【グループ企業探訪記】 物流のDXで持続可能な社会を目指す! JPトールロジスティクス株式会社の津山社長にインタビュー&物流倉庫の現場に潜入

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日本郵政グループのさまざまな関連企業を巡り、働く人たちの想いや、企業の風土などを取材する企画「グループ企業探訪記」。今回取り上げるのは、日本郵便株式会社と子会社のトールグループが2018年に共同で設立したJP トールロジスティクス株式会社。同社は、国籍もキャリアもさまざまなメンバーが集まる組織。果たしてどのような会社なのか、今回は、代表取締役社長の津山 克彦(つやま かつひこ)さんに直接お話を聞きました。

JP トールロジスティクス株式会社 代表取締役社長

津山 克彦(つやま かつひこ)さん

1986年、郵政省に入省。信越支社長などを経て、2016年に日本郵便株式会社 常務執行役員に就任し、郵便・物流事業の営業を統括。2018年、JPトールロジスティクス株式会社の副社長に就任し、2021年より現職。

日本郵便が、自身の100%子会社であるトールグループと50%ずつ出資して設立

JP トールロジスティクス株式会社は、オーストラリアの大手総合物流企業のトールグループと、日本郵便株式会社が50%ずつ出資して設立した合弁会社。各国の拠点ネットワークを活用し、国際海上・航空輸送を担う「フォワーディング事業」や、特定の荷主に対してカスタマイズされた物流ソリューションを提供していく「コントラクトロジスティクス事業」(※)にも大きな力を入れています。

(※)「コントラクトロジスティクス事業」とは、特定の荷主、つまり荷物の送り主と契約(コントラクト)をして、その送り主にカスタマイズされた物流ソリューション、いわば「オーダーメイド」のサービスを提供していく事業です。

しかし、そもそもトールグループは日本郵便の100%子会社。それが、なぜ50%ずつの出資という形を取ったのでしょうか。

「当時、トールグループが日本のマーケットのなかで、それほどビジネス展開が拡大できていなかったという状況が背景にありました。その時に、トールグループの顧客基盤・ノウハウと、日本郵便のこれまでの物流事業で培ってきたノウハウを合わせれば、より質の高いサービスを日本国内で展開できるのではないかと考えたのです。お互い協力してビジネスを拡大していくということで、あえて50%・50%の合弁会社として作りました」(津山社長)

バッググラウンドに日本郵政グループを持つことは、JP トールロジスティクスにとって大きな強み。150年を超える歴史のなかで、質の高い物流サービスを提供し続けてきた日本郵政グループの実績は、物流業務全般の実績や能力を非常にシビアに問われる海外での案件においても高く評価されていると、津山社長は言います。

「例えば、とある外資系企業の案件では、1日100台ちかいトラックを毎日正確に、時間に遅れることなく運行するというレベルの高いご要望をいただきましたが、日本郵便のグループ会社なら安心して任せられるということで、スムーズに商談が進んでいきました。これはとてもありがたい話ですし、私どもとしても、日本中に高い品質で配送するという点には、十分に実績があると胸を張って言えるところです」(津山社長)

精密に構築された倉庫の管理体制、輸配送システムの導入によるトラック管理

物流の要となるのが、倉庫運営の技術。
実際に、JP トールロジスティクスの物流センターを見学させてもらいました。

埼玉県幸手市ののどかな田園風景のなかに、突如として現れる巨大な倉庫。マルチ物流センター「DPL幸手」の一角を占めるのが、JP トールロジスティクスが所有する倉庫の一つ、「関東第一物流センター」です。

倉庫面積はおよそ4,300坪。4階層に分かれた倉庫フロアの空間には、荷物が積まれたパレットが整然と並んでいます。この整理整頓が行き届いた空間から、精密に構築された倉庫の管理体制と、働く人の高い意識が垣間見えました。

2022年現在、JP トールロジスティクスがコントラクトロジスティクス事業において取り扱っている商品はサプリメント、ケミカル商品、雑貨などさまざまです。広大な倉庫フロアのなかに、多種多様な商品を保管しているため、とても人の目だけでは管理しきれません。さらにサプリなど消費期限のある商品は期限が近づくと商品価値も下がってしまうため、倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)を活用した、厳格な管理体制が敷かれています。

倉庫内には安全第一を呼びかける貼り紙が貼られていました。過重な荷物を扱う環境なので、当たり前のようにも思えるのですが、JP トールロジスティクスでは「安全へのこだわり」という点を強く意識し、非常に大切にしているといいます。

「安全に対してはこだわっています。物流の現場は常に危険と隣り合わせ。この会社を作るときにトールグループのメンバーも言っていましたが、朝に家を出て、仕事をして、明るく元気にまた家に帰ってくる、『Safely Home』というのは大原則なのだと。そこで私たちが徹底しているのが、『どんな些細なことでも、気がついたら声をあげよう』という姿勢です。予想外の事故というのも、原因をたどれば、ほんの些細なこと、みんな気づいていたけど、見過ごしていたことが発端になっているケースがほとんど。だから、どんな小さなことで声をあげていいし、あげなければいけません」(津山社長)

また、JP トールロジスティクスでは、輸配送システムを一部の案件に導入。アプリケーションの入ったスマートフォンをドライバーに携帯してもらうことで、トラックの現在地、作業の進捗状況などを可視化しています。さらに配送中のトラックが不測の事態に巻き込まれた場合も、早急に対応ができるように車体情報と積み荷の商品情報を紐づけることも提案しています。

「新しい会社で新しいことに挑戦したい」という共通のアイデンティティ

津山社長にJP トールロジスティクスの社風について聞くと、「会社が設立してまだそれほど経っていないので、風土や文化が形成されるのはこれからかもしれない」という率直な答えが返ってきました。しかし、この「これから」こそが、この会社の強みとなっているといいます。

「弊社の社員は、日本郵便かトールグループからの出向者と中途採用者です。国籍もキャリアもさまざまで、最初はメンバー全員が"初顔合わせ"といった感じでした。だから意識としては、日本郵政グループの伝統や信頼のブランドというものを背負いながらも、会社としてはすでにできあがった社風や伝統というものはありませんでした。あえて私たちのアイデンティティというならば、新しい会社で新しいことに挑戦し、物流を通じて何か社会に貢献していきたいという強い想い、それこそが共通のアイデンティティといえるかもしれません」(津山社長)

また、組織階層がフラットで、かつ社員がワンフロアで働いているという距離の近さもあって、社員一人ひとりが声をあげやすいのが特徴。新しい組織であるが故に柔軟性も高く、ペーパーレス化など社内のデジタル推進も円滑に進めることができ、業務効率化がはかられただけでなく、社員にとって働きやすい職場環境が実現していると、津山社長は言います。

サプライチェーン全体の在庫を最小化、持続可能な社会への貢献にも

JP トールロジスティクスが、今後目指す未来とは─。

「設立から3年半が経ち、これから私たちは物流を通じてどのように社会貢献できるのだろうと。そう考えた時に、あらためて自分たちの強みは何だろうと振り返ってみると、やはり日本郵政グループとして『物を流す』ということを正確に、高い品質でやってきたという実績・技術なのかなと思い至りました」(津山社長)

この実績や技術を起点として、JP トールロジスティクスが今後挑戦していくことは何でしょうか。

「弊社では、現在、生産者、ホールセラー、小売りの各プレーヤーが、必要なモノを必要な時に必要なだけ供給できるプラットフォームを提供し、これに基づいてサプライチェーン全体の在庫を最小化しつつ、物流コストも削減するという案件にも力を入れて取り組んでいます。在庫ロスの発生が少なくなることは、弊社をご利用いただくお客さまにとっては倉庫保管料の削減になるとともに、持続可能な社会への貢献にもつながっていくと考えています」(津山社長)

「実際の需要以上に在庫された商品は、結局売れずに廃棄せざるを得ません。フードロスが社会問題となっていますが、食品に限らず、季節商品といわれるアパレルなどの商品も同じ課題を抱えています。また、個人の価値観の多様化に応じて商品のライフサイクルは短期化しているといわれているので、売れずに廃棄される商品の量はどんどん増えていくことが予想されます。この取り組みを横展開することで、ビジネスを拡大しながら持続可能な社会に貢献する物流会社となることを目指していきたいと考えています」(津山社長)

日本郵政グループ150年の伝統・技術を脈々と受け継ぎながらも、若々しい会社ならではの新しい風が吹いているJP トールロジスティクス。「日本郵政グループのポテンシャルをさらに引き出す足がかりとなるような、そして社会に貢献できるような物流会社になっていけたらと思います」という津山社長の声に、並々ならぬ覚悟と自信を感じることができました。

※ 撮影時のみマスクを外しています。

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