ゆうちょ銀行の金融教育への取り組み。在学中に"大人"になる高校生に向けた「金融教育」をスタート

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キャッシュレス決済の普及や成年年齢の引き下げなどを背景に、青少年を取り巻くお金の環境が大きく変わるなか、子どものころから金融教育を始めることへのニーズが徐々に拡大しつつあります。
そこで今回は、株式会社ゆうちょ銀行 広報部において、次世代育成を目的とした金融教育に携わっている原田 夏希(はらだ なつき)さんに、ゆうちょ銀行が以前より取り組んでいる小・中学生向けの金融教育や、2023年度から新たに開始した高校生向けの金融教育、さらにはゆうちょ銀行だからできるこうした活動の社会的な意義などについて、お話しいただきました。

株式会社ゆうちょ銀行 広報部 主任
原田 夏希(はらだ なつき)さん
2011年、株式会社ゆうちょ銀行に入社。企業広告の展開のほか、金融教育や障がいのあるアーティストの支援などのCSR活動に携わっている。
ゆうちょ銀行が取り組んでいる「金融教育」とは?
ゆうちょ銀行が小・中学生を対象とした金融教育を始めたのは、2014年にさかのぼります。実施の背景には2012年8月に成立した消費者教育推進法、さらに翌2013年6月に閣議決定された消費者教育の推進に関する基本的な方針(基本方針)が大きな影響をおよぼしたそうです。
「当時は金融商品の多様化や金融取引の複雑化にともない、個人の金融リテラシーの向上が社会的な課題になりつつあったことから、学校における金融教育のニーズも徐々に拡大している段階でした。また、2020年ごろから実施が予想されていた改訂学習指導要領には金融教育が盛り込まれることも確実視されていました。
そういったなか、子どもたちにお金の大切さを伝え、お金との付き合い方をしっかり学んでもらうことは、地域に根ざした金融機関であるゆうちょ銀行が果たすべき社会的責任であると考え、小・中学生を対象とした金融教育がスタートすることになりました」(原田さん)

この金融教育は、ゆうちょ銀行が作成した小学1・2年生、3・4年生、5・6年生、中学生向けの4種類のオリジナル教材を使って実施。
時代の変化に合わせて、電子マネーや融資などについて学ぶ補助教材を追加しつつ、基本的には子どもたちに楽しんでもらいながらお金について学んでもらうことを心がけていると、原田さんは語ります。

「授業では、子どもたちにより楽しんでもらえるよう、ときには教材の内容に加えて、2024年発行予定の新デザインの紙幣や、お金の裏表を題材にしたクイズなどを行うこともあります。授業を受けた子どもたちからは、『お金を大事にしたいと思うようになった』『お金をムダ遣いしないようにしたい』などの感想を多くもらうことができ、実際に金融教室を行った社員たちも開催することの意義を改めて強く感じています」(原田さん)
新たに高校生向けに作成された金融教材『未来のレッスン』に込められた思い
小・中学生を対象とした金融教室の開催を経て、2023年5月より新たにスタートしたのが、ゆうちょ銀行のオリジナル教材『未来のレッスン』を使用した高校生向けの金融教育です。これまでも高校生を対象とした金融教室は開催していましたが、その際は金融庁の教材などを利用していました。
しかし、2022年4月から成年年齢が引き下げられ、18歳からクレジットカードを作れたり、賃貸借契約ができたりと、お金に関係するさまざまな契約が行えるようになり、高校生に向けて金融教育を行う重要性がさらに高まったこと、また高校学習指導要領の改訂により、金融機関などが実施する高校生向け金融教室の需要も高まっていることから、「実生活に役立つわかりやすい教材を」と独自に教材を作成するに至りました。

「オリジナル教材の作成にあたっては、試作した教材を使った検証授業を行いました。実際に高校(2校)にご協力いただいて教材を使った金融教室を実施したのですが、教材に対する反応や高校生が何に興味を持ってくれるのかなどがダイレクトにわかり、効果的に教材をブラッシュアップすることができました」(原田さん)
では、こうしたプロセスを経て完成した『未来のレッスン』は、小・中学生向けの教材とどういった点で異なっているのでしょうか。
「高校生向けの『未来のレッスン』では、小・中学生向けと比べ、より具体的なお金とのかかわり方・知識を学べるよう、『ライフプラン編』『家計管理・資産運用編』『金融トラブル編』の3冊で構成しているのが特徴です。
特に『金融トラブル編』は、成年年齢が18歳に引き下げられたことで、これまで以上に高校在学中からお金に関するトラブルに直面しやすくなるのではないかというのが高校生向けのオリジナル教材作成の起点でしたので、ほかの2冊とはあえて別冊にして、身近な金融トラブルを事例に、それらの予防対策やキャッシュレス決済の特徴・注意点などを学べるものとしています」(原田さん)


オリジナル教材を使った高校生向けの金融教室は、すでに複数の高校や児童養護施設などで開催されていますが、いずれも生徒たちが将来を考えるうえでよい機会になったと好評を得ているそうです。
「例えば『ライフプラン編』の授業では、これから先、就職や結婚、出産などさまざまなライフイベントがあって、それにかかる具体的な費用を知ることができたのは、高校生にとって新鮮だったようで大いに盛り上がりました。
また、児童養護施設の子どもたちからも、施設を出てから月にどれだけお金が必要になるのかといったことや、計画的にお金を貯めることのできる先取り貯蓄という方法があることなどを学べてとても役に立ったという声をいただいています」(原田さん)
『未来のレッスン』作成の際の検証授業を担当した、ゆうちょ銀行 横浜店の久保 彩香(くぼ あやか)さんにも、実際の授業の様子や生徒たちからの感想を伺いました。

――授業ではどのような工夫をしましたか?
久保:高校生にとって、「金融」というのはまだ興味や関心を持ちづらいテーマです。そのため、教材に書かれていることに加えて、実生活のなかでイメージしやすくなるよう生徒の身近に起こる「あるある」を織り交ぜながら説明することで、「金融」が思っている以上に身のまわりにあふれていて、これからも学んでいく必要があるものなんだと思ってもらえるように心がけました。
――生徒たちの反応はいかがでしたか?
久保:普段からインターネットショッピングなどが身近になっているためか、「金融トラブル」に関してはすでに関心を持っている生徒も多い印象でした。一方で「資産運用の必要性」というテーマは、まだ身近でないからこそ初めての気づきが多かったようで、反響が大きかったです。

――授業を実施して感じたことや気づいたことがあればお聞かせください。
久保:私たちゆうちょ銀行の講師に対する生徒たちの真剣なまなざしを見て、これからも地域に密着したゆうちょ銀行ならではの金融教室を開催していきたいという思いがより強くなりました。授業をさらに充実させていきたいと思いますし、この金融教室で学んだことが、生徒が今後の人生を考えるうえでの新しい気づきのきっかけとなってくれたらとてもうれしいです。
ゆうちょ銀行だからできる社会貢献と、子どもたちに期待すること
金融教室の今後の展望や、金融教室で学んだ知識を通じて、子どもたちにどのようにお金と付き合っていってほしいと考えているのか、最後に原田さんは次のように語ってくれました。

「ゆうちょ銀行は、地域に根ざした金融機関だからこそ、全国さまざまな地域の学校に社員が直接足を運んで金融教室を実施できます。今後も当行のオリジナル教材を活用し、それぞれの地域の実情に応じた授業を展開しながら、広く社会に貢献していきたいです。
そして子どもたちには、金融教室を通してお金に関する正しい知識を身につけていただくことで、トラブルに巻き込まれることなく今後の人生を豊かに送っていただくことを心から願っています」(原田さん)


