「食事の大切さと楽しさの両立」 日本郵政グループ女子陸上部を支える「栄養管理」

INDEX

「You are what you eat.(人は食によって決まる)」という言葉があるほど、食事は人間にとって大切なもの。日々厳しい練習を重ねているアスリートであればなおさらです。日本郵政グループ女子陸上部では、専属の管理栄養士が日ごろの食事を管理しながら、コーチと選手も一丸となって身体づくりやリカバリーに取り組んでいます。

「管理」というと厳しく指導していくというイメージがありますが、日本郵政グループ女子陸上部の栄養管理は少し異なります。ポイントは、「選手との信頼関係」。それを探りに、選手が日々の生活を送る寮に潜入しました。

安里 春菜(あさと はるな)さん

日本郵政グループ女子陸上部 管理栄養士

安里 春菜(あさと はるな)さん

2022年入社。東京都出身。日本女子大学家政学部卒業後、同大学での助手を経て現職。大学での卒業研究で他大学ラグビー部の栄養サポートを行った経験があるなど、スポーツの栄養管理に明るい。

齋藤 由貴(さいとう ゆき)さん

日本郵政グループ女子陸上部 チーフコーチ

齋藤 由貴(さいとう ゆき)さん

2014年入社。埼玉県出身。玉川大学卒業後、実業団チームで陸上競技を続ける。その後、指導者として母校の女子陸上競技部長距離チームコーチ、非常勤講師を経て現職。

菅田 雅香(すがた みやか)選手

菅田 雅香(すがた みやか)選手

2019年入社。2001年3月9日生まれ、福岡県出身。3000m・5000mをメインとする長距離ランナー。ニックネームはみや、みやか。

和田 有菜(わだ ゆな)選手

和田 有菜(わだ ゆな)選手

2022年入社。1999年8月7日生まれ、長野県出身。5000m・10000mをメインとする長距離ランナー。ニックネームはゆな、わだゆな。

田島 愛梨(たしま あいり)選手

田島 愛梨(たしま あいり)選手

2023年入社。2005年1月8日生まれ、愛知県出身。1500mから5000mをメインとする中距離・長距離ランナー。ニックネームはあいり。

1週間の練習計画をもとにした献立づくり

午後、選手が練習している間に管理栄養士の安里さんは夕食の準備を始めます。

「献立は、1日分だけではなく、1週間単位でエネルギーや必要な栄養素が確保できるように考えています。さらに、練習メニューを事前に共有してもらって、その内容や強度に合わせることもあります。例えば、午前中にハードな練習を行う日の朝食は、消化のしやすい食材を選択したり、調理方法を工夫したりと調整をしています」(安里さん)

安里管理栄養士。夕食の味見をひとくち

この日の夕食は、偶然にも樽本(たるもと)選手の「バースデーメニュー」でした。その月に誕生日を迎える選手からリクエストをもらって、安里さんが特別メニューを考えます。

「栄養バランスなどもあるので調整に苦しむときもありますが、最低限リクエストしてくれたメニューは必ず出してあげられるように、知恵を絞っています」(安里さん)

バースデーメニューは選手も楽しみにしています。「何をリクエストしようかなって真剣に考えるんですよ(笑)」と和田選手が話すと、「揚げ物は普段の献立にはあまりないので、リクエストしちゃいますね」と菅田選手。

この日のメニューはスパゲティグラタン、コーンサラダ、アンチョビきのこ、ブリのカルパッチョ、トマトとレタスの卵スープ。デザートにはバナナジェラートも

いつもと違うメニューが出てくる、楽しみなひととき。その工夫について、安里さんが説明します。

「バースデーメニューはエネルギーが少しオーバーしたり、脂質が増えたりと、計算上偏りが出てしまうときもあるんですが、献立は1週間単位で管理しているので、他の日で調整していきます。アスリートにとって食事はとても大切で、スタッフの立場としては選手のコンディショニングの一つとして、日々管理をしています。一方で選手は毎日ハードな練習をこなしているので、おいしさや満足感、楽しさ...そういったことにも応えたいと思っています」(安里さん)

食堂には笑顔があふれる。座席は決まっているのか尋ねると、牛(ぎゅう)選手(左端)は「自由です。今日みたいに人数が少ない日はみんなで肩を寄せ合って食べるんですよ」

寮で提供される食事は朝食と夕食で、昼食は選手たちに任せられています。栄養バランスやエネルギー計算だけでなく、味、見栄えなど、選手たちが最大限のパフォーマンスを発揮できるように考えられた食事を提供しながらも、すべてを管理しているわけではなく、基本的に選手たちの自主性を尊重していると齋藤チーフコーチは言います。

「食事の摂り方によってはパフォーマンスに影響するのはもちろん、ケガをしやすくもなるので要注意です。栄養の吸収率についても個人差や同じ人間でも時期(季節や周期)によっては差が出ることもあるんですが、食事を楽しみに練習を頑張る選手も多いので、あまり制限しすぎないようにしています。基本的には、おいしいものを食べることで、身体だけでなく心も元気になり、それが良いパフォーマンスを発揮できることにつながっていると思っています」(齋藤さん)

日本郵政グループ女子陸上部 齋藤チーフコーチ

栄養士と選手が信頼し合ってコンディションを整える

食事の管理、ひいては体調管理・コンディショニングは、管理栄養士にお任せではなく、選手が自己判断するだけでもなく、チーム一丸となって進めている様子がうかがえます。実際に、毎日の食事とコンディショニングについてどのように考えているのか、選手にも聞いてみました。

菅田:私は、ケガで走れない日などでも、白米は必ず食べるようにしています。その方が回復が早くなると教えてもらったので。あとは甘いものが好きなんですけど、レース前は我慢して、終わってからご褒美として食べるようにしています(笑)。

「レース後に甘いものを食べることを楽しみに頑張る」と笑う菅田選手

和田:しっかり食べてしっかり寝るということを意識しています。私は時期によって貧血気味になるなど、血液状態が良くないときもあるので、鉄分をきちんと摂るようにしていますね。あと、脂質の少ないものを摂るようにして、タンパク質も摂りすぎないようにというのも気をつけています。バランス良く、というのが一番ですね。

和田選手。自身のバースデーメニューでリクエストしたのは春巻き。「包む・揚げる」の工程に愛情を感じると話す

田島:私は「食べて筋肉に変える」というのを意識しています。あとは、レースの距離に合わせて食べるものを変えますね。距離が長ければ、エネルギー源となる炭水化物をきちんと摂るようにしています。

田島選手。レース前によく食べるのは、カステラと塩サバ。菅田選手から「カステラは消化が良いので食べる選手は多い。塩サバは独特(笑)」と突っ込まれる場面も

いくつものレースに向けて練習が組まれていくなか、選手ごとに体調も違えば、好き嫌いもあるそうです。献立を考えるのは大変そうですが、どのように対応しているのでしょうか。

「選手の好き嫌いはある程度把握しています。献立はすべて食べてもらうことを前提に栄養価を計算し、バランスを考えて立てているので、できるだけ残さず食べてほしいのですが、ちょっとした薬味みたいなものが嫌いな場合は抜くこともあります。添える薬味がイヤで料理全部を食べてもらえないのでは元も子もないので...。でも、メインの食材などの場合は、調理法などを工夫しつつ、少しでも食べやすくなるように心がけています。」(安里さん)

毎日食堂に立ち、選手からも頼りにされている

取材当日も、夕食後の食堂に残って、安里さんに相談をしに行く選手の姿が見られました。管理栄養士でもあり、また同年代ということもあり、すっかり頼りにされているようです。

「私は安里さんと同期入社なんです。コーチたちには話しにくいことも話せる、心の支えですね。こんな栄養士さんに出会えたのはとてもありがたいです」(和田選手)

「私は高校を卒業して入社1年目で、まだまだ身体も成長途中で変わりやすい。そんな私にとっては、いろんな面で頼れる、いわば"神"です(笑)」(田島選手)

食堂で選手からの相談にのる様子。また、食堂には選手の声を聴こうと「おいしかったもの、実は苦手だったもの」を投函できるお手製ポストも

「選手が目標を達成したときの笑顔を見るのが何よりの喜び」

最後に、日本郵政グループ女子陸上部が、チームとして栄養管理で心がけていることを改めて齋藤チーフコーチ、そして安里管理栄養士に伺いました。

「選手のコンディションや悩みなどを安里さんとも共有しています。選手は年齢や経歴もさまざまなので、一人ひとりの食に関する考え方や知識量も異なります。栄養についての知識や身体づくりのことなど、選手にはしっかり勉強するように指導しています。

学生と実業団では練習の質(スピード)が上がり、量(距離)も増えます。成長過程にある選手は身体も変化していくので、今までの自分の常識だけにこだわらずに、食に関する正しい知識を吸収しながら、さらに高いレベルの練習に挑戦していってほしいと思っています」(齋藤さん)

食堂に貼られた献立表。この日は樽本選手のバースデーメニューでした

「管理栄養士として、選手が良いパフォーマンスを発揮できるように、食事管理だけでなく体調のチェックなども含めた包括的なサポートをしていきたいと思います。その一方で、厳しい練習を行っている選手たちが「寮のご飯がおいしいな」と思えたり、気軽に相談ができたりと、リラックスできる場や存在であることも大切だと思っています。厳しいだけでも、情に流されすぎてもいけないので、うまく切り替えられるように心がけています。

日々努力している選手たちを近くで見ているので、選手たちが目標を達成したときの笑顔を見るのが何よりの喜びです。これからも精いっぱい、サポートしていきたいと思っています」(安里さん)

自身のバースデーメニューを前に笑顔の樽本選手(右端)。賑やかな夕食になりました

実業団選手としてもっともうれしい瞬間は、努力によって目標を達成し、自らの夢をかなえたときだそうです。日本郵政グループ女子陸上部のスタッフは選手の夢をかなえるためのサポーターとして連携し、選手たちはその想いを力に、これからも走り続けます。

\JP CAST公式アプリにてオフショットを公開!/

JP CAST公式アプリにて、本記事に載せきれなかったオフショット集を公開しています。アプリのダウンロードについてはこちらから!

未来へたすきをつなぐ 日本郵政グループ女子陸上部 連載記事一覧はこちら

JP CAST 公式アプリのダウンロードはこちらから!
JP CAST 公式アプリのダウンロードはこちらから!
            

#HOT TAG

カテゴリ

おすすめ記事