「伝えること」のプロ・海賀 美代子さんが語る、手書きの言葉で綴る年賀状の魅力
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日本郵便の年賀はがきに関するイベントMCも務めるフリーアナウンサーの海賀さんは、毎年1,000枚近くの年賀状を送り、その一枚一枚に手書きの言葉を添えています。言葉に心をのせることの大切さ、そして年賀状がつなぐ人と人との絆について、海賀さんならではの視点で語っていただきました。
海賀 美代子(かいが みよこ)さん
フリーアナウンサー。奈良県出身。記者発表会や式典、イベントの司会などで活躍。
一年の終わりに"その人との時間"を思い浮かべながら書く、1,000枚の年賀状
――まずは、年賀状を出し始めたきっかけから聞かせてください。
海賀:小学校のときに友だちに書いたのが最初です。社会人になって、特にこの仕事を始めてからは、「仕事ってつながりが大切だな」というのをすごく感じて。あらためて、一年の終わりに、その年にお世話になった方々に感謝の気持ちを伝えたいと思うようになり、毎年必ず年賀状を出すようになりました。
――今では毎年1,000枚近くの年賀状を出されていると伺いました。その数になるまでにどんな背景があったのでしょうか。
海賀:毎年新しい方にお会いするので、年賀状の枚数も自然と増えていきました。1,000枚を超えたときもありますね。
――すごいですね! 年の瀬はお忙しい時期だと思いますが、海賀さんが年賀状を出し続けられる原動力は何だと思いますか。
海賀:私の仕事は毎回違う現場に行き、その日で完結することが多いんです。仕事終わりに「お疲れさまです。ありがとうございました」とご挨拶することはできても、一年を通して感謝の気持ちをあらためて伝える機会はなかなかありません。そのなかで年賀状は、私にとって人との関係性を広げ、ご縁をつなぎ続けるための一つの手段。大切で大好きな文化でもあります。
――どのようなことを思いながら一枚一枚の年賀状を書かれるんですか。
海賀:必ずやると決めているのが、一言メッセージを書くことです。宛名を見ながら、「ああ、この方だな」と思い浮かべて、「今年本当にお世話になったな」「今年はお会いできなかったけれど、どうされているかな」と、その人との時間を振り返りながら、気持ちを込めて、一枚一枚にメッセージを書くようにしています。なかには、現場でほんの短い時間しかごいっしょしておらず、宛名を見てもすぐに思い出せない方もいます。そういうときは、メールでのやり取りを調べて、どの仕事でお世話になった方か記憶をたどります。そうやって、その方の名前と顔、そしてそのときの出来事を一致させていくことは、私にとっては一年を振り返る、楽しい時間でもありますね。
年賀状がきっかけで「つながり」が生まれる
――年賀状をきっかけに生まれたつながりや交流があったら教えてください。
海賀:「年賀状を見て、ふと海賀さんを思い出したんだよね」と連絡をいただいたり、「毎年、海賀さんからの年賀状を楽しみにしているよ」と言っていただけたりすることがあります。私の年賀状は、その年の干支(えと)の帽子をかぶったワンちゃんといっしょに写った写真にしているのですが、「十二支を集めたら1回無料でお仕事をお願いできるんでしょ?」と冗談を言われることもありますね(笑)。
それから、「新入社員のデスクに海賀さんの年賀状を立てかけて、『この人に仕事をお願いすれば大丈夫だよ』と伝えています」と話してくださった方もいます。そうやって話題にしていただけることはありがたいですし、年明けに、年賀状をきっかけに笑顔になってくれる方がいると思うと、毎年書き続けてきてよかったなと思います。
――ワンちゃんといっしょの年賀状、素敵ですね! 年賀状を書くことをとても楽しんでいらっしゃいますが、海賀さんが思う年賀状ならではの魅力を聞かせてください。
海賀:私が仕事でやり取りしているのは企業の方が多いのですが、会社で作った年賀状に、メンバーの皆さんが一言ずつメッセージを書いてくださったのを見ると、うれしいなと思います。うれしい一言や、対面ではなかなか言われない言葉が添えられていると、そんな一言に励まされ、これからも頑張ろう!と前向きな気持ちになるんですよね。友だちから届く年賀状も、家族写真が使われているとその人の変化が伝わってくる。年賀状は、そうした近況を自然に感じ取れる、うれしいツールですよね。
今でも、元日に郵便受けを開けて年賀状が届いているかどうかを確認するのが楽しみなんです。時代とともにいろんな移り変わりがあるなかでも、私はこの年賀状文化を大切に残していきたいなと思っています。
相手を思い、感謝を込めることが、年賀状を楽しむ秘訣
――聞き手を想像するアナウンサーの姿勢と、年賀状を書く行為に共通点を感じることはありますか。
海賀:私は、仕事をするうえで、想像力をすごく大切にしているんですね。「この言葉を受け取った人はどんなふうに感じるかな?」と考えながら話すようにしています。年賀状を書くときも、受け取った方の気持ちを思い浮かべながら言葉を選びます。その思いが相手に伝わるとすごくうれしいですね。
――そうした想像力を大切にされているからこそ、年賀状を書くときに意識している「言葉の選び方」はありますか。
海賀:言葉の力ってすごいなと思っていて、選び方一つで、前向きに伝わることもあれば、意図せず誰かを傷つけてしまったりもしますよね。例えば、イベントの現場では、「お待たせしました。続いて○○さんが登場です」というフレーズをよく使います。でも、その言い方は、その前に登壇された方に対して失礼にあたるかもしれないと感じて、なるべく使わないようにしています。
年賀状を書くときも、同じように言葉選びに気を配っています。例えば、5年、10年くらいご無沙汰してしまっている方に、「いつもありがとうございます」と書くと、少し違和感を与えてしまうのではないかと思うんですね。そういう方には、「またごいっしょしたいです」など、これからにつながる言葉を選ぶようにしています。ふと自分のことを思い出してもらえるような言葉を考えながら、一言一言書いていますね。
――最後に、忙しい時期でも、年賀状を書く時間を楽しむ秘訣を教えてください。
海賀:「感謝を伝えたい」という気持ちです。その思いを大切にしながら書くことが、年賀状を楽しむ一番大切なことだと私は思っています。





