街とつながるJP百景Vol.3 お客さまとともに地域の社会課題解決を目指す!

日本全国にある2万4,000もの郵便局。それぞれの郵便局の景色は、その街で働く人、暮らす人とのつながりによって作られています。本企画では、地域と協力しながら、ユニークな取り組みをして独特の景色を作りだしている郵便局をピックアップ。第3回は、地域の子どもの貧困対策として沖縄支社で展開されている、フードドライブの取り組みについてご紹介します。

子どもの貧困率が全国平均の約2倍の沖縄県
地域の社会課題解決のために動き出した日本郵便沖縄支社

日本郵便沖縄支社

家庭で消費しきれない未使用の食品などを特定の場所に持ち寄り、地域の団体に寄付を行うフードドライブ。この取り組みは、フードロス対策、SDGsへの貢献、そして貧困対策の観点から注目を集めています。沖縄県における子どもの貧困率は29.9%(2016年)、これは全国平均のおよそ2倍の数値です。

※3人に1人の子どもが貧困状態にあり、人口当たりの子ども食堂の数も全国一と、県内では大きな社会課題になっています。

そんな中、沖縄支社では、2019年からうるま市でフードドライブの取り組みを開始。この活動を中心となって進めている竹之内さんは、フードドライブを始めた目的について次のように話します。

2019年から地方創生担当として沖縄支社で地域活性化に向けた取り組みを行っている日本郵便株式会社 沖縄支社 経営管理部 課長の竹之内 啓次(たけのうち ひろつぐ)さん

「フードドライブの目的は、子どもの貧困対策です。沖縄県におけるこの大きな課題に対し、日本郵便として何かできることはないかを考えました。その時、他支社管内で始まったフードドライブにヒントを得て、2019年にうるま市からこの取り組みをスタートさせました。はじめに、地元の子ども食堂や困窮家庭の支援を行っている方に直接お会いして、ニーズ調査を行いました。社会課題に対する取り組みなので、自社だけでなく、各市町村、社会福祉協議会と連携して進めるべきだと考え、課題の共有、取り組みの是非について議論するところからはじめ、最終的には三者で協定を締結しました。民間のボランティア団体の方に食品の条件設定を相談したり、保健所との調整をしたりと、スタートまでに半年ほどかかりましたが、県内で助けてくれる人たちに支えられ実現することができました」(竹之内さん)

※『沖縄県子どもの貧困対策計画【改訂計画】平成31年3月』

身近な存在である郵便局の窓口にフードボックスを設置

現在では、沖縄県内全175局のうち11市町89局に、寄付する食品を入れるフードボックスを設置し、月平均約2,300個(約780㎏)、年間9tを超える食品を集め、地域の方に寄付をしています。竹之内さんは、地域住民の方にとって身近な存在である郵便局にフードボックスを設置したことが、最大の工夫だったと話します。

大浜局郵便局の局長から石垣市の担当者が食品を受け取っています。「食べ物に困っている子育て家庭などに配布し、非常に喜ばれています」(市担当者)
同じく、白保郵便局から、社会福祉協議会の担当者へ食品を受け渡す様子。

一般的なフードドライブは、フードボックスが社会福祉協議会や役所、公民館などの公的機関に置かれていることが多く、地域住民が食品を気軽に持ち込める状況にありませんでした。郵便局の窓口であれば、用事の『ついで』に持ち込めるため、地域住民の方も参加していただきやすく、実際に多くの寄付をいただいています。他のボランティア団体からは、スタートした時はたくさん食品が集まるものの、少しずつ量が下がっていくという話も聞きましたが、郵便局でやっているフードドライブは、季節的な上がり下がりはあるものの、実は年間平均の量は増えているんです。県民のみなさんの意識の高さが一番ですが、寄付しやすいという部分がとても有効に働いていると感じます。局長や現場のみなさんとも話し合い、POPなどを工夫しながらフードボックスを設置して、お客さまにチラシを配ってお知らせをすることで、沖縄県における一つの社会課題に対して一石を投じられたのかなと思っています」(竹之内さん)

フードドライブの取り組みを開始してから
局員やお客さまの行動にも変化が

郵便局でフードドライブの取り組みを行うことを局員も誇りに感じており、中には自ら寄付をしてくれる局員もいるそうです。

「局員からは、フードドライブを通じて『どんなものを入れたらいいの?』『子どもたちだからお菓子がいいかな?』などお客さまとの会話が生まれ、関係構築につながっているという声を聞いています。また、郵便局の窓口で社会貢献活動が展開されていることを誇りに思い、やりがいを持って取り組んでいるようです。この取り組みをきっかけに、沖縄の「子どもの貧困問題」について深く理解するようになり、局員も自宅から食品を持ってきてフードボックスに寄付してくれています」(竹之内さん)

実際に寄付された食品。

また、多くのお客さまもからも賛同をいただいており、定期的に食品を寄付してくださる方も多いといいます。

「お客さまからは、『子どもたちのためになるすばらしい取り組みですね』といったお声をいただいております。ある郵便局では、毎週必ずコーン缶を1缶寄付してくれる年配のお客さまがいたり、毎月必ずお米を買ってきてくれたりするお客さまがいらっしゃいます。また、これまでは郵便局を使っていなかったお客さまが、この取り組みを機に年金の受け取り先に変えてくださり、毎月必ず何か食品を持ってきてくれると聞いています。お客さまと子どもたちとを結ぶお手伝いができていることが、お客さまと郵便局のつながり方の大きな変化ではないかと感じています。わざわざ購入した食品を寄付してくださったお客さまとお話した際、『どこでこの気持ちを具体化していいのかわからなかったけれど、郵便局の窓口にボックスを設置してくれたことで、僕の気持ちを伝えられる場所ができた。だから気にしないでいいよ』と言ってくださって、直接的利益につながる活動ではないけれども、人と人をつなぐ役割を担えるのは郵便局として大切なことだと改めて実感しているところです」(竹之内さん)

郵便局を拠点に広がる
ゆいまーる(相互扶助)の輪

うるま市の郵便局からはじまったフードドライブの取り組みは、県内で大きな広がりを見せています。この活動が支持を得られているのは、沖縄ならではの考え方「ゆいまーる(相互扶助)」も要因の一つではないかと竹之内さんは話します。

「街の方たちにも変化が起きており、フードドライブの活動が拡大しています。ある地域では、郵便局のフードドライブの取り組みが新聞に掲載されたことで活動の存在を知った小学生と中学生が『自分たちもこの活動をしたい』と計画し、学校でフードドライブを実施し、集めた食品を社会福祉協議会に寄付してくれました。私は移住してまだ3年と短い沖縄生活ですが、その中で感じるのが沖縄に暮らす人々のやさしさ、あたたかさ、明るさです。また、沖縄には「ゆいまーる」という考え方があり、お互いに助け会う気持ちを大切にしているのも特徴的です。人を思いやる心を素直に表現できる素敵な方々がたくさんいらっしゃる魅力的な島、まさに「美ら島」だなと感じています」

さらに、フードドライブの取り組みは県内の郵便局への派生にとどまらず、2021年には沖縄県との連携もスタートしました。

「石垣市における子どもの貧困対策に関する協定」の締結式の様子。

「他の市町村にある郵便局の局長からも、『うちでもやりたい』と前向きな声があがるなど、子どもの貧困問題や社会福祉に対する関心の高い人たちが同じ社内にいることをうれしく思っています。そして、フードドライブをきっかけに、2021年に沖縄県と包括連携協定を締結し、県の事業として、企業から寄付をしていただき県内全域の子ども食堂を支援する『おきなわこども未来ランチサポート』をスタートすることができました。県の担当の方から『日本郵便さん、フードドライブをいろいろな市町村でやられていますよね。どういう形でやられているんですか?』とご相談いただいたんです。県から一民間企業である日本郵便に対して相談をいただけたのは、企業価値が上がったとも感じますし、事業の拡大にもつながり、やってきてよかったなと思いました」(竹之内さん)

フードドライブを継続しながらも
今後は根本的な貧困対策のためのサポートも視野に

沖縄県において、フードドライブのスタンダードを作り上げた沖縄支社。しかし、貧困の根本的な解決にはさらなる施策が必要だと、竹之内さんは今後の展望について次のように話します。

「この取り組みは、『食支援が必要』というニーズがあってこそ成り立つものです。具体的な目標や年間計画というよりは、各市町村や各市町村社会福祉協議会、子ども食堂などから、ニーズがあった際にしっかりと対応していくことが大切だと考えています。ただ、子どもの貧困の問題を考えた時、食品を配ることは残念ながら対処療法に過ぎません。とはいえ、親の方の収入が上がるような、手に職をつけるための支援など、根本的な解決のための支援というのは、なかなかむずかしいのが実情です。だからこそ、まずは子どもたちにきちんと食事が取れる環境を提供すること、そして今後はプラスアルファの要素、例えば学習支援であったり社会体験の機会を増やすことであったり、何か次のステップを用意できればと思っています。その子たちが学校を卒業して就職した時に初めて、貧困が一つ消えるのかもしれません。今はまだ、具体的なプランはありませんが、地域に根差している郵便局らしい事業を考えながら、地域に必要とされる存在であり続けたいと考えています」(竹之内さん)

※撮影時のみマスクを外しています。

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