手書きの楽しさ再発見! 75年続く「全日本年賀状大賞コンクール」の裏側

手書きの楽しさ再発見! 75年続く「全日本年賀状大賞コンクール」の裏側

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一年に一度、親しい人やお世話になっている人に向けて書く年賀状。そんな新年の挨拶状を募る「全日本年賀状大賞コンクール」というイベントがあるのはご存じでしょうか。今年も募集が始まり、どのような作品が集まるのか今から楽しみです。今回は、そのコンクールを担当するお二人に、開催への想いや、舞台裏のエピソードなどを伺いました。あなたも一枚のはがきを手に、年賀状を「書く」「届ける」楽しさを再発見してみませんか。

山尾 拓巳(やまお たくみ)さん

日本郵便株式会社
郵便・物流事業統括部 切手・葉書室 係長

山尾 拓巳(やまお たくみ)さん

江口 直希(えぐち なおき)さん

日本郵便株式会社
郵便・物流事業統括部 切手・葉書室 主任

江口 直希(えぐち なおき)さん

「誰にどんなメッセージを伝えたいか」を大切に

――全日本年賀状大賞コンクールは、どのような経緯・目的で開催されていますか。

江口:年賀状の交換による心と心の交流がより一層広がるように、と1951年から開催しています。前身である「全日本年賀状版画・絵手紙コンクール」から通算して、今年で75回目の開催となります。最初は「版画」のみでしたが、のちに「絵手紙」と「ことば」の部門が加わり、計3部門を対象とするコンクールになりました。手作りの年賀状を通じて、「出す」「もらう」というコミュニケーションの価値や楽しさを実感するとともに、「手書きのよさ」や「手作りのよさ」を楽しみ親しんでもらうことを目的としています。

――応募者はどういった方が多いですか。

山尾:団体応募と個人応募があるんですが、冬休みの課題として取り組んでいただいているところもあって、特に学校からの団体応募が多いですね。ほかに絵画教室や生涯学習教室などからも届いており、個人応募はお子さんからご年配の方まで幅広い世代の方々から応募いただいています。お子さんは2歳、ご年配の方は97歳の方が過去にいらっしゃいましたね。

――幅広い世代の方が応募されているのですね。選考はどのように行われていますか。

山尾:各分野で造詣が深い審査員を招いて審査を行っています。日本版画協会の方や美術館の学芸員、文部科学省の方など、幅広い審査員による審査会を何回か行って選考をしています。

――選考にあたって大事にしていることは何ですか。

山尾:どの部門でも、「誰に対して、どんなメッセージを伝えたい作品なのか」を大切にしています。作品を見ていると、親や友人、先生など、身近な人あての内容が多いのですが、実はこんなことを思っているんだと気づかされるような温かいメッセージが多いんです。年賀状という、年に一度のツールで、誰に、何を伝えたいのかが伝わると素敵だなと思います。例えば、通学途中で挨拶する交通誘導員さんにあてて、日ごろの感謝を伝えるという作品もありましたね。

やはり年賀状コンクールということで、3部門に共通して「こんな年賀状をもらったらうれしい」と感じられることが大事です。はがきや手紙でのコミュニケーションを通じて、手書きで伝えるよさを知るきっかけとなる作品を重視しています。

選び抜かれた第22回の受賞作品たちをご紹介!

――第22回(2024年度)は3部門合わせて6万7,757点の応募があったとのことですが、受賞作品のなかから、お二人が強く印象に残っている作品を教えてください。

江口:版画部門で文部科学大臣賞を受賞した村井さんの作品です。おせちの伊達巻きととぐろ巻いている白ヘビの作品で、とてもおもしろく印象に残りました。この年賀状は、毎年おせち料理を作ってくれる親族にあてたものなので、描かれた背景を知るとより一層ユーモアが伝わってきます。

山尾:絵手紙部門で文部科学大臣賞を受賞した永井さんの作品が印象深かったです。春から中学生になる意気込みを巳年にかけて「脱皮」と表現しているのが、年賀状ならではの伝え方だと思いました。イラストからも英語や野球を頑張りたい気持ちが感じられます。

江口:同じく絵手紙部門でNHK学園賞を受賞した小林さんの作品もご紹介したいです。ご自身と同じ受験生のご友人にあてて描いた作品です。絵馬の両端にだるまとタイがいて縁起がよさそうです。真ん中で白ヘビと肩(?)を組んでいるのはご本人でしょうか。それとも送られたご友人でしょうか。いっしょに頑張って共に桜を咲かせようという強い意志が伝わってきます。

山尾:ことば部門の年賀状大賞に選ばれた湊さんの作品は、一つひとつの文から弟が誕生した喜びが伝わってきます。特に「お母さんにあまえられなくなった」という言葉から、お兄ちゃんとしての心情の変化が感じられます。これからも甘えていいんだよ、と伝えてあげたいです。

身近な人に感謝を伝える、あたたかな情報手段「年賀状」

――いよいよ第23回(2025年度)全日本年賀状大賞コンクールの募集が始まりました。募集要項を教えてください。

山尾:出品する部門を選び、伝えたい相手、伝えたいメッセージなどを書いた応募票を作品の裏面に貼ってポストに投函してください。自由に書いていただきたいので、年ごとの特別なテーマは決めていませんが、やはり年賀状ということで干支(えと)が主なモチーフになるのかなと楽しみにしています。

――参加賞などはありますか。

山尾:はい、応募者全員に参加賞の進呈を予定しています。さらに、学校で取りまとめを担当される先生がたには、感謝の気持ちを込めて教師応援賞をご用意していますので、ふるってご応募ください。いずれも、何が届くかは楽しみにしていてください。

――年賀状離れが進むなかで、コンクールが担う意義とは何だと思いますか。

江口:ご家族など、身近な人に想いを馳せて年賀状を書いていただくのが本コンクールの意義だと考えています。SNSの発達で気軽に遠方の相手にもあっという間にメッセージが届く時代だからこそ、年賀状で手書きのよさを知っていただければと思います。

山尾:毎年たくさんの応募作品を見て感じるのは、感謝の気持ちなどを伝える温かなメッセージが多いことです。年賀状は、手元に残るとても温かみのある情報手段とも言えます。本コンクールを通じて、書く楽しさ・届けるよろこびを体感していただけるとうれしいですね。

――最後に応募を検討されている方にメッセージをお願いします。

山尾:応募者に年齢制限などはなく、これまでも幅広い年代の方々にご応募いただいています。お子さまにはがきの書き方を教えながら、ご自身も作品を応募する親御さんもいらっしゃいます。ぜひふるってご参加いただければと思っています。

江口:10cm×14.8cmの小さな世界は、自分らしさを発揮できるキャンバスです。好きな絵や言葉、そして気持ちをぶつけてもらえればと思います。

※第23回(2025年度)全日本年賀状大賞コンクールの応募要項は こちら

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