日本の街を元気に! 郵政が描く、まちづくりのデッサンVol.2 開発担当者が語る、地域に根ざした大規模複合開発「蔵前JPテラス」

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日本郵政グループの一員として、グループの不動産開発などを担う、日本郵政不動産株式会社。同社が開発・推進し、2023年3月31日に竣工したのが「蔵前JPテラス」です。敷地面積約1万4,400㎡というスケールで、このなかにオフィスや住宅、物流施設、認可保育園などを配置。実に多くの機能を備えた大規模複合開発です。
そんな蔵前JPテラスの開発担当者に、プロジェクトに込めた想いを伺いました。

梅田 舞佳(うめだ まいか)さん

日本郵政不動産株式会社 開発事業本部 開発第一部 主任

梅田 舞佳(うめだ まいか)さん

2016年、日本郵政株式会社に入社。郵便局の設計・工事監理や日本郵政グループが保有している不動産保守などを担当する施設部に配属。2018年11月から日本郵政不動産株式会社へ出向し、蔵前JPテラスの開発に携わる。一級建築士。

遠山 正晴(とおやま まさはる)さん

日本郵政不動産株式会社 開発事業本部 開発第一部長

遠山 正晴(とおやま まさはる)さん

2015年4月から日本郵政株式会社の不動産戦略部に勤務。2018年4月からは日本郵政不動産株式会社の業務を兼務し、その後同社へ転籍。日本郵政不動産では一貫して不動産開発業務を手がけている。

魅力に満ちた街・蔵前にふさわしい多機能施設

――梅田さんはもともと不動産業界にご興味があったんですか。

梅田:はい。学生時代から、人々が集う"場所づくり"に興味がありました。例えば、多様な世代の人がお祭りやイベントに集まり、笑顔になり楽しんでいる風景を見ては素敵だなと感じていて、そういった空間を生み出すことに携わりたいと考えていました。「建物をつくること」は、その一つの入口になり得ると思い、就活では不動産・建築業界を志望しました。

日本郵政グループを志したのは、全国に数多くの不動産を保有していて、それを最大限に活用することで、新たなにぎわいや交流が生まれ、同時にグループの事業にも寄与できる特性が魅力だったからです。入社から2年あまりでこの蔵前JPテラスのプロジェクトにかかわることができ、大きな喜びを感じました。

――念願だった"場所づくり"の地が蔵前になったのですね。蔵前の魅力をお聞かせください。

梅田:蔵前は、江戸時代に幕府の御米蔵が67棟もあり、多くの人が行き交い、人々の暮らしが営まれてきた土地です。近年では「東京のブルックリン」と称されるほど、おしゃれなカフェやクリエイターの拠点などが集まり、トレンドの発信地としても知られるようになりました。さらに外国人観光客が集うゲストハウスなども増え、江戸時代から続く歴史と下町文化、国際色が混じり合い、多様な魅力に満ちたエリアとなっています。蔵前JPテラスも、そうしたエリア特性に融合するような存在になることを目指しました。

歴史と下町文化、国際色が混じり合う蔵前の街。中央手前の建物が蔵前JPテラス
歴史と下町文化、国際色が混じり合う蔵前の街。中央手前の建物が蔵前JPテラス

――蔵前JPテラスには実に多くの施設が入っていますが、それは蔵前の多様性を反映したものでしょうか。

梅田:そのとおりです。不動産開発事業では、その土地に対して、どういった機能の施設を導入するかを検証し、実装することが私たちの重要な仕事になります。蔵前JPテラスには、オフィス、単身者・ファミリー向けの賃貸住宅、シニアレジデンス(高齢者住宅)、シェアスタジオ、認可保育園、ベーカリー、郵便局、物流施設、屋上庭園など、さまざまなシーンで多世代が利用できる多様な機能を備えました。

左上から時計回りに、JPライオンビルディング、住宅棟、屋上庭園、物流棟
さまざまな施設がある蔵前JPテラス。左上から時計回りに、JPライオンビルディング、住宅棟、屋上庭園、物流棟

――JPライオンビルディングとはどういった施設でしょうか。

梅田:ライオン株式会社様の新たな本社ビルとなるオフィスビルです。ライオン様とともにどのようなオフィス機能を持たせるか検討し、設計しました。特徴的なのは、ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)という、個々人の業務内容や好みに応じてフロアを移動しながら自由に場所を選択して働けるワークスタイルの概念を取り入れたことです。アイディア創出を促すために、あえて天井板を取り外して開放的な空間にした共創フロアや、コミュニケーションが取りやすいオープンな内部階段なども設けています。ほかにも、筋トレマシンやボルダリングウォールを備えたアクションルーム、隅田川ビューが楽しめるカフェテリアなどもあります。

――従来のオフィス環境にはない、革新的な試みですね。

梅田:さらに、当社がつくる建物と、ライオン様の健康で新しい働き方に対応した取り組みが評価されて、JPライオンビルディングは、CASBEEスマートウェルネスオフィス評価認証(※)の最高ランク「Sランク」の認定を受けました。これを獲得できたことも、開発担当者としての大きな達成感につながりました。

※ オフィスビルで働く方の健康・快適性に関するハード・ソフトの取り組みと、建物の環境性能等を含めたビルの総合的な評価を認証するもの。

ライオン様の新オフィス
ライオン様の新オフィスは、行きたくなるMY BEST OFFICEを掲げ「自ら選ぶ」「つながる」「ワクワクする」のコンセプトをもとにデザイン。執務フロアは業務内容に合わせて働く空間を選択できるよう、色も形もさまざまなデスクやチェアが特徴
JPライオンビルディング1階には、テラスに集う方々に親しんでいただける施設としてベーカリーを誘致(左手)。中央に見えるのは住宅棟や保育園の出入口となる「蔵エントランス」
JPライオンビルディング1階には、テラスに集う方々に親しんでいただける施設としてベーカリーを誘致(左手)。中央に見えるのは住宅棟や保育園の出入口となる「蔵エントランス」

テニスコート約11.5面分の屋上庭園を起点に、笑顔の輪を広げたい!

――蔵前JPテラスを形成する、ほかの機能についても教えてください。

梅田:日本郵政グループならではの施設という点で、物流棟の設置も特徴的です。お客さまの手元に郵便物や荷物を届ける役割を持ち、グループ事業に貢献できると考えています。トラックバースも設けており、都心に位置する物流拠点としては、大きな規模となっています。

物流棟のトラックバース
物流棟のトラックバース

――住宅棟・物流棟の上には屋上庭園があるそうですね。

梅田:はい。この屋上庭園が、蔵前JPテラスの最大の特徴といっていいかもしれません。大きさはテニスコート約11.5面分。この規模の空中庭園は、都心部では希少です。中央には広い天然の芝生広場があるので、憩う、交流する、健康を保つといった、いろいろな使い方ができると思います。

また、2種類の菜園がある「蔵前JPテラス ファーム」にも注目していただきたいですね。一つは貸し菜園で、もう一つはシェア菜園。シェア菜園は、ハーブや野菜の栽培やワークショップなどを通して暮らしを豊かにする"大人の部活動"を行っています。今回のプロジェクトの開発コンセプトのなかに、「笑顔の輪が広がる場所」という言葉があるんですが、この屋上庭園で多くの人が憩いの場として集まったり、菜園で野菜を育てたり収穫したりするなかで、地域の方や入居者の方など、人とのコミュニケーションが生まれて、笑顔の輪が広がる起点になることを目指しています。実際に、菜園で開催されるイベントや日々のお手入れを通じて、近所の方とお知り合いになれたというようなエピソードをお聞きすることもありうれしく思います。

開放的な芝生広場
開放的な芝生広場。世代を問わず多くの人たちが訪れ、憩いの場となっている
ファーム
都心のなかで土と触れ合い、収穫の喜びを体験できるファーム

利用者の笑顔をイメージしながら仕事を進める喜び

――開発において苦労された部分はありましたか。

梅田:蔵前JPテラスは多様な機能を備えているので、たくさんの方々や企業さまとかかわることになり、その分さまざまな学びが必要だった点ですね。それでも、このプロジェクトに従事していた4年あまりの間、多分野にわたる知識や人と意思疎通を図る力など、設計以外のさまざまなスキルを身につけられ、ビジネスパーソンとして成長できたと思っています。

自分にとって未知のフィールドは多かったのですが、使い手、住み手の笑顔や満足度をイメージしながら仕事を進めました。

――遠山さんはプロジェクトを振り返ってみていかがでしょうか。

遠山:私としても、これほど多くの機能が導入されたプロジェクトは初めての経験でした。今回は、テナントさまとのいいご縁に恵まれ、蔵前の地域に根ざし、地域とともに発展していきたいというテナントさまから入居のご希望をいただき、顔ぶれが決まったことが特徴的です。私たちもテナントさまといっしょになって、蔵前JPテラスが地域に根ざした施設となっていくお手伝いをしていくつもりです。

――蔵前JPテラスが、ますますにぎやかになる未来が想像できますね!

梅田:蔵前JPテラスの「テラス」には、多様な人々が集まり、にぎわいが創出されて地域がいっそう明るく"照らされる"といった希望が込められているんです。いずれは、地域の方々に「この街に蔵前JPテラスができてよかった」と言っていただける存在になりたいですね。

日本郵政グループの保有不動産を活かし、全国の街に新たな価値を加えていく

――最後に、日本郵政不動産における、"場所づくり"の魅力を教えてください。

梅田:日本郵政グループは、さまざまな不動産を全国に多数保有していますので、それを活かしながら、各地域の特性などを踏まえて再生できることが魅力です。今後も"新たな場所"をつくる業務に取り組みつつ、蔵前JPテラスの発展にも微力ながらサポートしていきたいですね。

遠山:梅田さんが言ったとおり、各地に多数の不動産を保有していることがグループの大きな強みです。周辺環境、その土地ごとの交通条件や歴史、ニーズを充分に考え抜き、深掘りをして、新たな街を生み出す面白さや、やりがいを感じることができます。

――日本郵政グループならではの強みが、今後も活かされていきそうですね。

遠山:日本郵政不動産は、2018年設立のまだ若い会社です。学んでいくべきことは多いのですが、一つひとつの案件で得たノウハウを次の新たな案件にフィードバックしていくことで、経験値が上がっていくことに期待しています。また、蔵前JPテラスのプロジェクトでは、多くの企業さまとコラボレーションができ、大きな財産となりました。今後の不動産事業でも、ここで築いたネットワークを活かしながら取り組んでいきたいですね。

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