「視覚障がいの感覚を理解する」 ゴールボールを日本郵政がサポートし続ける理由(後編)

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参加者が感じた競技の魅力と、貴重な経験

ゴールボールをはじめてプレーした徳永 大祐(とくなが だいすけ)さん(日本郵便 信越支社 経営管理部)

「2021チャレンジゴールボール北信越大会」が2021年11月14日、長野県障がい者福祉センター・サンアップルで開催された。日本郵政は東京2020オリンピック・パラリンピックの公式パートナーとして大会開催を支えただけでなく、個別の競技に対してもサポートを行っている。パラリンピック競技・ゴールボールもその一つだ。今回のチャレンジゴールボール大会も競技の支援の一環で、日本郵政が全面的に支援している。

実際に、初めてのゴールボールはどうだったのだろうか?参加者のひとり、日本郵便 信越支社 経営管理部の徳永 大祐さんに感想を聞いてみた。

「初めてのゴールボールということで、最初は不安もありました。アイシェードをしてみて、まったく見えなかったので初めは動くのが怖かったんです。でも、だんだんボールの鈴の音でだいたいの位置がわかるようになってきて、前の試合では1点決めることができました!見えないことで、かえって集中できるというのはおもしろい経験でしたね」(徳永さん)

別のチームで参加した、日本郵便 延徳郵便局の徳竹 美香(とくたけ はるか)さんも、「アイシェードでまったく見えなくなるのは、最初は率直に怖いなと感じました。でも、プレーしていくうちにだんだん楽しくなってきたんですよね。ベンチからいろいろ声をかけてくれるのがとても心強くて、試合では2点取れました!」と話し、自身のスポーツ経験と重ねて感想を教えてくれた。

「私自身は、バスケットやフットサルなどもともとスポーツをしてきたんですけど、見えないなかでプレーするというのはホントにすごいなと実感できました。アイシェードをすることで、誰でもフェアにプレーできるというのがいいですよね。ゴールボールの大会に参加するお話をいただいて、おもしろそう!って思っていたんです。本当に貴重な体験をさせてもらいました」(徳竹さん)

橋川さんの言うとおり、一度でも体験することで考え始めるきっかけになったようだった。それは、経験がゼロかイチかで大きく変わってくる。

「実際にまったく視界がない状況を経験することで、ほんの少しですが視覚障がいの方の気持ちがわかった気がしました。今までは、街で会ってもどうサポートしていいか戸惑ってしまっていたのですが、これからは自分ならどうすればいいかを考えるきっかけになりましたね」(徳永さん)

「日本近代郵便の父」の想いを継ぐ共生社会の実現

「本当に貴重な体験をさせてもらいました」と、徳竹 美香さん(日本郵便 延徳郵便局)

ゴールボールという競技の普及に向け、日本ゴールボール協会 西村さんは意欲を見せる。

「とかく、障がい者スポーツは障がい者のみのものと思われがちです。『目が見えない人の日常生活は、苦労の連続ではないか?』と、間違った理解や当事者の気持ちがわからないことからくる偏見などが、障がい者差別への一つの要因になっていると思います。

ゴールボールは、全員がアイシェードをして同じ環境でプレーすること、初心者の方もその日のうちに試合までできるようになることがポイントで、他に類を見ない競技です。大人のみならず、小学生や中学生にも適している。競技の利点を活かして、体験してもらえる場を積極的に創出していきたいですね」(西村さん)

競技の普及については、日本の郵便とそれを作り上げた先人の想いにもつながるようだ。

「郵便というのは、誰もが平等に使える制度として築かれてきました。郵便サービスは全国津々浦々に行き渡って、災害時や過疎地域でも住民を支えるシステムとして、誕生した明治時代から150年以上生き続けているインフラです。これは、『日本近代郵便の父』と呼ばれている前島 密が目指した『自由、平等、公平』という理念に基づいています。

実は、現在の筑波大学附属視覚特別支援学校の前身である楽善会訓盲院の設立に前島も参加しているという事実もあります。共生社会の実現に、私たちの活動が少しでも貢献できればいいなと考えています」(橋川さん)

楽善会訓盲院とは1876(明治9)年に設立された日本の盲学校の先駆けだ。時代を経て何度か組織や名称を変え、現在の筑波大学附属視覚特別支援学校および筑波大学附属聴覚特別支援学校につながっている。同学校は幼稚部、小学部、中学部、高等部を設置していて、卒業生は芸術やスポーツなどの分野でも輝かしい活躍をしている。

誰もが利用できる通信インフラとして、日本の発展を支えてきた郵便。その礎を築いた前島密が、同時に障がいを持った人たちの将来をも考えていたということに、驚きとともに敬意を感じずにいられない。

「ゴールボールが、一人ひとりの考えるきっかけに」

「2021チャレンジゴールボール北信越大会」には約50名が参加。スポーツを通してコミュニケーションが図られる機会にもなった

パラスポーツは障がいを持った人たちのための競技。もしかすると、この認識が一般的かもしれない。もちろん、作られたきっかけはそのとおりだが、実際は、ゴールボールのように戦略性に富んでいたり、極めるまでの奥深さがあったりと、競技そのものとしての魅力にあふれている。多くの人に体験して、その価値を感じてもらうことが求められている。

「ゴールボールに接することが、誰にとっても暮らしやすい社会を作るために自分はどうすれば良いのか、一人ひとりが考えるきっかけになればいいなと思いますし、全国各地で生活インフラを提供している日本郵政がその先頭に立って行動していけば、社会も変わっていくのではないかと思います。障がいも一つの個性として捉え、誰もが自分の目標や夢にチャレンジできる世の中になるといいですね」(橋川さん)

日本郵政グループは150年にわたる歴史の中で、点字郵便やくぼみ入りはがきなど、視覚障がいの方も利用しやすいサービスを提供してきた。ゴールボールへのサポートを通じて貴重な経験を得た彼らは、今日も先人の想いを引き継ぎ、地域社会を支えている。

インタビュー動画

「視覚障がいの感覚を理解する」 ゴールボールを日本郵政がサポートし続ける理由(前編)
            

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