「視覚障がいの感覚を理解する」 ゴールボールを日本郵政がサポートし続ける理由(前編)

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競技の普及を目指した「チャレンジゴールボール大会」

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会場の長野県障がい者福祉センター・サンアップルは完全バリアフリー。体育館ではさまざまなパラ競技を実施でき、館内には車いす使用者用の各種トレーニング機器もある

「2021チャレンジゴールボール北信越大会」が2021年11月14日、長野県障がい者福祉センター・サンアップルで開催された。日本郵政は東京2020オリンピック・パラリンピックの公式パートナーとして大会開催を支えただけでなく、個別の競技に対してもサポートを行っている。パラリンピック競技・ゴールボールもその一つだ。今回のチャレンジゴールボール大会も競技の支援の一環で、日本郵政が全面的に支援している。

ゴールボールとは、鈴の入ったバスケットボール大のボールを互いに投げ合って得点を競うチームスポーツ。選手は障がいの程度に関わらず「アイシェード」と呼ばれる目隠しゴーグルを装着し、全く見えない状態でプレーする。つまり、アイシェードを着ければ、視覚障がい者も健常者も同じ条件でプレーできるということだ。

コートの大きさは6人制バレーボールコートと同じ広さ。コート内の各ラインには床との間にひもを通してテープを貼り、凸凹を作って選手が手で触れてラインを確認できるようになっている。

ゴールは、サッカーのゴールと同じようにネットが張られているが、コートの横幅と同じだけの幅がある。高さはサッカーより低く1.3メートル。

ボールはバスケットボール(7号球)と同じ大きさだが、重さはほぼ2倍の1.25kgとかなり重め。中に鈴が入っていて音が鳴る。選手は、この音を頼りにボールの行方を追うのだ。コート上に選手は3人。オフィシャルの試合時間は、前後半各12分の計24分。

オリンピックにはない競技で、東京パラリンピックで初めて目にしたという人も多いかもしれない。「チャレンジゴールボール大会」は、初心者や生涯スポーツとしてゴールボールを楽しんでいるチームが対象の交流型大会。ルールを緩和しながら、ゴールボール初心者のほか、とにかくゴールボールをやってみたい、ゴールボールを通じた交流を行いたい個人・チームが参加している。

初めてでも試合ができる、親しみやすい競技

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ゴールボールはアイシェードをつけることで視覚障がいの有無に関わらず誰でもプレーできる

今回の北信越大会は、視覚障がい者のチームや経験者のチームも参加していたが、ゴールボールをやるのはまったくの初めてという人がほとんどだった。地元である日本郵便 信越支社や地域の郵便局の社員も多く参加した。会場のサンアップルは障がい者のための施設なので、完全にバリアフリー化がなされている。

日本郵政がゴールボールをサポートする意図について、日本郵政 オリンピック・パラリンピック室の橋川 博一(はしかわ ひろかず)さんに聞いた。

「日本郵政は2019年3月からゴールボールをサポートしています。日本各地にグループの支店や郵便局があるので、その強みを活かしてゴールボールの知名度アップに貢献したいと思っています。これまで、社員がボランティアで大会運営を手伝ったりもしてきました。チャレンジゴールボール大会は、実際に社員がプレーして競技の奥深さを体感できる貴重な機会だと感じています」(橋川さん)

今回の大会は、参加の10チームを2つのグループに分けて総当りのリーグ戦を行い、順位を決めるという方式。ほとんどが未経験者ということで、まずは日本ゴールボール協会の人たちと経験者チームによるデモンストレーションからスタート。

基本的なルールを理解したところで、参加者ははじめにアイシェードをせずにプレーを体験。ボールは1.25kgとかなり重いので思ったとおりに投げられなかったり、ディフェンスするのに思い切り横に体を投げ出せなかったりと、最初こそ戸惑っている人もいたが、練習を重ねるうちにだんだんコツをつかんできたようだ。

次に、アイシェードを装着してプレー。まったく視界が奪われてしまうことに対し、参加者から驚きの声が上がる。

橋川さんは、これこそが社員がゴールボールを体験する大きな目的だという。

「いざアイシェードをしてみると、まったく周りが見えないので、最初は戸惑いの声が上がりますね。多くの人が、視界がないなかで動くという経験をしたことがないので、『こんなにわからないんだ』と感じます。そんな状況の中、的確にボールの位置を把握してプレーする選手の動きが如何にすごいのかわかると思います」(橋川さん)

「百聞は一見にしかず」 競技への理解が深まる

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日本郵政 オリンピック・パラリンピック室 橋川 博一(はしかわ ひろかず)さん

体験会が終わると、試合が開始された。最初はペナルティなどのない、初心者でも試合になるようにハードルを下げた特別ルールで行われた。視覚に頼ることができず、相手ボールを体を投げ出して止めなくてはならないという競技なので、慣れるのはさぞ難しいかと思いきや、いいプレーが続出し、接戦が繰り広げられた。

「まずは触れてみる、実際にやってみるということが大事だと思っています。まさに百聞は一見にしかずで、一度でも体験してもらえば、ゴールボールという競技への理解が深まるし、この体験をまわりの人に伝えることで理解の輪が広がると思います。アイシェードをしてみることで、視覚障がいの人たちにどのようなサポートをしていけばいいかを自分で考えるきっかけにもなりますよね」(橋川さん)

試合が進むうちに各チームにも一体感が生まれてきて、前の試合の反省を行い、いろいろと戦略を練っているチームも見受けられた。ゴールボールという競技の難しさと同時に、楽しさも感じられてきている様子だった。

「大会規模としては理想的でした」と話すのは、日本ゴールボール協会技術部部長の西村秀樹(にしむら ひでき)さん。

「今大会は参加10チーム。各チーム4試合が行えたことは、初心者の方々にとってはよかったと感じています。最初の試合では、暗闇の世界に戸惑うばかりで試合が終わってしまいますが、2度目、3度目と回を重ねるにつれ、ボールの音や相手ゴールの方向などがわかるようになり、4試合目となると、アイシェードを着けた環境に慣れて、徐々に力も入れられるようになる。

こうなってくると、試合を観戦する方も楽しさがわかるようになり、選手のみなさんのプレーに対して笑い声も出てくるようになりました。改めて、やればやるほど人の感覚は鍛えられていくものだと感じました」(西村さん)

インタビュー動画

 

後編では、初めてのゴールボールを体験した感想やそこで感じた魅力などを、参加者の方々に伺っていきます。

「視覚障がいの感覚を理解する」 ゴールボールを日本郵政がサポートし続ける理由(後編)
            

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