木質バイオマスボイラーを初導入! カーボンニュートラルな郵便局が北海道に誕生

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地域のカーボンニュートラル化の推進を目的に、日本郵政グループが展開する環境配慮型の新しい郵便局、それが「+エコ郵便局(ぷらすエコゆうびんきょく)」です。今回は、2023年2月に+エコ郵便局として北海道に開局した当麻郵便局(北海道上川郡当麻町)の取り組みに携わった社員4名にお話を伺いました。

日本郵便株式会社 北海道支社 店舗企画担当 係長 ※

俵谷 啓太郎(たわらや けいたろう)さん

旧当麻郵便局の移転から新局舎の開局に至るまで、日本郵便社内や当麻町との調整を担当。

※ 取材時(2023年3月)の所属を記載しています。

日本郵政株式会社 北海道施設センター 技術グループ 設備担当主任 ※

川邉 真斗(かわべ まなと)さん

設備担当として、木質バイオマスボイラーの基本設計や工事管理などを担当。

※ 取材時(2023年3月)の所属を記載しています。

日本郵便株式会社 本社 チャネル企画部 係長

遠藤 智史(えんどう さとし)さん

日本郵便本社内における調整、+エコ郵便局としての仕様の検討・調整などを担当。

日本郵便株式会社 当麻郵便局長

太田 英樹(おおた ひでき)さん

2013年より当麻郵便局長。当麻町役場や町議会などとの折衝などを担当。

当麻郵便局のここがすごい! 初導入の木質バイオマスボイラー

北海道上川郡当麻町。人口約6,300人、面積の約6割が森林という豊かな自然に囲まれたこの町に、 2023年2月、新たな「+エコ郵便局」(CLTの利活用と再生可能エネルギーを組み合わせた、環境配慮型の郵便局)が誕生しました。

旧局舎から移転のうえ新しく環境配慮型郵便局として生まれ変わった当麻郵便局の最大の特長は、全国の郵便局で初の試みとなる「木質バイオマスボイラー」の導入です。バイオマスボイラーとは、木材などのバイオマス(生物由来の物質)を燃料に使用するボイラーのことで、当麻郵便局では樹木を粉砕した「木質チップ」を燃料に使用しています。

木質チップは、燃焼時にCO2が発生しますが、その原料である樹木は成長の過程でCO2を吸収・固定します。樹木の伐採後に森林が再生すれば、その成長の過程で再び樹木にCO2が吸収・固定されることから、木材のエネルギー利用は大気中のCO2濃度に影響を与えない、「カーボンニュートラル」な燃料とされているのです。

当麻郵便局に導入された木質バイオマスボイラー。生み出された温水は郵便局の暖房として利用されます。

「通常、北海道のこの規模の郵便局では、暖房は主に灯油のボイラーやストーブを使用します。当麻町は冬にはマイナス25℃まで気温が下がるので、移転前の旧当麻郵便局では、ひと月に約3,000リットルの灯油を必要としていました。一方、木質バイオマスボイラーを導入した新当麻郵便局では、灯油の使用量はせいぜい200リットル程度。化石燃料の使用を大きく抑え、CO2排出量の削減につなげることができました」(太田さん)

当麻郵便局では木質バイオマスボイラーのほかにも、太陽光発電による再生可能エネルギーを利用しており、発電した電力は、主に郵便局の日常電力として利用しています。太陽光パネルといえば、屋根に設置されるのが一般的ですが、当麻郵便局ではなぜ壁面に設置されているのでしょうか。

「当麻町は真冬になると1メートル以上の積雪がある豪雪地帯です。太陽光パネルを屋根に設置してしまうと、雪でパネルが埋もれて発電できなくなったり、雪の重さでパネル自体が破損してしまったりする可能性があります。屋根に設置するよりも発電効率は下がってしまうのですが、壁面に設置することで積雪期でも発電することが可能なんです」(川邉さん)

太陽光パネルを壁面に設置することで、積雪時でも発電が可能に。

木質バイオマスボイラーと太陽光発電、2つの再生可能エネルギーを導入した当麻郵便局。これにより、年間CO2排出量を約35トン削減できるそうです。

地域のつながりから生まれた郵便局

当麻町産の木質チップを郵便局舎に併設したサイロに搬入。4tトラックで月に2回ほど搬入します。

「郵便局への木質バイオマスボイラーの導入は、本支社ともノウハウがゼロの状態から手探りで進めてきました。その際、既に木質バイオマスボイラーを導入・運用していた当麻町役場や、木質チップの提供に協力してくれた当麻町の森林組合など、地域の皆さんからの理解や協力を得られたことが導入への大きな助けとなりました」(遠藤さん)

地域の経済や林業の活性化にも貢献していきたいという思いから、木質チップは当麻町の森林組合から調達することにこだわりました。加えて、チップの安定供給や輸送コスト、環境負荷の観点からも、地元の当麻町で生産された木質チップを利用することに決定したそうです。しかし、課題もあったとか。

「当麻町の森林組合さんの木質チップは、水分を多く含んだ乾燥前の高含水率チップ材なので、ボイラー燃料としてそのまま使用することができません。乾燥システムも含めたボイラーシステムを設計する必要があったのですが、当麻町役場さんが同じような乾燥システムを組んでいることがわかり、何度も当麻町役場を見学させていただきました。快く見学させていただいて、ノウハウも惜しみなく提供してくださり、とてもありがたかったです」(川邉さん)

樹木を粉砕してつくられる木質チップ。地域資源の活用や林業の活性化につなげようと、当麻町で生産されたものを利用しています。

当麻郵便局のもうひとつの特徴が、建物へのCLT材の活用です。CLTとは、長い板を縦横互に張り合わせた圧型パネルで、強度や断熱性に優れ、コンクリートや鉄に比べてCO2の発生を抑制します。

強度や断熱性に優れ、コンクリートや鉄に比べてCO2の発生を抑制するCLT材を採用。
木のぬくもりや美しさを生かせるよう、機械設備の配置なども工夫されています。

森林は適切に管理・整備されることでその機能を発揮しますが、近年は林業の衰退により森林が放置され、台風や大雨による山崩れなどの災害リスクが指摘されています。日本郵政グループは「+エコ郵便局」での木材の活用を通じ、林業の活性化へ貢献することを目指しています。

カーボンニュートラルの推進を地域とともに

完成した当麻郵便局を利用した地域の方からは、「木のにおいのするいい郵便局だね」と、とても好評のようです。

最後に、皆さんの想いや今後の展望について伺いました。

「当麻町は小さな町ですが、『ゼロカーボンシティ』宣言を表明し、カーボンニュートラルに対して熱心に取り組んでいます。当麻町の町長さんからは、『民間企業として初めて当麻郵便局が参加してくれた』『大いに評価したい』とおっしゃっていただきました。郵便局の向かいには小学校がありますし、当麻郵便局が地域の小学生や学生さん、そのほか地域の方々が環境配慮について考えるきっかけになればと思っています」(太田さん)

「私自身、今回のプロジェクトを通じて、木質チップ材がどこでどのように生産されているのかを知りましたし、北海道で木質バイオマスボイラーを導入しているところがたくさんあることもわかりました。今回のプロジェクトに携わることで、環境配慮への意識が高まりましたし、他の社員の意識も変わったように感じます」(川邉さん)

「今回、+エコ郵便局の建設を推進するにあたって、役場の方や森林組合の方に多大なご協力をいただきました。自治体との一体感も生まれ、世界が広がったように思います。日本郵政グループとして地域に貢献できているという実感、そして郵便局を通じて地域のみならず社会に貢献していかなければという使命感を再認識しました」(俵谷さん)

「開局したばかりの当麻郵便局です。木質バイオマスボイラーの運用やメンテナンスは、まさにこれから始まっていくので、課題も出てくると思います。その課題をしっかり評価しつつ、課題に対して、当麻郵便局、北海道支社、施設センター、そして我々本社も一緒に考えて一緒に行動し、当麻郵便局の木質バイオマスボイラーの取り組みをみんなで軌道に乗せていきたいと思っています」(遠藤さん)

グループ中期経営計画「JPビジョン2025」で、「郵便局ネットワークを活用した地域のカーボンニュートラル化の推進」を掲げる日本郵政グループ。「+エコ郵便局」の取り組みはまだ始まったばかりです。さらなる地域のカーボンニュートラル化の推進に向け、日本郵政グループの取り組みは続きます。

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