美濃:内部監査は、客観的な検証に基づく独立的な評価と、経営に資する助言を行うことにより、日本郵政グループの業務運営に価値を付加し、また改善することを目的としています。日本郵政グループ全体の「PDCAサイクル」が有効に機能しているかを第三者的な立場で検証・評価し、経営陣や業務執行部門に有用な助言などを行うことで、業務目標の達成や業務の効率化などに貢献するのが、内部監査の役割です。

――他業種での内部監査と比べたときの違いはありますか?

美濃:日本郵政グループでは、郵便・物流、銀行、保険といったさまざまな事業を行っていますので、監査においてもそれぞれの事業に関する専門知識が求められるとともに、業種を越えて幅広く見る能力も要求されます。

――現在の美濃さんのお仕事について教えてください。

美濃:会社の内部監査計画の策定や日本郵政グループ各社の内部監査活動状況の評価、監督官庁対応などを行っています。2023年8月からは日本郵政グループ全体の内部監査の高度化に向けた品質管理も担当しています。

――内部監査の仕事の、やりがいと難しさはなんでしょうか。

美濃:近年は内部監査の高度化によって、経営陣に気づきを与えられるような経営目線の監査が求められています。正直、ゴールのない世界です。成果を測る指標が見えにくいために達成感を得るのも難しいのですが、それでもやはり経営陣などから「皆さんの監査が経営の役に立ちました」とフィードバックをもらったときは、会社に貢献できたことが実感できてうれしいですね。難しい分、やりがいを感じる仕事です。

部内ではムードメーカーとしても活躍

日本に26名しかいないBFJ公認の国際審判員

――美濃さんは、プライベートではアマチュア野球の審判員をボランティアで行われていると伺いました。昔から野球はお好きだったんですか?

美濃:父親が野球好きだったので、私も子どものころからプロ野球を見たり、野球で遊んだりはしていましたね。中学、高校の部活も野球部でした。

――ポジションはどこでしたか?

美濃:それが、レギュラーになれなかったんですよ(笑)。部活の試合では、ベンチ入りできなかった選手が審判員をすることが多かったので、そのころから審判員は少しやっていましたね。普通はみんな審判員をするのを嫌がるんですが、私は、どうせ今日一日を野球部員として過ごすのなら、審判員も一生懸命やった方がいいと思うタイプでした。高校のときは、いろいろな試合をチェックして、審判員の動きを研究するなんていうことも独自にやっていましたね。

――なぜ、そこまで前向きになれたのでしょうか。

美濃:試合には出られないけど、野球部員として役割を全うしたかったんです。プレーヤーとしては活躍できないけど、審判員としてなら活躍ができる、だから練習試合でもしっかりと審判員を務めようと心に決めました。

――本格的に審判員をするようになったのはいつのことですか?

美濃:大学進学後に地元の埼玉県で軟式野球チームに入って、社会人になってからもそこで野球を続けていたのですが、地元の野球連盟の方から「審判が足りないから、やってくれないか」と誘われたことがきっかけで、連盟に登録して本格的にアマチュア野球の審判員をするようになりました。今年で19年目になります。

――野球審判員の醍醐味とはなんでしょうか。

美濃:今のはアウトか?セーフか?と、際どいプレーが起こると、観衆が私のジャッジに注目するわけです。その瞬間がたまらないですね。

ある年の都市対抗野球大会で、二塁の塁審を担当したのですが、1点差の場面で一塁走者が盗塁を仕かけたんですよ。緊迫した試合展開のなかでの際どいプレーだったので、東京ドームが一瞬静寂に包まれました。確かに際どかったですけど、私の目にははっきり映っていた。一呼吸置いて、私が「アウト!」とジャッジを下すと、ドームを揺らすぐらいの歓声が起きました。「ああ、自分はこの瞬間を目の当たりにするために審判員をやっていたんだな」と、震える体験でしたね。

2022年の都市対抗野球大会で球審を務めた美濃さん(右から2番目)

――BFJ公認の国際審判員のライセンスもお持ちだと聞きましたが、これはどういうライセンスなのでしょうか。

美濃:BFJ(一般財団法人全日本野球協会)というアマチュア野球の国内競技連盟があり、そこで発行されている公認審判員のライセンスのことです。ライセンスは3級、2級、1級、国際審判員と種別が分かれていて、国際審判員の資格保有者になると、国際大会で審判員を務めることができます。全国に約3万人のアマチュア野球審判員がいるなかで、国際審判員の資格保有者は26名しかいません(2023年10月時点)。

――国際審判員として活動するなかで、印象深かった出来事はありますか?

美濃:私にとって初めての国際大会となった、2018年のU18アジア選手権でのことです。試合開始前に両チームが整列して国歌を斉唱するのですが、インドネシアの選手たちが国旗に向かって全力で国歌斉唱をする姿が印象に残っていて、忘れられないですね。インドネシアはまだまだ野球を行う環境が十分ではない国でしたので、そうした環境のなかで、国や家族の期待を背負いながら試合に臨む彼らの熱心さに、思わず目頭が熱くなりました。

当時のことを熱く語る美濃さん。目には涙を浮かべられていました

監査も審判も、人に納得してもらえる伝え方が大事

――内部監査部の仕事と野球審判員は、どのように両立されていますか?

美濃:審判員はボランティアなので、基本的には仕事のない休日に行っているのですが、社会人野球や大学野球などの公式戦は平日に行われることも多いので、日程調整が難しいですね。2023年に中国で開催されたアジア競技大会に参加したときも、10日間の休暇をいただきました。職場の理解がないとできないことなので、とても感謝しています。

2023年のアジア競技大会の決勝戦でも球審を務めた(左から3番目が美濃さん)
際どいプレーに対しても瞬時に正確な判断が求められる

――内部監査部の仕事と野球審判員で、共通する部分や、それぞれの経験が活きている部分はありますか?

美濃:人にモノを伝えるときの姿勢やスキルですかね。監査提言をする際には、客観性を持つ裏付けを提示したり、整合性のとれた説明をしたりと、相手に理解してもらえるように話をしないといけません。それは審判員も同じです。際どいプレーの判定に対して疑義を申し立てられたとき、チームの監督にはどう説明すれば納得してもらえるか、そもそも疑義を持たれないよう、説得力のある判定をどのように行えばよいかといったことなどを常に考えています。

――オンとオフの切り替えで意識していることはありますか。

美濃:性格的に引きずらないタイプなので(笑)、平日にいろいろと悩みながら仕事をしていても金曜日の夜にはすっぱり忘れて、土日に審判をして反省点があっても、また切り替えて月曜日から仕事に臨む。後を引きずらずに、次、次という感じですね。

――最後に、内部監査部の仕事、野球審判員の活動、それぞれの展望を教えてください。

美濃:仕事に関しては、内部監査業務を通じてグループ経営に貢献できるように取り組んでいきたいと考えています。審判員としては、自分自身の活動を通じて野球というスポーツの普及や、審判員の後継者育成に貢献していければと思います。

オン・オフ両立の極意

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