日本郵政グループが高校生と連携する意味とは?

INDEX

日本郵政グループは2021年、SDGsをテーマに社会課題の解決を学習している東京都立千早高等学校(東京・豊島区/以下、千早高校)との連携をスタートさせました。それから約2年。この連携を経て、何を得たのか。そこにどんな意味があったのか。これまでの取り組みを振り返ります。

千早高校が日本郵政本社を再訪!

2023年2月22日、千早高校の生徒たち17名が日本郵政本社(東京・大手町)を訪れました。生徒たちが本社を訪れるのは、日本郵政株式会社の増田社長に、郵便局を活用した脱炭素の取り組みをプレゼンテーションした2021年12月以来です。

SDGsESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みの重要性が叫ばれるなか、ビジネスの成長と社会課題の解決をどのように両立させていけばいいのか――。2021年から約2年にわたり、ともに考えてきた千早高校と日本郵政グループ。この日はその総括となる交流イベントが行われました。

第一部は、千早高校によるプレゼンテーション。「社会的課題解決に向けた郵便局の取り組み案」を、選抜された4チームが発表しました。

クラス内プレゼン→全学年プレゼンで勝ち抜いた4チームによる発表が行われました
「年間48万トン、平均1日あたり大型トラック130台分の服が焼却・埋め立てられています」。郵便局を活用した衣服のリサイクルを立案した「Circulators」チーム

4チームが考案したプランは、梱包材のリユースや、コスメや衣服のリサイクル、フードロスの解決を郵便局を通じて行うというもの。高校生らしい柔軟な発想と、高校生とは思えない知識とビジネスプランに、皆さん感嘆した様子でした。

「われわれの考えているビジネスとマッチする、示唆に富む発表でした」日本郵便株式会社 ロジスティクス事業部執行役員 五味 儀裕(ごみ よしひろ)さん
「どのチームも社会課題の把握が非常に的確なだけでなく、郵便局のメリットもきちんと考えていただき、ありがたく思います」日本郵便株式会社 郵便・物流事業企画部長 斎藤 貴(さいとう たかし)さん

この取り組みで何を学び、何を得たのか

約2年にわたる千早高校と日本郵政グループの連携。千早高校の生徒たちはそこから何を感じ、何を学んだのか。そしてこの連携は日本郵政グループにとってどんな意味があったのか。第二部のパネルディスカッションでこれまでの取り組みを振り返り、意見を交わしました。

社会課題や地域課題をどう解決していくかということを、郵便局という実際にあるものを通じて考え、ビジネスの基礎について学べたことが大きかったと思います。

私たちが考えた案に、日本郵政グループの方たちがプロの視点でアドバイスをしてくれて、より深い案にしていくことができました。

ビジネスプランを考えるためには、相手企業を知ることや、多方面から物事を見ることが大切だとわかりました。

意見を交換することの重要性を学びました。考えを共有することで、自分では思いつかなかった新しい視点が得られ、もっと深堀りできるのだと思いました。

千早高校 主幹教諭 藤井 宏之(ふじい ひろゆき)先生

藤井:「総合実践」の授業では、3年生全員の約200名が36チームに分かれ、日本郵政グループの社員の方と一緒に取り組みました。教員歴30年のなかで、学年全員が企業と連携してひとつの学習に取り組む経験はこれまでなかったことです。まさにSDGsの目標10(不平等をなくそう)や16(平和と公正)に当てはまる取り組みだと思います。ビジネスの現場にいる方とともに議論するという経験から、生徒たちは多くの気づきを得ていました。これは教員の私にはできないことです。貴重な機会をいただき本当にありがとうございました。

どんな価値をお届けできるのか、ユーザーと一緒に考えた

日本郵便株式会社 豊島長崎六郵便局 局長 西原 直希(にしはら なおき)さん

西原:皆さんの社会問題に対する考え方には、目からうろこが落ちる思いがしました。新たな視点に気づかせてくれた千早高校の皆さんとの取り組みは、われわれ自身の学びにもつながっています。昨年のグループディスカッションで、皆さんは与えられたテーマに対して、悩みながらもきちんと結論まで出していました。私たち大人ですら会議で意見をまとめるのは難しいものです。皆さんは今すぐ社会に出ても活躍できるレベルにあると思います。自信を持って千早高校で学んだことをぶつけていってください。そして将来、郵便局で一緒に働いてもいいと思ってくれる人が出てきてくれたらうれしいです。

日本郵便株式会社 豊島千川駅前郵便局 局長 南雲 英雄(なぐも ひでお)さん

南雲:私たち日本郵政グループは地域貢献を一所懸命やろうという思いがあります。SDGsとビジネスに力を入れている千早高校を知り、皆さんと組めば新しい視点と発想で地域貢献について検討し、もしかしたらそれがビジネスの種になるかもしれないと思いました。皆さんのアイデアは柔軟で大胆ですばらしい。現状ではすぐに実現できない案に思えても、何か工夫すれば実現できるのではないかと考えさせられました。困難でもチャレンジしなければ何も変わりません。私たちも変わらなければならない。もっと若い方に来ていただけるよう、魅力ある郵便局にならなければならないと痛感しました。ファーストペンギンとして、ともに挑戦を続けていきましょう。

日本郵便株式会社 人事部執行役員 三苫 倫理(みとま のりまさ)さん

三苫:私たちの事業は全国の郵便局を通じて、社員一人一人がお客さまに価値をお届けすることです。今の時代、企業が価値を決める「プロダクトアウト」ではなく、お客さま起点の「マーケットイン」で考えることが求められています。そのなかで、日本郵政グループはどのような価値をお客さまに届けることができるのか。それを現在そして将来のユーザーである千早高校の皆さんと一緒に考え、さまざまな視点を示していただきました。皆さんとのコラボレーションは、確実に社員の価値向上につながったと思います。

日本郵政株式会社 常務執行役​ 浅井 智範(あさい とものり)さん

浅井:私たちは皆さんより年上で、いろいろな知識や経験がある。それは強みである一方で弱みでもあります。自分の考えから抜け出せなくなってしまうからです。会社も同じです。特に日本郵政グループは150年という長い歴史を歩んできました。自分で自分を変えようと思ってもなかなか変えられない。無理に決まっている、そんな考え方になりがちです。皆さんの自由な発想は、自縄自縛から逃れられない私たちに多くの気づきやインスピレーション、そして原点回帰の機会を与えてくれました。本当に貴重な時間・機会だと思っています。改めて感謝申し上げます。

千早高校の生徒にインタビュー!

写真左から、俵山(たわらやま)さん、大森(おおもり)さん

イベント終了後、千早高校3年生のお二人にお話を伺いました。

──SDGsが掲げる「持続可能な社会」の実現には、何が必要だと感じていますか? 

俵山:私はSDGsを難しい問題だという認識が壁をつくっていると思います。例えばキャッシュレス決済を選択し、レシートをもらわないだけでペーパーレスになります。もっと気軽に捉えて一人一人が身近でできることに取り組んでいくことが大切だと思います。

大森:私はSDGsについて学んだことで、社会の見え方が変わりました。この連携の取り組みのように、SDGsについて楽しく学べる場がもっとあったらいいのではと思います。

──将来の夢は?

俵山:私は新しいことに挑戦するのが好きなので、ベンチャー企業で活躍できたらと思っています。そのときにこれまでSDGsや環境問題について勉強してきたことが強みになると思っています。

大森:私は高校でソーシャルビジネスの授業を受けて興味が沸き、大学では経営やマーケティングについて学ぶことにしました。将来は社会課題を解決するようなビジネスを展開していきたいと考えています。みんなが平等に教育を受けられる社会をつくっていきたいです。

挑戦はこれからも続いていく

持続可能な社会の実現を目指すSDGsは、質の高い教育をみんなに提供すること(目標4)、あらゆる人々の協力でSDGsの達成を目指すこと(目標17)をそれぞれ掲げています。日本郵政グループと千早高校の連携は、こうした質の高い教育機会の提供と、パートナーシップによるSDGsの達成を目指す取り組みです。

「コロナ禍で多くの制約もあったなか、皆さんに支えられながら素晴らしい取り組みを実現できました。少しずつブラッシュアップしてきたこの知見をもとに、全国約24,000局の郵便局を通じて、他の地域でも連携・協力していけたらと思います。そうして新たな気づきやアイデアを得て、われわれ自身が変わっていかなければなりません。この取り組みを日本郵政グループの原動力のひとつとして、今後も続けていきたいと思います」(浅井さん)

これからどのような人々と連携し、どのような取り組みを展開していくのか。日本郵政グループの挑戦は続きます。

※一部、撮影時のみマスクを外しています。

これまでの千早高校との連携の取り組みについては、こちらから

高校生×日本郵政グループ 高校生が日本郵政グループの「脱炭素」について考えてみた
日本郵政グループが高校生に向けて特別授業! サステナビリティの時代における「手紙文化」の価値とは?

日本郵政グループのサステナビリティ最前線 連載記事一覧はこちら

            

#HOT TAG

カテゴリ

おすすめ記事